2回にわたり解説しました「父親の建物に子が損害保険をかけた際の取扱い、保険金を受け取った場合の課税関係について」では、子が事業主であることを前提にしてきました。今回は生計を一にする複数の親族間で事業を行っている場合、いずれが事業主となるのかについて説明をします。
《さくら税研からのアドバイス》
所得税は、収益を実質的に享受する者に対し課税すると規定されています(所法12)。また、事業から生ずる収益を享受する者は、経営をしている「事業主」であると取り扱われています(所基通12-2)。
「事業主」が誰になるのかについては、営業許可、関係官庁への届出の状況、事業資金の調達、事業活動を通じての収入・支出の管理、従業員に対する指揮命令等がどのようになっているのかを総合的に判断する必要があります。
生計を一にする複数の親族間(例えば父・子)で事業を営んでいて事業主が明らかにならない場合には、「経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者」を事業主と推認するとしています。さらに明らかにならない場合には、次のようなケースを除き、最終的には生計主宰者を事業主と推定する旨取り扱われています(所基通12-5)。ただし、当該通達は、あくまで事業主が明らかとならない場合、「推定」するとの取扱いですので、前述の実質的な判断が優先されることは言うまでもありません。
⑴ 生計主宰者(父)が他の店舗を経営していたり、会社等に勤務しているような場合、他の親族(子)の名義で事業が行われていれば、名義者を事業主とします。つまり、形式的な基準で判断するわけです。
⑵ 生計主宰者(父)とともに他の親族(子)が、医師や弁護士、税理士、俳優等自由職業者として事業に従事している場合には、収入.支出がそれぞれに区分され、事業を行っている状態が父に従属していると認められない限り、子が収支に応じ事業主となります。
⑶ 生計主宰者(父)が遠隔地で勤務し、事業に従事している他の親族(子)と別々に生活をしている場合には、子を事業主とします。
《参考法令》
【所得税法】
(実質所得者課税の原則)
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(事業から生ずる収益を享受する者の判定)
12-2 事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(以下12-5までにおいて「事業主」という。)がだれであるかにより判定するものとする。
(親族間における事業主の判定)
12-5 生計を一にしている親族間における事業(農業を除く。以下この項において同じ。)の事業主がだれであるかの判定をする場合には、その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当するものと推定する。この場合において、当該支配的影響力を有すると認められる者がだれであるかが明らかでないときには、次に掲げる場合に該当する場合はそれぞれ次に掲げる者が事業主に該当するものと推定し、その他の場合は生計を主宰している者が事業主に該当するものと推定する。
(1) 生計を主宰している者が一の店舗における事業を経営し、他の親族が他の店舗における事業に従事している場合又は生計を主宰している者が会社、官公庁等に勤務し、他の親族が事業に従事している場合において、当該他の親族が当該事業の用に供されている資産の所有者又は賃借権者であり、かつ、当該従事する事業の取引名義者(その事業が免許可事業である場合には、取引名義者であるとともに免許可の名義者)である場合 当該他の親族が従事している事業の事業主は、当該他の親族
(2) 生計を主宰している者以外の親族が医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、公認会計士、あん摩マッサージ指圧師等の施術者、映画演劇の俳優その他の自由職業者として、生計を主宰している者とともに事業に従事している場合において、当該親族に係る収支と生計を主宰している者に係る収支とが区分されており、かつ、当該親族の当該従事している状態が、生計を主宰している者に従属して従事していると認められない場合 当該事業のうち当該親族の収支に係る部分の事業主は、当該親族
(3) (1)又は(2)に該当する場合のほか、生計を主宰している者が遠隔地において勤務し、その者の親族が国もとにおいて事業に従事している場合のように、生計を主宰している者と事業に従事している者とが日常の起居を共にしていない場合 当該親族が従事している事業の事業主は、当該親族
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