執行役員就任時における退職金の打ち切り支給について

《前提》

① 会社で執行役員制度を設けることにして、その形は委任型にする予定です。
  ※執行役員を退任した場合、再雇用の問題があります。
② 会社の定年は65歳、取締役の定年は63歳
③ 使用人が執行役員になったときは、退職金の打ち切り支給をします。

 それで、使用人から執行役員になったときに退職金の打ち切り支給をして、65歳まで執行役員であれば、退職金の打ち切り支給は退職金課税だと思います。
 あるいは、打ち切り支給しないで65歳で執行役員を辞めたとき退職金を支払えば退職金課税だと考えます。

《質問》

① 使用人(58歳)から執行役員(委任型) (63歳)経て使用人になって(65歳)で退社
 この場合は58歳に打ち切り支給した場合、再雇用されているので、通達に関するQ&A(所基通30-2の2に関するQ&A 下記参考資料【国税庁ホームページより】)の問6は、「労働慣行や当事者間の契約」と言っているので、当社の定年が65歳なので、問6のように「Aは社内事業にも精通~再雇用することにした」の要件には当てはまらないと考えます。
 従って、この例だと「過去に支給した退職金を給与所得として是正」しなければいけないと思っていますがその認識で合っているでしょうか。

② 使用人(58歳)から執行役員(委任型)(60歳)、取締役(63歳※取締役は使用人兼務役員 でない)で退社
 この場合、執行役員になる時に打ち切り支給して、取締役になる時にも打ち切り支給までは基本通達に関するQ&Aの問2に記載されてるので、おそらく2回とも退職所得だと思います。

③ 問題は、執行役員になる時(58歳)と、取締役になる時(60歳)、使用人になる時(63歳)で退社の時(65歳)の場合は、どう考えるかわかりません。
 一旦、取締役なれば、執行役員で再雇用されていても58歳の退職所得は給与所得として是正しなくても良いとか或いは是正しないといけないのか。

また、取締役が兼務役員の場合は63歳の支給はなく65歳での支給になります。

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役員報酬について(事前確定届出給与)

《前提》

・A社は8月決算の内国法人である
・前期の決算後、令和4年8月31日支給とする事前確定届出給与の届出を行った
・役員4人に対して、月額報酬の3ヶ月分を支給額とする内容であった
・A社は本年の業績を考慮して、役員賞与に2ヶ月分上乗せすることを検討

《質問》

1 8月31日に2ヶ月分上乗せした役員賞与を支給した場合、5ヶ月分金額が税務上否認されることとなるが、8月中の別日に2ヵ月分を支給した場合、税務上の扱いはどうなるか。
2 当初届出額の3ヶ月分は届出通りの支給であり損金算入、別日で支給した2ヶ月分は事前確定届出給与に該当せず損金不算入として取り扱えないか検討中。
3 仮にこの扱いができる場合は、目安として当初支給日より何日前に支給した方がよいか。

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相続があった場合の所得税・消費税の取扱いについて

《質問》

 不動産賃貸業を行っている個人甲が令和3年6月末に死亡しました。
 賃貸不動産収入はA物件とB物件から生じ、いずれも消費税の課税対象です。
 相続人は長男と次男だけで、令和4年3月末の遺産分割協議でA物件は長男が、B物件は次男が相続することになりました。
 賃貸収入(課税売上)は、毎年同額で、不動産Aが年額1200万円(100万円/月)、不動産Bが600万円(50万円/月)です。
 令和3年分~5年分までの所得税の申告、消費税の納税義務の判定は具体的にどのようになりますか。
 なお、長男、次男はサラリーマンで課税売上になる収入はありません。

《さくら税研からのアドバイス》

【所得税関係】
⑴ 令和3年1月から6月までの収入
 被相続人甲帰属の収入として準確定申告を行います。

⑵令和3年7月以降の収入
 遺産分割が確定していない間は、相続財産は相続人である長男と次男の共有に属するものとされ、各相続人が法定相続分に応じて申告することになります。
 遺産分割協議が整い分割が確定すれば、それ以後の申告は確定したとおりに申告することになります。
 なお、分割が確定しても、未分割の期間の所得の帰属に影響を及ぼすものではありません。したがって、分割が確定したことを理由とする更正の請求や修正申告をすることはできません(最高裁判決17年9月8日参照)。

相続前と相続後の所得税(不動産分)の申告は次表のとおりとなります。
                              (単位:万円)

元年分 2年分 3年分 4年分 5年分
被相続人 甲 1800 1800 900
相続人 長男 450(注1) 1125(注2) 1200
相続人 次男 450(注1) 675(注2) 600

注1 (100万円+50万円)×6月×1/2=450万円
注2 (100万円+50万円)×3月×1/2=225万円
   長男100万円×9月+225万円=1125万円
   次男50万円×9月+225万円=675万円

【消費税関係】
1 相続があった年(令和3年分)の相続人の納税義務の判定について
⑴ 1月1日~相続のあった日
 相続人自身の基準期間における課税売上高⇒1000万円以下免税、1000万円超課税
 ご質問の場合、長男と次男はいずれもサラリーマンで課税売上高は「0」ですのでこの間は免税となります。なお、被相続人は基準期間(元年分)の課税売上高が1000万円超ですので課税事業者として申告が必要です。

⑵ 相続のあった日の翌日~12月31日
 ①相続人の基準期間における課税売上高
 ②被相続人の基準期間における課税売上高
 ①と②いずれも1000万円以下 免税  ①と②いずれかが1000万円超 課税
 ご質問の場合、「被相続人の基準期間における課税売上高」は、遺産分割が済んでいませんので、法定相続分を乗じた金額となります(消基通1-5-5)。
 ①は「0」です。
②=1800万円×1/2=900万円≦1000万円
 したがって、①と②いずれも1000万円以下ですので相続人は免税となります。

2 相続があった年の翌年分(4年分)、翌々年分(5年分)の相続人の納税義務
次の金額が1000万円以下⇒免税 1000万円超⇒課税
 ○ 事業の全てを相続した場合
 (相続人の基準期間における課税売上高)
       
 (被相続人の基準期間における課税売上高)

 ○ 事業の一部を相続した場合
 (相続人の基準期間における課税売上高)
       
 (相続した事業に係る部分の被相続人の基準期間における課税売上高)
⑴ 令和4年分の納税義務の判定について
 分割のあった年の納税義務の判定は、課税期間の開始する前に判明していなければならないという考え方のもと、4年分は3年12月31日の状況で判定します。
すなわち、
0+1800万円×1/2=900万円≦1000万円
となり長男、次いづれも免税事業者となります。

⑵ 令和5年分の納税義務の判定について
 納税義務の判定時期(令和4年12月31日)には、遺産分割協議が済んでいるので、長男・次男の納税義務(基準期間3年分)は次のアとイの合計額で判定します。
ア 各相続人が事業所ごとに分割して承継した場合、「被相続人の基準期間における課税売上高」は、各相続人が承継した事業場に係る部分の課税売上高となりますので、A不動産を相続した長男が600万円、B不動産を相続した次男が300万円となります。
イ 各相続人の基準期間における課税売上高 450万円

相続人長男の判定 600万円+450万円=1050万円>1000万円(課税事業者)
相続人次男の判定 300万円+450万円=750万円≦1000万円(免税事業者)

《参考資料》

【国税庁H.Pより】

別紙 前年に相続があった場合の共同相続人の消費税の納税義務の判定について

別紙 相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について

【消費税基本通達】
(共同相続の場合の納税義務)

1-5-5 法第10条第1項又は第2項《相続があった場合の納税義務の免除の特例》の規定を適用する場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条各号《法定相続分》(同法第901条《代襲相続人の相続分》から第903条《特別受益者の相続分》までの規定の適用を受ける場合には、これらの各条)に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とする。(平17課消1-22により改正)