《前提》
被相続人Aは、令和3年12月24日(申告期限:令和4年10月24日)に亡くなりました。
その後、令和4年5月14日に、Aの夫である被相続人Bが亡くなりました。
被相続人Aの法定相続人は、夫であるBと兄弟姉妹3名の計4名です。
被相続人A及びBは、生前(最終更新日は令和2年7月29日)信託銀行において遺言信託を契約しており、公正証書遺言にはそれぞれ「自身が死亡した際には配偶者にすべての財産を相続させる。先に配偶者が死亡していた場合には、Bの甥であるCにすべての財産を相続させる」旨が記載されていました。
被相続人Aの死後、遺言執行を行わないままBは令和4年5月14日(申告期限:令和5年3月14日)に亡くなっていました。Bの法定相続人は、兄弟姉妹及びその代襲相続人である甥姪の計7名です。Cは、Bの法定相続人の一人である兄の息子です。
また、A及びBの生前においてCとはほとんど交流がなく、C自身もAやBの死を知ったのは相続発生日より後だそうです。
《質問》
① 被相続人Aの相続に係る相続税申告義務者について
本来の提出義務者であるBが申告書を提出しないまま死亡した場合、Bの包括受遺者であるCがその提出義務を承継すると考えてもよろしいでしょうか。
② 被相続人Aの相続に係る相続税申告期限及び申告の種類について
申告期限はBの相続開始を知った日の翌日から10月以内と考えてもよろしいでしょうか。
また、その場合に提出する申告書は期限内申告書であると考えてよろしいでしょうか。
③ 被相続人Aの遺言執行費用及び相続税申告に係る税理士報酬について
被相続人Aの相続については現状においても遺言執行を行っておらず、遺言執行費用及び税理士報酬は被相続人A及びBの相続手続分をまとめて包括受遺者Cが支払うこととなります。
この場合、被相続人Aの相続に係る遺言執行費用及び税理士報酬については本来被相続人Bが負担すべきものと考えられるため、被相続人Bの相続において債務控除の対象となるのでしょうか。
〈事実関係〉
被相続人A(妻)の相続発生日は令和3年12月24日、申告期限は令和4年10月24日です。
被相続人B(夫)の相続発生日は令和4年5月14日、申告期限は令和5年3月14日です。
AとBの間に子はいません。
生前A及びBは、それぞれ「自身が死亡した際には配偶者にすべての財産を相続させる。先に配偶者が死亡していた場合には、Bの甥であるCにすべての財産を相続させる」旨の公正証書遺言を遺しています。また、遺言執行は信託銀行が行うと記載されています。
A及びBとCとの間に生前交流はなく、CがA及びBの死亡を知ったのは後日です。
被相続人Aの遺言執行や遺産整理は現状において手続き中です。
被相続人A及びBの相続税申告については、被相続人Bの死後に信託銀行から弊社に依頼がありました。
〈当方の見解〉
① 被相続人Aの相続に係る相続税申告義務者について
上記の通り、Aの兄弟姉妹ではなくBの包括受遺者であるCがその提出義務を承継すると考えます。
② 被相続人Aの相続に係る相続税申告期限及び申告の種類について
相続税法27条により、Cが自己のために遺贈があったことを知った日の翌日から10月以内が申告期限となり、その申告期限内に申告書を提出した場合は期限内申告であると考えます。
③ 被相続人Aの遺言執行費用及び相続税申告に係る税理士報酬について
債務控除の対象となる債務は、「確実と認められるもの」「被相続人の債務で相続開始の際 現に存するもの」とされているため、発生することが確実であった遺言執行費用は債務控除の対象となる一方、被相続人Aの相続税申告の税理士報酬については被相続人Bの死後に発生したものであり、かつ確実に発生したものとも言えないため、税理士報酬については債務控除の対象とならないと考えます。