小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)

《質問》

 貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例が使えるかどうか教えてください。
貸家1軒のため、業務規模になります。
貸家及び敷地の所有者は父です。
① 令和2年1月1日 不動産賃貸開始。
② 令和3年12月1日 父死亡、貸付期間3年未満のため、この相続では
           適用不可。当該不動産は、母が相続。
 この場合に、母が令和4年中に死亡した場合には、適用できないと思います。
 しかし、仮に令和5年に母が亡くなった場合には、小規模宅地等の特例は適用可能なのでしょうか。
 二次相続が3年以内にあった場合には適用可能という特例は、そもそも一次相続で適用可能であった場合だと思われますので、母親が所有者になってから3年が必要なのか、相続前の使用状況も含めて3年以上あればよいのか教えてください。
 また、仮に母親が所有者になってから3年が必要な場合、所有者になったというのは、登記上所有者が変更された日になるかどうかも教えてください。

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従業員の転居に伴う費用等を会社が負担した場合の所得税の取扱い

《質問》

 当社では従業員の転勤に伴い、転居に係る次の諸費用の負担を行うことを検討しています。所得税等課税関係はどのようになりますか。現在従業員は自身が契約したアパートに居住しています。
①転居に伴う引越費用(従業員・家族分)
②転居に伴い子供が転校した場合の入学金の一部補助
③賃貸契約解除に伴う解約違約金
④従業員が契約した新規のアパート契約に伴う礼金等初期費用負担・家賃の半分補助

《さくら税研からのアドバイス》

【所得税関係】
 質問①について
 給与所得者の転任に伴う転居のための旅費等を支給されても、給与所得者は非課税である旨の規定となっています(所法9①四)。非課税となる旅費等の範囲について、必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるもので、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられるものされ、次の事項を勘案して判定しています(所基通9-3)。
⑴支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたもの
⑵ 支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるもの

 ご質問のように、旅費規程に基づき支給される従業員本人・家族の旅費、引越費用(実費)は非課税と取り扱われます。
 また、家族の旅費については、従業員の赴任後家族が遅れて(3年以内)同居するような場合の転居費用であっても非課税として取り扱われています。

質問②について
 子供が転校することに伴い入学金の一部を負担した場合には、従業員の個人的な費用を負担したものとして非課税とはならず、給与所得として課税されます。

質問③④について
 住宅について評価した賃貸料相当額の1/2以上を徴収していれば課税されない旨の取扱いは、住宅が会社所有のもの、ないしは会社が借り上げ、従業員に貸す場合に適用されるものです。したがって、従業員自身が賃貸借契約を結び、賃貸料の一部を負担するような場合には、非課税規定はなく会社が個人的費用を負担しているにすぎず、給与として課税されるものと考えます。従業員が賃貸借契約を解除するに当たっての解約違約金についても同様に給与課税されるものと考えます。

【消費税関係】
 会社等が旅費等の支給にあたり、仕入税額控除の対象となるか否かは、所基通9-3の例により判定するとされていますので(消基通11-2-1)、所得税法上非課税とされる旅費、引越費用の支給については、課税仕入れの対象となります。給与所得として課税される費用については、課税仕入れの対象とはなりません。

《参考法令》

【所得税法】
(非課税所得)
9条1項
一~三 (略)
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの
五~  (略)

【所得税基本通達】
〔旅費(第4号関係)〕
(非課税とされる旅費の範囲)
9-3 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

【消費税基本通達】
第2節 課税仕入れの範囲
(出張旅費、宿泊費、日当等)
11-2-1 役員又は使用人(以下「使用人等」という。)が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族(以下11-2-1において「退職者等」という。)がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、事業者がその使用人等又はその退職者等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。
(注)
1 「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲については、所基通9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。
2 海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない。

住宅ローン控除の改正(2022年)

《質問⦆
 2022年(令和4年)に改正のあった住宅ローン控除について説明をお願いします。

《さくら税研からのアドバイス》
Ⅰ 主な改正点は次のとおりです。

令和3(2021)年分以前 令和4(2022)年分以降
区分
借入限度額
消費税の課税の有無による区分
2000万円~5000万円
住宅の環境性能に応じた区分
2000万円~5000万円
控除率 1% 0.7%
控除期間 10年・13年(消費税10%引上時の上乗せ措置) 新築・買取再販13年
既存住宅10年
所得要件 3000万円以下 2000万円以下

Ⅱ 取得区分、居住年ごとの借入限度額、控除期間等は表のとおりです。
 1 新築等した場合

(注)一般の新築住宅のうち、令和5年12月31日までの建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものは、借入限度額を2,000万円として10年間の控除が受けられます。したがって、令和6年1月1日以後に建築確認を受ける新築住宅(登記簿上の建築日付が令和6年6月30日以前のものを除く)、または、建築確認を受けない住宅用に供する家屋で登記簿上の建築日付が令和6年7月1日以後の新築住宅等は、「一定の省エネ基準」を満たさなければ、控除の適用ができないことになります。
 また、特例居住用家屋(床面積が40㎡~50㎡未満の住宅)に該当する場合は、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものが対象となります。

 2 買取再販認定住宅等を取得した場合


(注)「買取再販住宅」とは、宅地建物取引業者が特定増改築等をした既存住宅をその業者の取得した日から2年以内に取得した場合の既存住宅(住宅が新築された日から10年を経過したもの)をいいます。
<参考>買取再販住宅のイメージ

 3 中古住宅を取得した場合

(注)①建築年月日が昭和57年1月1日以後の中古住宅 ②取得の日前2年以内に耐震住宅基準に適合した中古住宅について適用があります。なお、一般住宅の築年数要件は廃止されています。

 4 増改築等をした場合

5 要耐震改修住宅を取得した場合

(注)耐震基準に該当しない中古住宅(以下「要耐震改修住宅」といいます。)を取得した場合において、事前に一定の耐震改修を行う旨の申請をした上で、居住の用に供する日(その取得の日から6か月以内の日に限ります。)までにその申請に係る耐震改修を行ったことにより耐震基準に適合することにつき証明がされたものについて控除対象となります。

Ⅲ 令和3年分以前に取得した場合(新コロナ特例該当)
 住宅の取得等で特別特例取得または特例特別特例取得に該当し、令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合、13年間(10年間は控除率が1%)適用対象となり、上記1の改正事項(控除率0.7%)との選択適用となります。

Ⅳ 手続の簡素化
 住宅ローン控除1年目に確定申告書への添付義務とされている「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」「工事請負契約書等の写し」については、添付不要とされました。2年目以後の年末調整についても、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」の添付も不要とされました。
 納税者は一定事項を記載した「住宅ローン控除申請書」を金融機関等に提出し、それを受けて金融機関等は住宅借入金の金額等の情報を税務署へ交付します。さらに、年末残高等の情報は税務署から納税者に交付されることになりますので、その情報をもとに確定申告を行います。
 2年目以降は年末残高の情報等が記載された「住宅ローン税額控除証明書」を、税務署が納税者に交付することになりますので、当該書類にて年末調整又は確定申告を行います。
 この改正は、令和5年以後(令和6年1月1日以後に行う確定申告、年末調整)から適用となります。

Ⅴ 個人住民税ににおける住宅ローン控除
 住宅ローン控除額がその年分の所得税額から控除しきれない場合には控除しきれない金額を住民税額から控除することができることになっていますが、その限度額が引き下げられました。
 令和4年分以降の入居者から適用になります。
所得税の課税総所得金額等×7% ➡ 所得税の課税総所得金額等×5%
(最高136,500円)         (最高97,500円)

確定申告に当たって注意すべき事項(2)

 前回に引き続き、今回の解説はⅠ損益通算、Ⅱ純損失の繰越控除、Ⅲ所得控除、Ⅳ税額控除です。

Ⅰ《損益通算・国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例》

【問】
 国外にある不動産の貸付により生じた不動産所得の損失は全て損益通算の対象とならないのですか。
【答】
 損益通算の対象とならない損失は、国外の中古建物で、減価償却費の耐用年数を「簡便法」等により算出しているものに限られ、新築の建物や簡便法等により算出していないものは損益通算の対象となります。

【問】
 国外中古建物を複数貸し付けている場合、不動産所得の金額をどのように計算するのですか。
【答】
 複数の国外中古建物を所有する場合、国外中古建物ごとに区分して不動産所得の金額を算出します。次の場合、損益通算対象外損失は50+30=80となります。

建物A 建物B
収入金額 100 200
減価償却費 50 80
その他経費 120 150
損失額 ▲70 ▲30
損益通算対象外損失額※ 50 30

※ 損益通算対象外損失は、損失額(70)と減価償却費(50)いずれか少ない額がとなります。

Ⅱ《純損失の繰越控除》

【問】
 法人成した年分に損失が発生し、その後の年分は給与所得だけとなりますが、純損失の繰越控除は、純損失が生じた翌年以後も青色申告書を提出する必要があるのですか。
【答】
 繰越控除を適用する年分については、青色申告であることが要件となっていません。純損失が生じた年分の翌年分以後は白色申告者となった場合でも繰越控除ができます(所法70④)。

【問】
 3年前の年分において必要経費の計上漏れがありその結果、事業所得が赤字となった場合、純損失の計上、さらに翌年分への繰越はできますか。
【答】
 確定申告書に純損失の額の記載がない場合でも、更正の請求により3年前の純損失の額が明らかとなり、当該純損失の額を翌年、翌翌年に繰り越す更正の請求をすることができます(所基通70-13)。

Ⅲ-1《所得控除・医療費控除》

【問】
 癌と宣告されたことを保険事故として支給された保険金は、医療費控除に係る補填金として医療費から差し引く必要はありますか。
【答】
 医療費の補填を目的とする保険金に当たらないため、医療費から差し引く必要はありません(所基通73-9)。

【問】
 入院にあたり入院費として30万円病院へ支払いました。医療保険に入っていたため、入院給付金40万円を受け取りました。入院費を超える部分の金額は、他の医療費から差し引く必要がありますか。
【答】
 支払った医療費(入院費相当額)を限度として差し引くことになります。入院費の超過分は他の医療費から差し引く必要はありません。

Ⅲ-2《所得控除・社会保険料控除》

【問】
 妻の年金から差し引かれた介護保険料、後期高齢者医療保険料は、夫の社会保険料控除とすることができますか。
【答】
 妻の年金から差し引かれた保険料は、夫が「支払った場合又は給与から控除される場合」には該当せず、夫から社会保険料控除として控除できません(所法74①)。ただし、後期高齢者医療保険料については、一定の手続きを行えば夫の口座から差し引きこともできます。この場合には夫の社会保険料控除の対象となります。

【問】
 国民年金保険料を2年分前納した場合の社会保険料控除はどのように控除できますか。
【答】
 国民年金を前納した場合、前納した年分で支払額全額を控除するか、前納した各年分に分割して控除するのか選択することができます。ただし、一度選択した方法を、更正の請求で変更することはできません。

Ⅲ-3《所得控除・寄付金控除》

【問】
 公益社団法人等に対する寄附金について、当初確定申告では所得控除としていたものを、税額控除の方が有利になると判明したため更正の請求をすることができますか。
【答】
 寄附金に係る税額控除は当初申告要件となっていることから、当初申告において所得控除の適用を受けていた場合、更正の請求で税額控除に選択替えすることはできません。また、当初申告において寄附金の申告をしていない場合も税額控除を受けることはできません。この場合、更正の請求により所得控除の適用はできます。

Ⅲ-4《所得控除・寡婦控除》

【問】
 夫(90歳)は昨年死亡し、夫が営んでいた不動産貸付業務(年間所得400万円)を妻(88歳・扶養親族なし)に引き継いだ場合、寡婦控除は受けられますか。
【答】
 夫と死別した場合、合計所得金額が500万円以下であれば、扶養親族を有している必要もなく、また、年齢も関係ないことから寡婦控除の適用があります。

Ⅳ-1《税額控除 外国税額控除》

【問】
 当初確定申告において外国税額控除の適用を失念していた場合、更正の請求や修正申告においては、外国税額控除の適用はできませんか。
【答】
 修正申告書、更正の請求書に外国税額控除金額とその計算に係る明細書の添付を行い、外国所得税を課されたことを証する書類を添付すれば適用ができます(所法95⑩)。

【問】
 令和3年分に外国にある土地建物を譲渡しましたが、譲渡所得に係る外国所得税を令和4年になってから納付した場合、どのように外国税額控除を適用するのでしょうか。
【答】
 外国税額控除を適用する年分は、外国所得税を納付することとなる日の属する年分です。問の場合、令和3年分については控除余裕額を計算した外国税額控除の計算明細書を作成したうえで確定申告を行い、令和4年分は控除余裕額の範囲内で外国税額控除を適用することになります(所法95⑵、122⑵)。令和4年分において、申告する所得金額がない場合、外国税額控除額がそのまま還付されることになります(所法95③)。

【問】
 特定口座(源泉徴収有)で取り扱っている国外株式の配当等について、申告することなく外国税額控除を申告することができますか。
【答】
 国外株式の配当等について申告不要を選択した場合、当該配当等に係る外国所得税は外国税額控除の計算の基礎に入れることはできません(措法4の5⑪)。

Ⅳ-2《税額控除 住宅借入金等特別控除》

【問】
 建築後25年を経過した中古住宅を取得した場合、住宅借入金等特別控除の適用はできますか。
【答】
 令和4年以降、昭和57年1月1日以後に建築されたものが中古住宅の対象となることに改正されました。昭和56年12月31日以前に建築された住宅については、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定中古住宅でない限り対象とはなりません。

【問】
 床面積が40㎡以上50㎡未満の新築住宅を取得した場合、住宅借入金等控除の適用はどうなりますか。
【答】
 入居が令和4年分の場合、特別特例取得に該当する家屋は、控除額1%の住宅借入金等特別控除の適用があります。また、控除率0.7%(13年間一定)の適用もできますので有利な方を選択することになります。
※特別特定取得 住宅取得に係る対価の額に含まれる消費税等が10%の場合をいいます。

【問】
 父が所有する家屋を長男が増改築した場合は、住宅借入金等特別控除の適用はありますか。
【答】
 増改築した場合の住宅借入金等特別控除の適用は、自己の居住用に供する家屋について増改築した場合に限られますので、所有者でない長男は住宅借入金等特別控除の適用はありません。増改築する前に父から長男へ贈与等により取得した場合には、その適用があります(措法41①、措令26①)。

【問】
 住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けている場合、住宅借入金等特別控除の適用において注意すべきことはありますか。
【答】
 住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例の適用を受けた場合には、住宅借入金等特別控除の適用においてその計算上特例を受けた金額を住宅等の取得価額から減算する必要があります(措法41、70の2②五、70の3③五、措令26⑥)。

【問】
 新たに取得した家屋の居住用に供した年に住宅取得等特別控除を受け、また、これまで住んでいた家屋の譲渡をした場合、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除(措法35)」等の特例を受けることはできますか。
【答】
 これまで居住していた家屋を譲渡し「居住用財産を譲渡した場合長期譲渡所得等の特例等(措法31の3①、35①、36の2、36の5、37の5)」を受けている場合には、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
令和2年4月1日以後に譲渡した場合適用を受けられない年分
・・・・ 居住用に供した年分、その前2年分・後3年分
令和2年3月31日以前に譲渡した場合適用を受けられない年分
・・・・ 居住用に供した年分、その前後2年分