従業員の転居に伴う費用等を会社が負担した場合の所得税の取扱い

《質問》

 当社では従業員の転勤に伴い、転居に係る次の諸費用の負担を行うことを検討しています。所得税等課税関係はどのようになりますか。現在従業員は自身が契約したアパートに居住しています。
①転居に伴う引越費用(従業員・家族分)
②転居に伴い子供が転校した場合の入学金の一部補助
③賃貸契約解除に伴う解約違約金
④従業員が契約した新規のアパート契約に伴う礼金等初期費用負担・家賃の半分補助

《さくら税研からのアドバイス》

【所得税関係】
 質問①について
 給与所得者の転任に伴う転居のための旅費等を支給されても、給与所得者は非課税である旨の規定となっています(所法9①四)。非課税となる旅費等の範囲について、必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるもので、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられるものされ、次の事項を勘案して判定しています(所基通9-3)。
⑴支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたもの
⑵ 支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるもの

 ご質問のように、旅費規程に基づき支給される従業員本人・家族の旅費、引越費用(実費)は非課税と取り扱われます。
 また、家族の旅費については、従業員の赴任後家族が遅れて(3年以内)同居するような場合の転居費用であっても非課税として取り扱われています。

質問②について
 子供が転校することに伴い入学金の一部を負担した場合には、従業員の個人的な費用を負担したものとして非課税とはならず、給与所得として課税されます。

質問③④について
 住宅について評価した賃貸料相当額の1/2以上を徴収していれば課税されない旨の取扱いは、住宅が会社所有のもの、ないしは会社が借り上げ、従業員に貸す場合に適用されるものです。したがって、従業員自身が賃貸借契約を結び、賃貸料の一部を負担するような場合には、非課税規定はなく会社が個人的費用を負担しているにすぎず、給与として課税されるものと考えます。従業員が賃貸借契約を解除するに当たっての解約違約金についても同様に給与課税されるものと考えます。

【消費税関係】
 会社等が旅費等の支給にあたり、仕入税額控除の対象となるか否かは、所基通9-3の例により判定するとされていますので(消基通11-2-1)、所得税法上非課税とされる旅費、引越費用の支給については、課税仕入れの対象となります。給与所得として課税される費用については、課税仕入れの対象とはなりません。

《参考法令》

【所得税法】
(非課税所得)
9条1項
一~三 (略)
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの
五~  (略)

【所得税基本通達】
〔旅費(第4号関係)〕
(非課税とされる旅費の範囲)
9-3 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

【消費税基本通達】
第2節 課税仕入れの範囲
(出張旅費、宿泊費、日当等)
11-2-1 役員又は使用人(以下「使用人等」という。)が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族(以下11-2-1において「退職者等」という。)がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、事業者がその使用人等又はその退職者等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。
(注)
1 「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲については、所基通9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。
2 海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない。

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