相続税:生前贈与に係る遺留分侵害額請求の課税関係

 生前に全財産が贈与された場合の遺留分侵害額請求の課税関係についてご教示ください。

《前提事実》
被相続人(親)の相続人は子Aと子Bである。
親は生前に子Aに財産を贈与(子Aは暦年贈与を適用して申告・納税済)しており、相続時には財産はなかった。
子Bは子Aに対し、遺留分侵害額請求を行い、子Aはこれに応じた。

《質問》
1.  子Aから子Bに遺留分として金銭を支払った場合には、子Aが贈与税の更正の請求を行い、子Bが贈与税を納税することになるのでしょうか。

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譲渡所得:概算取得費により申告した後に実額が確認できた場合の 更正の請求

《事実関係》

 Aさんは、令和5年に東京都区内に所在する土地(住宅地)を売却しました。
 Aさんは、譲渡所得の計算において、土地を購入した平成3年(1991年)当時の取得費を証する売買契約書等がみつからなかったため、概算取得費(譲渡価額の5%)により計算して確定申告を済ませました。
 確定申告期限の後、購入当時の取得価額が分かり、その価額が概算取得費より高額であったので、その価額を取得費として更正の請求を行いました。

《質問》

 更正の請求書に添付する資料は次のとおりですが、取得費を主張する添付資料((1)又は(2))如何により更正の請求の可否に違いがあるでしょうか。
(1) 譲渡物件の購入金額を証する売買契約書や領収書等を添付する場合
(2) 購入金額を証する売買契約書や領収書は見つからないが、「市街地価格指数」や平成3年当時の路線価を基にした簡便法(路線価格÷0.8)等により、取得費の推計額を説明する資料を添付する場合

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相当の地代

《質問》

 下図のように、会社Aと個人甲の所有の土地の上に会社Aが賃貸建物を建築中です。
① 相当の地代を計算する場合(権利金のやり取りなし)において、土地を路線価で評価する時、会社Aと個人甲の土地を全体として評価し、個人甲の持分面積割合を乗ずればよいのでしょうか。
② 無償返還の届出書を提出し地代をやり取りする予定ですが、固定資産税の2~3倍を下限とし、相当の地代を上限とする範囲内で地代を決定すれば課税上問題ないでしょうか。
 また3年ごとの地代改訂や地代改訂しない場合でも課税上問題ないでしょうか。
③ 上記②で仮に個人甲が法人Bであった場合において、無償返還の届出書を提出し、相当の地代でやり取りする場合、3年ごとの地代改訂でも課税上問題ないでしょうか。
④ 上記②及び③の地代のやり取りは、建築中からすべきでしょうか。

会社1

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小規模宅地の適用について

《質問》

〈特定同族会社事業用宅地について〉
 特定同族会社事業用宅地に該当する一定の法人とは、相続開始の直前において被相続人および被相続人の親族等が発行済株式の総数の50パーセント超を有していることとされております。
 該当の法人A社の役員は被相続人甲の長女と長女の配偶者で、甲は役員ではありませんでした。出資も同様に長女と配偶者が100%有しており、甲は出資を有していませんでした。
 今回、甲がA社に賃貸していた建物を、長女が受遺者として引き続きA社に賃貸しています。この場合における、建物の敷地部分について特定同族会社事業用宅地の特例を受けることは可能でしょうか。

〈遺贈における基礎控除について〉
 被相続人甲は先妻との間に3人の子がおり、後妻との間に2名の子がおります。後妻とは25年前に離婚しています。今回の相続に際して、甲は生前中、甲の有する一切の財産及び債務を、A社の役員を務める長女乙に相続させる旨の遺言公正証書を作成していました。
 乙は遺言の通り甲の有していたすべての財産債務を引き継いでおります。
 相続税の申告に当り、基礎控除については、相続人5人として計算すればよいでしょうか。

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相続税申告書の提出義務の承継及び債務控除について

《前提》

 被相続人Aは、令和3年12月24日(申告期限:令和4年10月24日)に亡くなりました。
 その後、令和4年5月14日に、Aの夫である被相続人Bが亡くなりました。
 被相続人Aの法定相続人は、夫であるBと兄弟姉妹3名の計4名です。
 被相続人A及びBは、生前(最終更新日は令和2年7月29日)信託銀行において遺言信託を契約しており、公正証書遺言にはそれぞれ「自身が死亡した際には配偶者にすべての財産を相続させる。先に配偶者が死亡していた場合には、Bの甥であるCにすべての財産を相続させる」旨が記載されていました。
 被相続人Aの死後、遺言執行を行わないままBは令和4年5月14日(申告期限:令和5年3月14日)に亡くなっていました。Bの法定相続人は、兄弟姉妹及びその代襲相続人である甥姪の計7名です。Cは、Bの法定相続人の一人である兄の息子です。
 また、A及びBの生前においてCとはほとんど交流がなく、C自身もAやBの死を知ったのは相続発生日より後だそうです。

《質問》

① 被相続人Aの相続に係る相続税申告義務者について
 本来の提出義務者であるBが申告書を提出しないまま死亡した場合、Bの包括受遺者であるCがその提出義務を承継すると考えてもよろしいでしょうか。

② 被相続人Aの相続に係る相続税申告期限及び申告の種類について
 申告期限はBの相続開始を知った日の翌日から10月以内と考えてもよろしいでしょうか。
 また、その場合に提出する申告書は期限内申告書であると考えてよろしいでしょうか。

③ 被相続人Aの遺言執行費用及び相続税申告に係る税理士報酬について
 被相続人Aの相続については現状においても遺言執行を行っておらず、遺言執行費用及び税理士報酬は被相続人A及びBの相続手続分をまとめて包括受遺者Cが支払うこととなります。
 この場合、被相続人Aの相続に係る遺言執行費用及び税理士報酬については本来被相続人Bが負担すべきものと考えられるため、被相続人Bの相続において債務控除の対象となるのでしょうか。

〈事実関係〉

 被相続人A(妻)の相続発生日は令和3年12月24日、申告期限は令和4年10月24日です。
 被相続人B(夫)の相続発生日は令和4年5月14日、申告期限は令和5年3月14日です。
 AとBの間に子はいません。
 生前A及びBは、それぞれ「自身が死亡した際には配偶者にすべての財産を相続させる。先に配偶者が死亡していた場合には、Bの甥であるCにすべての財産を相続させる」旨の公正証書遺言を遺しています。また、遺言執行は信託銀行が行うと記載されています。
 A及びBとCとの間に生前交流はなく、CがA及びBの死亡を知ったのは後日です。
 被相続人Aの遺言執行や遺産整理は現状において手続き中です。
 被相続人A及びBの相続税申告については、被相続人Bの死後に信託銀行から弊社に依頼がありました。

〈当方の見解〉

① 被相続人Aの相続に係る相続税申告義務者について
上記の通り、Aの兄弟姉妹ではなくBの包括受遺者であるCがその提出義務を承継すると考えます。

② 被相続人Aの相続に係る相続税申告期限及び申告の種類について
相続税法27条により、Cが自己のために遺贈があったことを知った日の翌日から10月以内が申告期限となり、その申告期限内に申告書を提出した場合は期限内申告であると考えます。

③ 被相続人Aの遺言執行費用及び相続税申告に係る税理士報酬について
債務控除の対象となる債務は、「確実と認められるもの」「被相続人の債務で相続開始の際 現に存するもの」とされているため、発生することが確実であった遺言執行費用は債務控除の対象となる一方、被相続人Aの相続税申告の税理士報酬については被相続人Bの死後に発生したものであり、かつ確実に発生したものとも言えないため、税理士報酬については債務控除の対象とならないと考えます。

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小規模宅地等の特例について

《前提》

・相続発生日  : R4年12月
・被相続人   : 母(父は既に逝去)
・主な相続財産 :土地および当該土地上の家屋A
・家屋Aについて
 区分登記はされておらず、家屋全体を被相続人が単独で所有
 (1F) 被相続人の自宅
 (2F) 賃貸 : 3年以上前から相続人である息子が居住
   ※不動産会社(同族会社)を通じて賃貸、賃貸借契約書あり
   ※被相続人は賃料収入について確定申告を行っている

《質問》

小規模宅地等の特例の適用について
・国税庁HPに記載のタックスアンサーNo.4124において 『一棟の建物に居住していた親族』に関して、一棟の建物とは 『被相続人または被相続人の親族の居住の用に供されていた部分』 との記載があります。
 従って、本件では1Fに居住している被相続人と、2F社宅部分に居住している相続人は同居親族であるとは解釈できないと考えておりますが、間違いないでしょうか。
・一方、長男が同居親族ではない場合
 いわゆる家なき子要件➀から④を満たす必要がありますが②の要件に照らし、小規模宅地等の特例の適用要件を満たすか判断に困っています。
 ②では、『相続開始前3年以内に(中略)取得者の三親等以内の親族の所有する家屋(中略)に居住したことがないこと』 が適用要件とされていますが、同家屋については『相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。』 との補足があります。
 本件において、長男について“家なき子“の適用要件を満たすとして、小規模宅地等の特例を適用することは可能でしょうか。

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配偶者控除の適用可否について

《質問》

 相続税の期限後申告時の配偶者控除適用の可否についての質問です。
 被相続人は、2021年6月10日に亡くなりました。(申告期限:2022年4月10日)
 相続人は妻と子の2名です。
 相続発生後、親子間の話し合いにより、2021年7月頃に預金はすべて解約され、妻の口座に入金されています。(解約時に、遺産分割協議書は未作成)
 その後、2023年2月3日に妻が亡くなり、被相続人について相続税の申告が必要であることが判明したため、期限後申告を行おうと考えています。

1 被相続人の相続税の期限後申告にあたって、遺産分割協議書が作成されていない場合でも、預金が解約され妻の口座へ入金されたことをもって、申告期限内に遺産分割協議は行われたものとして、配偶者控除を適用し申告することは可能でしょうか。

2 遺産分割協議は行われていなかったとみなされた場合は、妻の相続発生をもって、被相続人の財産の分割割合は法定相続分(妻と子が2分の1ずつ取得)になることが確定するのでしょうか。
 この場合、被相続人の期限後申告にあたって、法定相続分で分割した財産に対して、配偶者控除を適用することは可能でしょうか。

3 手続上の問題として、期限内に未分割の状態で相続税申告を提出しておらず、3年以内の分割見込み書も提出されていない場合、期限後申告時に配偶者控除の適用を受けることはできないのでしょうか。

キャプチャ

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生命保険の支払者と契約者が違う場合の課税関係

《質問》

 生命保険の課税関係を教えてください。
 特にケース3・4・5がわかりません。

〈契約〉
死亡保険金       2,500万円 現在までの契約経過年数20年
契約者         B
実際の保険料負担者   A(Bの母)
被保険者           B
受取人            C(Bの子)

【ケース1】  Bが死亡した場合・・・・AからCへ2,500万円の贈与に該当し、Cへの贈与税

【ケース2】  仮に契約者を母Aにした場合・・・・ケース1と同じ

【ケース3】  保険料負担者をAがらBに変更した後、Aが3年後に死亡。その後B(被保険者)が10年後に死亡した場合

【ケース4】  Aが死亡し、その時に保険料負担者をBに変更した後、B(被保険者)が10年後に死亡した場合

【ケース5】  保険料負担者をAからBに変更した後、BがAより先に死亡し、その後Aが 死亡した場合

【ケース6】  解約して解約返戻金がBに入った場合・・・・解約返戻金が母(A)からBへの贈与としてBへの贈与税

【ケース7】  現状の契約で、保険料相当をAがBに贈与していると認められた場合
①  年間保険料が110万円を超えれば、支払保険料の金額がAからBへ贈与されたものとして、Bに対して贈与税
②  Bが死亡した場合は、Bの相続税

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小規模宅地等の特例適用の可否について

《質問》

① 当該土地は1/2が被相続人(X)名義、1/2が被相続人の妹で唯一の相続人(Y)名義
 その上に賃貸アパート(4部屋で賃貸割合100%)があり建物の名義は被相続人の甥っ 子でYの息子である(Z)名義となっています。
 また、ZはXとYに対して地代は払っておらず使用貸借でありX・Y・Zともに同居して生計を一としています。
 今回の相続で当該土地をYが相続する予定ですがこの時の評価方法について貸宅地評価ではなく、自用地評価で間違いないでしょうか。
 また、貸付事業用宅地等の特例は適用可能でしょうか。
(適用を受けるためには、YではなくZが相続しなければならないなど)

② 別の土地で1/2が被相続人(X)名義、1/2が被相続人の妹で唯一の相続人(Y)名義
 その上に賃家があり、建物の名義はXとYが1/2ずつとなっています。
 貸家の入居者は第三者で相当の賃料ももらっております。
 今回の相続で当該土地をYが相続する予定ですが、この時の評価方法について貸宅地評価で間違いないでしょうか。
 また、貸付事業用宅地等の特例は適用可能でしょうか。

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遺留分侵害額請求による小規模宅地等特例の可否

《事実経過》

1 当初申告
 令和4年1月20日に本件相続開始。
 本件被相続人(父)には長男と次男の二人の相続人がいますが、被相続人は長男に全ての財産を相続させる旨の公正証書遺言を残したため、長男は全相続財産を取得したとして法定申告期限内に相続税の申告をしました。
 なお、当該相続財産は現金・預貯金、有価証券のほかにA宅地(特定事業用宅地の要件を満たすもの)、及びB宅地(貸付事業用宅地等の要件を満たすもの)の二つの宅地であり、長男はA宅地を小規模宅地等の特例対象として選択をしています。

2 遺留分侵害額請求
 相続税の申告後、本件公正証書による相続は、次男の遺留分(法定相続分の二分の一)を侵害しているとして、次男は長男に対して令和5年2月28日に遺留分侵害額請求をしました。
 長男と次男は協議の結果、令和5年4月30日に遺留分侵害額が確定し、以下の合意書を作成しました。

3 合意書の要旨
 本来であれば遺留分侵害額に相当する金銭を支払うところであるが、長男に手持ち資金がないことから、長男は金銭に替えて遺留分侵害額に見合う価値のあるA宅地を次男に渡す。

《質問》

 長男は次男からの遺留分侵害額請求を弁済するので、当初申告した相続税の税額が過大となることから更正の請求をする予定です。
①  当初申告では、長男はA土地を特定事業用宅地として小規模宅地等の特例を適用しましたが、遺留分侵害額請求の代償としてA宅地を次男に所有権を移転した後においても、更正の請求においてA土地を小規模宅地として選択したまま更正の請求ができますか。
②  それともA宅地の替わりにB宅地に選択替えして「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例は適用して更正の請求をすべきでしょうか。

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