解散決算登記後の処理と株価計算について

以下の法人は、いずれも中小企業に該当する7/31決算法人です。

 オーナー甲とその同族会社である不動産所有会社S社(オーナー一族及び別の同族会社H社が100%出資)が株主であるグループの事業中核会社R社(オーナー甲60%とS社40%が出資)の解散清算を近々予定しており、その清算結了登記後のS社での処理とS社の株価計算についての質問です。私はR社の顧問をしておりますが、S社とH社は別の税理士が担当しております。

《質問1》
 そもそもR社は、オーナー甲とその同族会社S社からすると、その所有形態は、「一の者による直接・間接(みなし直接)の完全支配関係にある」子会社と考えられるでしょうか?

《質問2》
 完全支配関係にあるとした場合、S社のB/S上の①貸付金債権放棄損失(貸倒損失)と②投資有価証券の消滅損とが損金計上可能か否かについてですが
(1) ①については、過去の支援状況からして「子会社の解散等に伴う当該子会社等のための損失負担に「合理的な整理計画」の下で経済的合理性がある場合には寄附金には該当しない」というケースに当たらないとすれば、グループ法人税制の「完全支配関係がある内国法人間の寄附」として、全額損金不算入、全額益金不算入ということになるのでしょうか?

(2) ②の有価証券消滅損は、完全支配関係子会社間損金不算入(資本金の40%相当分)となり、別表4加算と別表5(1)でのⅠ(利益積立金増)とⅡ(資本積立金減)の振替処理とすべきでしょうか?それと解散法人R社の繰越欠損金は、親会社S社への引継ぎが可能となるという理解でよいでしょうか?

《質問3》
 S社の株価計算について、中会社の小に該当する場合、類似業種比準価額の算定上の純資産価額は別表5(1)のⅠ(利益積立金増)とⅡ(資本金等の額減)がベースとなる為変わりませんし、年利益金額でも「引き継いだR社の繰越欠損金」は有ったとしても減額にならず、第5表の純資産価額(相評)での投資有価証券が消えて純資産が減るという点だけが株価下落要因になるだけでしょうか?

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合併に伴い被合併法人の役員に対し退職金を支給することの是非と退職所得控除

《質問》

 A社(合併法人:平成8年1月設立)はB社(被合併法人:平成10年3月設立)を令和3年9月に吸収合併することになりました。B社では合併することを機に設立時からの代表者甲に対し、退職金を支給することを予定しています(B社は未払金処理、A社で支給)。甲はA社においても代表者であり、引続きA社の代表者に止まりますが退職金の支給についての課税上の問題はありませんか。
 なお、甲は、3年前にA社に吸収合併されたC社からも退職金の支給を受けていますが(勤続年数 8年:勤続期間 平成22年~30年)、このような場合の退職所得控除額の計算はどのようになりますか。

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日当、宿泊費について(更新)

2018年4月9日に投稿しました「日当、宿泊費について」の参考資料「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査」(産労総合研究所出版 労務事情より)が、2019年度に更新されましたので再度修正して投稿いたします。

《前提》

 衣料品、小物の輸入販売の会社で、ご夫婦で経営されています。従業員はおらず年商1.5億円ほどの規模です。主に、イタリアから輸入しデパートに卸しますが、自ら仕入れる場合と仲介手数料をもらう場合があり、どちらにしても3か月に一度、約1か月間社長がイタリアに行き、現地の工場と交渉等を行います。

《質問》

 この度税務調査が入ることとなり、会計処理や各規定等を見直していたところ、出張の日当、宿泊手当てに関して不安を感じたのでご質問させていただきます。
 会社には海外出張旅費規定があり、社長のヨーロッパ出張につきまして日当10,000円、宿泊費15,000円と定めております。なお、宿泊費は実費ではなく定額支給となっています。
 また、支度金として30日未満の出張は80,000円、30日を超える場合は100,000円を支給しております。日当と、宿泊費と支度金のすべてを同時に支払っており、税務調査に当たって不安を感じております。
 なお、30日間の出張となりますと、一回の出張(年数回あり)で総額850,000円を社長に支払っており、金額も大きくなるので不安に感じております。
 また、一般的な日当、宿泊費の相場はございますでしょうか?何か参考にさせて頂ければと思います。

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賃借オフィスビルの内装工事の取扱いについて

《前提》

 甲社は、都内の51階建てオフィスビル(鉄骨鉄筋コンクリート造)に入居しています。
 この度同じ階の隣のフロアに空きが出たため、隣のフロアも賃借し事務所の増床を行いました。
 下図のA部分(A-a:事務所、A-b:会議室、A-c:社長室)を15年前より賃借しており、新たにB部分が追加されました。

キャプチャ

《工事工事内容》

(1)壁取壊し工事
① A部分とB部分を一体的に利用するため、壁の一部を取り壊す。

(2)タイルカーペットについての工事
① 新たに賃借したB部分の床に敷き詰められているタイルカーペットを全て剥がす。
 なお、後④で再利用する。
② 従来から賃借しているA部分の什器一式(机・椅子・キャビネット等)を一旦B部分へ移設退避する。
③ A部分の床に敷き詰められているタイルカーペットを全て剥がし処分する。
 なお、A-a及びA-bのタイルカーペットは、15年前に賃借した際に元々敷き詰められていたものです。
 A-cのタイルカーペットは、最初に賃借した際に自己負担にて若干上質のものに変更していたものです。A-cのタイルカーペットは、資産計上されています。
④ ①で剥がしたタイルカーペットをA-a部分に敷き詰める。
⑤ 新たに購入したタイルカーペットをA-b部分に敷き詰める。
⑥ 新たに購入したタイルカーペットをA-c部分に敷き詰める。
⑦ ②で一旦B部分へ移設退避した什器一式をA部分に戻す。
⑧ 新たに購入したタイルカーペットをB部分に敷き詰める。

(3)クロスについての工事
 新たに賃借したB部分のクロスを甲社好みのデザインのものに張り替える。

(4)エントランスドアについての工事
 新たに賃借したB部分のエントランスドアを甲社好みのデザインのもの(鋼製)に取り換える。

《質問》

(1)壁取壊し工事について、以下ご教示ください。
・資産計上の要否、資産区分、耐用年数

(2)タイルカーペット工事について、以下ご教示ください。
・⑤のタイルカーペットの資産計上の要否、資産区分、耐用年数
・⑥のタイルカーペットの資産計上の要否、資産区分、耐用年数
・⑧のタイルカーペットの資産計上の要否、資産区分、耐用年数
・②及び⑦の什器移設費用の取扱い(A-a:事務所、A-b:会議室、A-c:社長室)

(3)クロス工事について、以下ご教示ください。
・資産計上の要否、資産区分、耐用年数

(4)エントランスドア工事について、以下ご教示ください。
・資産計上の要否、資産区分、耐用年数

 上記(1)から(4)は別々に資産計上の要否を検討するのでしょうか?
 賃借物件の造作として一括して資産計上の要否を検討するのでしょうか?
特に耐用年数については、具体的年数の答えを教えていただきたいです。

 賃借建物に行った内部造作工事については、一括して耐用年数を合理的に見積もって計上するとありますが、いち税理士が見積もることは実際なかなか困難かと思われます。
 オフィスビルに入居する法人が上記のような工事を行うことは頻繁に事例としてあるかと想像します。税務当局はどのように取り扱っているのでしょうか。
 建物附属設備の前掲のもの以外(主として金属製)18年を使用しておけば調査で特別問題視されないといった都市伝説も聞いたことがありますが・・・。

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土地の貸借にかかるグループ法人税制の適用について

《質問》

 親会社甲は100%子会社乙に対し土地を賃貸しています。
1. 無償返還届を提出した上で地代月15万円の授受をしています。ちなみに相当地代は月30万になりますので差額の15万が 法基通13-1-7 によって地代の認定課税対象となります。
 この場合調査で否認された場合、グループ法人税制によってどのように処理されるのでしょうか。
2. また無償返還届を提出しないで借地権の認定課税を調査で受けた場合の処理についても教えて下さい。(借地権価額を3,000万とします。)

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交換の特例について

《質問》

 個人Aの土地の上に、同族社B社が30年前に建物を建てて第三者に永年貸していました。
 B社からAへ権利金の支払は無く、無償返還の届無く、相当の地代以下ですので
自然発生借地権がついています。
 この借地権とAの所有する他の土地とを交換の特例を使って交換したいと思います。その時、法人の仕訳
  土地1億円  /  雑収入1億円
に対して、法人税はかからないでしょうか。

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役員給与の定期同額給与について

《前提条件》

・3月末決算法人
・取締役会設置会社
・給与支払基準:末締め翌月10日支払(役員・従業員共に)
・株主総会等で決められたとおり、役員給与を支給している

《時系列・内容》

・4月1日 臨時株主総会開催
 新型コロナウイルス感染症による業績悪化に伴い、役員給与を4月分(5月10日支払)から70万円に減額する(業績悪化事由に伴う減額改訂)
・5月20日 定時株主総会開催
 役員給与については、取締役会に一任
・6月22日 取締役会開催
 役員給与を7月分(8月10日支払)から100万円に増額する(三月以内 通常改定)

《質問》

 4月分(5月10日支払)、5月分(6月10日支払)、6月分(7月10日支払)及び7月分(8月10日支払)以降の役員給与は、定期同額給与として当期の損金の額に算入されるのでしょうか。

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代表者が100%株式を所有している場合における配偶者のみなし役員判定

《質問》

 当社は宅建業を営む法人です。
 当社の代表取締役はA氏(宅建登録者、100%株主)ですが、登記上役員とはなっていない配偶者B氏を使用人として取扱う方法はありませんか。
 B氏は経理その他事務を担当しており、経営従事者に該当するかどうかは微妙なところです。B氏を役員とせざるを得ない場合は、経理事務の外注として外注費を支払うことは税務上問題がありますか。

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事業譲渡時において役員給与の増額改定から、短期間で役員退職慰労金を支給する場合の問題点

《質問》

 6月決算法人の関与先であるA医療法人は、令和3年2月に第三者へ事業譲渡する予定です。この事業譲渡時に現在の役員(全て経営者一族)が全員退任することになっており、現在の全役員に対して役員退職慰労金の支給を検討しています。
 令和2年9月に役員給与を増額改定することにしていますが、増額改定から退任までの期間が半年と短く、功績倍率法の計算に用いる最終月額報酬に疑問があります。
 今回、代表者の功績倍率を3倍、常勤役員(2名)は1.5倍で計算することとしています。
 代表者の従前の月額報酬は280万円、増額改定で月額380万円とします。
 常勤役員については、従前は月額70万円、増額改定で月額120万円とします。
 この報酬ベースで試算したところ、代表者は15年勤務で7,100万円、常勤役員も同じく15年勤務で各2,700万円と計算されます。
 A医療法人の直前期の税引前利益は約7,000万円で、法人の業績及び役員の職務内容からみて、改訂前後の役員報酬が過大であるとは考えておりません。
1. 上記の通りに増額改定の半年後に役員退職慰労金を支給した場合、退職金の増額目的の給与改定であり恣意的なものであるとみなされるリスクはありますか。
2. 事業譲渡の時期を遅らせて令和3年9月以降とした場合には、今回の増額改定の恣意性を問われる可能性は低くなるでしょうか。

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設立初年度の役員報酬支給開始時期について

《質問》

 当社は現在設立中の法人で、事業開始には公的機関の許認可が必要な業種です。まもなく設立登記が完了しますが、許認可申請後も許可が下りるまでは相当の時間を要するものと思われ、事業開始までは営業を開始することはできず開業準備行為のみです。
 事業開始までは全く収入見込みがありませんので、役員報酬についても事業開始後に支給開始することを考えておりますが、事業年度の途中で役員報酬を支給開始することになるため、これは定期同額給与の要件を満たさないのではないかと懸念しています。
 事業開始に伴い、取締役の業務は増加することになりますが、このような状況下で役員報酬を定期同額給与として取扱う方法はないのでしょうか。

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