転籍に伴う退職金及び賞与の取扱い その1

《質問》

 A社は、自動車部品の加工を行う社長一族が株式を100%保有する同族会社ですが、業態は製品の加工売上高が15%前後で社長一族が株式を100%保有し、社長及び役員がA社と同一のB社への人材の派遣業務を主たる事業として行ってきました。
 この度A社およびB社の賃金の締切日であります、10月20日付でA社の派遣社員全員をB社に転籍させることになりました。よってA社には社員2名と役員が残り、従前の事業を継続していくことになりました。

①A社は就業規則による退職金規定があり、勤続3年を経過した社員は、毎年4月1日に会社指定の委託保険制度に加入し、委託保険制度を利用した積立により社員の退職時には、当該保険の退職社員分を解約して、返戻金全額を退職金として退職社員に支給しています。
 上記の通り、A社の派遣社員全員をB社に転籍させることになりましたが、生命保険会社に積立てありました保険契約をB社に保険契約の移動をしました。保険契約の解約返戻金相当額は、A社の貸借対照表上の保険積立金勘定は、払込保険料の半額を損金に計上してきましたので、解約返戻金相当額と保険積立金と差額が生じております。
 従来社員の退職時には差額金は、退職金と相殺されて収益は生じないのですが、解約返戻金相当額でA社からB社に保険契約を移動させると収益が生じてしまいます。差額金の取り扱いをご教示ください。
 なお、B社の退職金規定はA社と同様のものであり、転籍者がB社を退職する際に、B社がA社からの在職年数を通算して退職給与を支給する定めになっています。

② A社からB社への社員転籍に伴いまして、B社は賞与金を夏期は、7月中旬、冬期は12月中旬に支払っておりますが、今年度の冬期の賞与金を12月中旬に支払いを予定しており、賞与金の査定期間は、A社およびB社とも冬期は3月21日から9月20日が対象期間となっています。
 今年度の冬期の賞与金につきまして、A社からB社への転籍社員の賞与金の対象期間は、A社の勤務期間内のものですので、支払賞与金の金額をA社の損金にしたいと考えております。冬期賞与金の支払いはB社から支払いたいとの会社の要望ですので、A社からB社に賞与金相当額を振り込んで、B社が冬期賞与金を各人に支払うという取り扱いで問題ないでしょうか。

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役員退職金について その2

《質問》

〈合併直前の状況〉
甲社 : 代表取締役A氏、取締役B氏とC氏、株主B氏100%
乙社 : 代表取締役A氏、取締役B氏、株主B氏100%
A氏の子供がB氏(C氏は赤の他人)
以上の状況において
甲社を存続会社として甲社と乙社は適格吸収合併を行いました。
(無対価、資本金増加無しの適格合併)
甲社の役員構成は合併前後で変更無しです。
この場合、B氏に対して合併消滅による乙社退任に伴い退職金を支給しようと考えていますが税務上問題ないでしょうか。

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役員退職金について その1

 A社は、M&Aにより上場会社の子会社になります。これにより、A社で採用していた役員退職金制度は廃止することになりました。
 A社の役員は子会社化後も継続します(子会社化後に任期満了を迎えますが重任します)。

《質問》

1. 役員退職金職制度を廃止するので、廃止時または任期満了時に、役員就任時からの役員退職金制度廃止時までの期間に係る役員退職金を支払う場合には、法人税及び役員の所得税の取り扱いはどうなるのでしょうか。

2. 上記1.ではなく、重任の数年後に役員が退任した時に、役員退職金を支払う場合
 廃止となった役員退職金規定では、「最終報酬月額 × 役職係数 × 役員期間」で退職金を計算することになっておりますが、役員期間を役員就任時から役員退職金制度廃止時でなく、役員就任時から今回の役員退任時で計算しても、過大役員退職金にならないでしょうか。また、役員の所得税(特に勤続年数)の取り扱いはどうなるのでしょうか。

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加算税の基礎知識 (その4) 重加算税(法人税)

《質問》

 税務調査において、調査官から非違を指摘され、それが隠蔽・仮装に基づくものだと、修正申告の提出とともに、重加算税が追徴されることとなります。
 重加算税の税率は最低35%と、納税者側の負担も大きいことから、できれば避けたいのが本音です。
 だれが見ても明らかな不正はやむをえませんが、隠蔽・仮装の意義、つまみ申告に係る重加算税賦課の基準、無申告の場合の重加算税賦課など、国税当局との見解の相違により、結論が大きく変わることがありそうです。
 それらの場合の法令、判例等に基づく考え方について、説明をお願いします。
 併せて、次のようなケースについて、ご教示願います。

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加算税の基礎知識(その2) 無申告加算税(法人税)

《質問》

 法定申告期限までに確定申告書を提出しなかった場合において、無申告加算税が賦課されますが、事案や事由によっては賦課されない場合があると聞きました。
 それは、提出しなかったことについて「正当な理由」がある場合や、「更正の予知」をせずに自主的に確定申告書を提出した場合などが該当するとのことですが、身近な場面でのこのようなケースについて、教えてください。
 併せて、源泉所得税に係る不納付加算税についても、偶発的納付遅延による加算税の免除制度があると聞きましたので、どのような制度なのか、アドバイスをお願いします。

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自己の居住用に供していた建物を貸付事業用に転用し、その後売却した場合の課税関係

《質問》

 居住用マンションを取得し、自己の住居として利用していましたが、手狭になり別の物件を求めることにしました。住居としていたマンションは事務所として貸付用に転用することにしましたが、その後、2年ほどして賃借人が退去したため譲渡することになりました。転用した時、譲渡した時の所得税・消費税の課税関係についてご教示ください。

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株式の譲渡損失を申告漏れした場合の更正の請求の可否

《質問》

 一般口座で取引をしていた上場株式について譲渡損失が生じていたにもかかわらず、令和5年分の確定申告において申告を失念してしまいました(上場株式の譲渡以外の申告については、申告済み)。令和6年分において多額の上場株式の譲渡益が生じる見込みです。どのように対応すればよいのでしょうか。

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相続税:生前贈与に係る遺留分侵害額請求の課税関係

 生前に全財産が贈与された場合の遺留分侵害額請求の課税関係についてご教示ください。

《前提事実》
被相続人(親)の相続人は子Aと子Bである。
親は生前に子Aに財産を贈与(子Aは暦年贈与を適用して申告・納税済)しており、相続時には財産はなかった。
子Bは子Aに対し、遺留分侵害額請求を行い、子Aはこれに応じた。

《質問》
1.  子Aから子Bに遺留分として金銭を支払った場合には、子Aが贈与税の更正の請求を行い、子Bが贈与税を納税することになるのでしょうか。

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譲渡所得:概算取得費により申告した後に実額が確認できた場合の 更正の請求

《事実関係》

 Aさんは、令和5年に東京都区内に所在する土地(住宅地)を売却しました。
 Aさんは、譲渡所得の計算において、土地を購入した平成3年(1991年)当時の取得費を証する売買契約書等がみつからなかったため、概算取得費(譲渡価額の5%)により計算して確定申告を済ませました。
 確定申告期限の後、購入当時の取得価額が分かり、その価額が概算取得費より高額であったので、その価額を取得費として更正の請求を行いました。

《質問》

 更正の請求書に添付する資料は次のとおりですが、取得費を主張する添付資料((1)又は(2))如何により更正の請求の可否に違いがあるでしょうか。
(1) 譲渡物件の購入金額を証する売買契約書や領収書等を添付する場合
(2) 購入金額を証する売買契約書や領収書は見つからないが、「市街地価格指数」や平成3年当時の路線価を基にした簡便法(路線価格÷0.8)等により、取得費の推計額を説明する資料を添付する場合

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