土地等の評価・計6回《第1回》

さくら税研フォーラムでは、今週から6回にわたり、「土地等の評価」について解説をさせていただきます。
 解説の予定は次のとおりです。

【目次】

《第1回》
Ⅰ 財産評価基本通達の必要性
1 評価の原則
(1)評価単位
(2)時価の意義
(3)財産の評価
2 共有財産
3 区分所有財産
4 邦価換算
5 評価方法の定めのない財産の評価
6 評価通達の定めにより難い場合の評価
7 国外財産の評価

《第2回》
Ⅱ 評価単位等
1  土地の評価上の区分
(1)原則
(2)例外
(3)地目の判定
2 土地の評価単位
(1)原則
(2)例外
3 宅地の評価単位(1画地の判定)
4 市街地農地等の評価単位
5 地積
6 土地の上に存する権利の評価上の区分

《第3回》
Ⅲ 宅地の評価における評価方式

1 評価方式
2 路線価方式等
(1)路線価方式
(2)路線価
(3)地区区分と画地調整率
(4)奥行価格補正
(5)側方路線影響加算
(6)二方路線影響加算
(7)三方又は四方路線影響加算
(8)不整形地補正
(9)地積規模の大きな宅地の評価
(10)無道路地の評価
(11)間口が狭小な宅地の評価
(12)奥行が長大な宅地の評価
(13)がけ地等を有する宅地の評価
3 倍率方式
4 特定路線価
(1)特定路線価による評価
(2)特定路線価に係る申出

《第4回》
Ⅳ 特殊な状況における宅地の評価

(1)私道の用に供されている宅地の評価
(2)土地区画整理事業施行中の宅地の評価
(3)造成中の宅地の評価
(4)農業用施設用地の評価
(5)セットバックを必要とする宅地の評価
(6)都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価
(7)文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価

《第5回》
V 貸宅地の評価

(1)普通借地権の目的となっている宅地の評価
(2)定期借地権の目的となっている宅地の評価
(3)地上権の目的となっている宅地の評価
(4)区分地上権の目的となっている宅地の評価
(5)区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価
Ⅵ 借地権等の評価
(1)普通借地権の評価
(2)定期借地権の評価
(3)地上権の評価
(4)区分地上権の評価
(5)区分地上権に準ずる地役権の評価
Ⅶ 貸家建付地等の評価
(1)貸家建付地の評価
(2)貸家建付借地権等の評価

《第6回》
Ⅷ 農地の評価

(1)農地の分類及び評価方法等
(2)生産緑地の評価
(3)貸し付けられている農地の評価
Ⅸ 山林・原野の評価
(1)山林の分類
(2)保安林等の評価
(3)特別緑地保全地区内にある山林の評価
(4)貸し付けられている山林の評価
(5)原野の評価
X 鉱泉地等の評価
Ⅺ 雑種地の評価
(1)雑種地の評価方法に関する基本的な考え方
(2)市街化調整区域内にある雑種地の評価
(3)貸し付けられている雑種地の評価
土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成30年分以降用)

【土地等の評価】《第1回》

I 財産評価基本通達の必要性

 相続税や贈与税の課税対象となる財産の価額は、相続税法第22条の規定により、「財産の取得の時における時価により評価する」こととされていますが、相続税や贈与税の課税対象となる財産は、土地、家屋などの不動産、動産、有価証券など多種多様であり、納税者の方がこれらの財産の時価を的確に把握することは必ずしも容易なことではありません。
 そのため、国税庁では、相続税法第22条に規定する「財産の取得の時における時価」に関する法令解釈通達である財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)において各財産の評価方法を具体的に定めて、これを公開し納税者の申告の便宜及び課税の公平を図っているところです。

1 評価の原則(評価通達1)
(1)評価単位(評価通達1(1))
 財産の価額は、評価単位ごとに評価します。
 例えば、宅地、田及び山林が相続財産である場合、宅地は利用の単位となっている1画地の宅地ごとに評価し、田は耕作の単位となっている1枚の田ごとに評価し、山林は1筆の山林ごとに評価します。

(2)時価の意義(評価通達1(2))
 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期における各財産の現況に応じて、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、評価通達の定めによって評価した価額によります。
イ 評価時点
 財産の評価時点は課税時期であり、課税時期とは相続、遺贈又は贈与により財産を取得した日です。具体的には、相続又は遺贈の場合は、原則として被相続人の死亡の日であり、贈与の場合は、契約その他の法律的原因に基づいて財産権を取得した日です。
 ロ 時価
時価とは、課税時期における各財産の現況に応じて、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であり、具体的には、買い進みも売り急ぎもない「客観的な交換価値」を示す価額です。

(3)財産の評価(評価通達1(3))
 財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべき全ての事情を考慮します。
 なお、無道路地、間口が狭小な宅地、がけ地を有する宅地等における評価額の減額や、角地における評価額の増額など、あらかじめ類型的に想定できるものは、評価通達に増減割合等が明示してあります。

2 共有財産(評価通達2)
 共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価します。
 例えば、評価額3,000万円の宅地をAが1/3、Bが2/3の割合で共有している場合には、Aの持分の評価額は1,000万円、Bの持分の評価額は2, 000万円となります。

3 区分所有財産(評価通達3)
 例えば、分譲マンションのように区分所有している建物の評価においては、専有部分の評価額に共用部分の共有持分に応ずる評価額を加算して評価します。

4 邦貨換算(評価通達4-3)
 外貨建てによる財産及び国外にある財産の邦貨換算は、原則として、納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場のうち、いわゆる対顧客直物電信買相場(TTB)によります。
 (注)外貨建てによる債務を邦貨換算する場合には、いわゆる対顧客直物電信
    売相場(TTS)によります。
 なお、先物外国為替契約(課税時期において選択権を行使していない選択権付為替予約を除きます。)を締結していることにより、その財産についての為替相場が確定している場合には、当該先物外国為替契約により確定している為替相場によります。

5 評価方法の定めのない財産の評価(評価通達5)
 評価通達に評価方法の定めのない財産の価額は、評価通達に定める評価方法に準じて評価します。

6 評価通達の定めにより難い場合の評価(評価)
 評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価します。

7 国外財産の評価(評価通達5-2)
 国外にある財産の価額についても、評価通達に定める評価方法により評価しますが、評価通達によって評価することができない財産については、評価通達に定める評価方法に準じて、又は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。
 なお、評価通達によって評価することができない財産については、課税上弊害がない限り、①その財産の取得価額を基に、その財産が所在する地域等におけるその財産と同一種類の財産の一般的な価格動向に基づき時点修正をして求めた価額、又は②課税時期後にその財産を譲渡した場合における譲渡価額を基に課税時期現在の価額として算出した価額により評価することができます。

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