平成30年 確定申告直前誤りやすいポイント解説(所得税②)

今週の解説は次のとおりです。

《目次》
3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除
4 仮想通貨の取扱い
5 外国からの公的年金
 
⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
 ⑵ 公的年金申告不要制度(収入400万円以下)
6 生命保険金等の課税関係
7  空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)
8 住宅ローン控除
 
⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
 ⑵ 特定取得の意義
 ⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
 ⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
 ⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
 ⑹ 控除合計額計算の調整
 ⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
 ⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
9 所得控除関係
⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
 ⑵ 扶養控除の所属の変更
 ⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
10 保険契約に関する支払調書の見直し
11 附帯税関係(加算税制度の見直し)

《解説》

3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除

 平成28年中に生じた先物取引に係る損失を、同年の確定申告に含めず申告していた場合でも、損失を繰り越す旨の更正の請求を行い、その後平成29年分の確定申告において、先物取引に係る所得金額(利益額)から繰越損失額を控除することは認められている(措通41の15-1)。ただし、平成29年分の確定申告を先に行った場合には、平成28年分の更正の請求は認められず、繰越控除はできない。

4 仮想通貨の取扱い

 仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分される。
【参照 国税庁ホームページ 個人課税課情報4号平成29年12月1日】。https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/…/01.pdf

5 外国からの公的年金

⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
 雑所得を計算する際の公的年金等は、国内の公的年金だけでなく外国の法令に基づく保険や共済制度で日本の国民年金や厚生年金等に類するものも含まれ、公的年金を全て合計し公的年金控除の金額を算出の上、公的年金に係る雑所得の金額を算出する。

⑵ 公的年金申告不要制度(年金収入400万円以下)
 国外からの年金等公的年金等の一部でも源泉徴収の行われていない年金が含まれている場合には、確定申告不要制度の適用はない(所法121③)。

6 生命保険金等の課税関係

 交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合や満期で保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人がだれであるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になる。
 身体の傷害に起因して支払いを受ける保険金等は、被保険者自身が身体に傷害を受け保険金等を受領する場合だけでなく、配偶者や一定の親族が受ける保険金等についても非課税としている(所法9①十七、所令30、183②、所基通9-20・9-21・34-1、相法3①一、5①、相基通3-17)。 

保険契約等関係者 保険事故等区分
保険負担者 被保険者 保険等受取人 傷害 死亡 満期
A A A 非課税 一時所得
A A B 非課税(親族)(注)
一時所得
相続税 贈与税
A B A 同上 一時所得 一時所得
A B B 非課税 贈与税
A B C 非課税(親族)(注)
一時所得
贈与税 贈与税
A1/2・C1/2 A B 同上 相続税・贈与税 贈与税

(注) 保険金等受取人が、被保険者の配偶者、直系血族又は生計を一にするその他の親族である場合に限る。

空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)

 適用要件の概要は次のとおり。このうち、下記⑦の『被相続人居住用家屋等確認書』の交付を受ける際には、家屋の取壊し時から譲渡時までの敷地の使用状況が分かる写真を提出する必要があり(家屋を取壊しの後敷地を売却する場合)、これに備え譲渡前から準備する必要があり注意を要す。
① 昭和56年5月31日以前に建築された家屋及びその敷地で相続開始の直前において被相続人の居住用に供されていたこと
② 相続開始直前において被相続人に同居者がいないこと
③ 譲渡対価の額が1億円以下であること
④ 相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
⑤ 相続の開始から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
⑥ 家屋を取り壊さず売却する時は、その家屋が昭和56年6月1日以後の耐震基準に適合するよう修繕するものであること
⑦ 『被相続人居住用家屋等確認書』を被相続人の所在地市区町村から交付を受けること

【参照 空き家の譲渡所得の3000万円特別控除】 http://www.mlit.go.jp/common/001127709.pdf

8 住宅ローン控除等

⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
 平成28年4月1日以降適用対象者が居住者だけでなく非居住者でも適用可とされた。例えば①海外転勤で非居住者となっていた者が帰国後の住居の確保のため、前もって非居住者期間中に住宅を取得した後居住した場合②住宅ローン控除適用者が年の中途で海外勤務となっても家族が引き続き居住している場合等にも適用が可能となっている(措法41①他)。 

⑵ 特定取得の意義
 『特定取得』とは、住宅の取得等に含まれる消費税率が8%による場合のことを指し、個人間の売買契約において消費税額の表示がない場合には、『特定取得』には該当しない。特定取得に係る住宅とそれ以外の住宅についての住宅借入金等特別控除の控除額は、平成26年以降次のとおり。

取得の種類 年末残高の合計額(最高) 住宅借入金等特別控除額(最高額)
特定取得 一般取得 4000万円 40万円
認定長期優良住宅 5000万円 50万円
非特定取得 一般取得 2000万円 20万円
認定長期優良住宅 3000万円 30万円

⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
 確定申告において一旦選択適用した住宅取得等に係る特別控除は、その年分以降も変更することはできない。
 例えば、認定長期優良住宅を借入金で取得し、単年控除を選択した場合、後において住宅ローン控除(10年摘要)への変更をすることはできない(さくら税研フォーラム28年10月31日公開分参照)。

住宅ローン控除等概要 (28年1月~平成33年12月末までに居住等の場合)
区分 住宅ローンあり 自己資金(住宅ローン無)
一般住宅 新築・既存住宅 増改築 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円)
認定住宅 住宅借入金等特別控除 年末残高(5000万円限度)×1% 【10年控除 年最高50万円】措法41⑤ 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) 選択摘要 認定住宅新築等特別控除 標準的な費用の額(43,800円×床面積㎡)×10% 【1年のみ控除・1年繰越可 65万円限度】 措法41の19の4
省エネ バリアフリー 多世帯 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) 選択摘要 既存住宅特定改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 省エネ25万円(太陽光35万円)・多世帯25万円・バリアフリー20万円限度】 同一年中に省エネ、多世帯、バリア工事を実施した場合重複可 最高80万円 措法41の19の3
特定増改築等住宅借入金等特別控除(注) 特定借入金×2%+その他借入金×1% 【5年控除 年最高12.5万円】 措法41の3の2
耐震改修 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 最高400万円】 措法41① 併用可 住宅耐震改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 25万円限度】 措法41の19の2
(注)省エネ改修工事や耐震改修工事と併せ行う、一定の耐久性向上改修工事も平成29年4月から対象となりました。
※1 控除額等は、建物等に含まれる消費税率が8%である場合の金額です。
※2 多世帯同居改修工事については、平成28年4月~33年12月までに居住した場合

⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
 父の所有する家屋に子が増改築をする場合のように、自身が所有していない建物に増改築しても住宅借入金等特別控除の対象となる『増改築』には該当しない(措法41①⑬)。

⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
 借入金の償還期間が当初10年以上になっていても、その後、繰り上げ返済等により10年未満となった場合には、繰上返済等した年から住宅借入金等特別控除は適用不可(措通41-19)。

⑹ 控除合計額計算の調整
 住宅借入金等により居住用家屋を取得した後の年度において、増改築や財産分与により住宅所得等に係る住宅借入金が2以上となった場合、それぞれの借入金について控除額を計算し合計する。
 税額控除額の上限は、適用年において適用される居住年に係る控除額のうち、最も大きい方が上限となる(措法41の2)。

⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
 居住用財産を譲渡した場合の特例〔居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35②)、特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)等〕と住宅借入金等特別控除の適用関係は次のとおり。
① 譲渡が先行した場合
 住宅を取得等し居住用に供した年分、その前年分、前々年分について居住用財産の譲渡の特例を適用した場合には、住宅借入金等特別控除の適用はできない(措法41⑮)。
② 居住用家屋の取得が先行した場合
 居住年の翌年又は翌々年に入居した家屋以外の物件を譲渡した際、居住用財産の譲渡の特例を適用する場合には、居住年以後住宅借入金等特別控除の適用はない(措法41⑯)。この場合先行して住宅借入金等特別控除を受けていたときには、修正申告書または期限後申告書を提出し住宅借入金等特別控除相当額の納税をしなくてはならない(措法41の3①)。
 先行して居住用財産を取得した場合(②のケース)は、合法的に選択替えができますが、譲渡が先になった場合(①のケース)には、選択替えはできないので譲渡するときにどちらの特例を適用するのか決めなくてはならない。
 なお、住宅借入金等特別控除の適用を受けている居住用財産を譲渡し、譲渡の特例を適用した場合には、前年、前々年の住宅借入金等特別控除について修正する必要はない。

⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
 住宅耐震改修特別控除は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(措法41⑬、41の3の2②)のように家屋の所有者以外の者が耐震改修を行った場合でも適用を受けることができる。
 また、自己の所有している居住の用に供している家屋について増改築等を行うとともに耐震改修したときは、住宅耐震改修特別控除、住宅借入金等特別控除のそれぞれの要件に該当すれば、重複して適用することができる(措法41①⑥、41の19の2①)。

9 所得控除関係

⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
 介護保険法により「要介護認定」を受けていたが、市に対し「障害者控除対象者認定書」の交付を要求、これを受け市長が、認定日を過去に遡及して「障害者控除対象者認定書」を交付した場合、遡及した年分に遡り障害者控除の適用を受けることができる。

⑵ 扶養控除の所属の変更
 同一生計内に二人の所得者がいる場合において、その二人に共通の扶養親族をいずれの所得者の扶養親族とするかは、確定申告書等に記載されたところによるが、一度申告書等により所属が定められた後においても所属を変更できることになっている(所令219①)。
 この場合、扶養親族を増加させようとする者と減少させようとする者全員が所属の異なる申告書等を提出しなければならない。この場合の申告書等には「修正申告書」と「更正の請求書」は含まれないので、いったん確定申告書を提出し所属を定めた場合には、扶養親族の所属の変更はできない(所基通85-2)。

○ 変更が認められるケース
 夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出、年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出、妻は子を扶養親族とする「確定申告書」を提出する。

○ 変更が不可なケース
 夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「確定申告書」を提出した。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出しても、妻は子を扶養親族とする「更正の請求書」を提出することはできない。

⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
 ア 2年分の国民年金保険料を前納した場合
 支払った国民年金保険料全額を社会保険料控除の対象にすることも、各年分に対応する保険料を年分ごとに控除することもできる。

 イ 子供の過去の国民年金保険料を複数年分一括して支払った場合
 複数年分の国民年金保険料をまとめて支払ったとしても、支払った年分の社会保険料控除の対象とする。

10 保険契約に関する支払調書の見直し

⑴ 次のような課税漏れに対応するため、支払調書の提出義務や記載事項を変更した(平成30年1月1日以降に変更の効力を生じる場合について適用)。
 ア 契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人でないケースで契約者が死亡し、契約者名義を変更した場合、その時点での解約返戻金相当額が相続財産として相続税の課税対象となるが、保険金が支払われたわけでないため支払調書が提出されず課税漏れがあった。

 イ 契約書名義を変更した後、死亡保険金・満期保険金・解約返戻金を受け取った場合、変更前の契約者が支払った保険料に対応する受取人は贈与税の対象となるが、支払調書は支払時点での契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更した分について課税漏れがあった。

⑵ 支払調書の変更内容
 ア 生命保険契約や損害保険契約の契約者が死亡したことに伴い、契約者の変更手続きを行った場合、次の事項を記載した支払調書『保険契約者の異動に関する調書』を提出する。
○ 変更前・変更後の契約者の氏名
○ 契約者が死亡した日
○ 変更に係る契約の解約返戻金相当額
○ 保険料の総額、変更前の契約者が払い込んだ保険料額

イ 契約の締結後に契約者の変更があった場合、支払調書の記載事項の追加
○ 契約の変更前契約者の氏名
○ 変更後の契約者が払い込んだ保険料、変更回数

11 附帯税関係(加算税制度の見直し)

⑴ 調査の事前通知以後に、修正申告等を行う場合
 税務調査が開始され、更正の予知をしていない間に修正申告・期限後申告が行われた場合の適用税率が引き上げられました(国通法65・66)。

種類 28年以前 29年以降
過少申告加算税 0% 5%
無申告加算税 5% 10%

⑵ 短期間に繰り返し無申告等があった場合
 税務調査により、無申告加算税や重加算税の賦課された方が、過去5年以内に同じ税目で再び無申告加算税や重加算税が課された場合には、これらの割合が10%加算されます。

 種類 28年以前 29年以降
無申告 無申告加算税 15%(20%) 25%(30%)
 

仮装・隠ぺい

重加算税(過少・不納付) 35% 45%
重加算税(無申告) 40% 50%

※ ⑴⑵いずれも、平成29年1月1日以後法定申告期限が到来するものから適用。

 

 

平成30年 確定申告直前誤りやすいポイント解説(所得税①)

 さくら税研では、今週から4回にわたり、個人の確定申告において誤りやすい事項のポイント解説をさせていただきます。
 今回の解説は次のとおりです。

《目次》
【税法改正事項】
1 給与所得控除額引き下げ
2 セルフメディケーション税制の創設、添付書類の見直し
3 事業所得関係
 ⑴ 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業投資促進税制)の改正
 ⑵ 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正
 ⑶ 特定中小企業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設
4 税額控除関係
 ⑴ 既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充
 
⑵ 省エネ改修の要件緩和
 ⑶ 住宅ローン控除の対象外となる勤務先からの借入金利率の緩和
5 届出書の提出先の簡略化

【誤りやすい事項】
1 金融所得課税
 ⑴ 平成28年から適用されている公社債・公社債投信等に対する課税関係の見直し概要
 
⑵ 配当所得等の申告に当たっての注意事項
 ⑶ 上場株式等に係る配当等と譲渡損失の損益通算
2 不動産所得・事業所得関連
 ⑴ 減価償却関係(相続により取得した減価償却資産の償却方法)
 ⑵ 青色申告特別控除について
 ⑶ 青色申告申請書の提出期限

《解説》
1⃣【改正された事項】
1
 給与所得控除額引き下げ
 給与所得控除上限額がさらに220万円に引き下げ
(平成26年度改正事項のうち、順次適用)

年収額 給与所得控除額
24年分以前 25年分~27年分 28年分 29年分~
180万円以下 収入金額×40%

(65万円未満は65万円)

同左 同左 同左
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円 同左 同左 同左
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円 同左 同左 同左
660万円超1000万円以下 収入金額×10%+120万円 同左 同左 同左
1000万円超1200万円以下 収入金額×5%+170万円 同左 同左 220万円
1200万円超1500万円以下 230万円
1500万円超 245万円

 2 セルフメディケーション税制の創設、添付書類の見直し

⑴ 平成28年改正事項
 現行の医療費控除との選択により、市販薬(スイッチOTC〔Over The Counter〕医薬品)を購入した場合に購入費用を所得控除とする制度が平成28年に創設(適用は29年1月1日から)。
 控除額は、最高額が10万円で12,000円を超える額が控除額
 当該医療費控除を受けるためには、セルフメディケーション〔自主服薬〕対象品である旨記載したレシート等領収書とともに健康の維持増進、疾病の予防への取組として『一定の取組』をすることが要件とされ、取組を行った書類を添付又は提示する必要あり(ただし、下記⑵の改正あった。)。
※『一定の取組』とは
インフルエンザの予防接種を受けた(領収書等を提出)、会社の定期健康診断を受診(結果通知書を提出)、市町村のがん検診を受診(領収書又は結果通知表を提出)等

 ⑵ 平成29年改正事項
 医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合、従来の「医療費の領収書等」の添付又は提示に代えて「医療費控除の明細書」や「セルフメディケーション税制の明細書」を添付することとなった。ただし、領収書は確定申告期限等から5年間は税務署からの提示要求に備え、保存しておく必要あり。
 セルフメディケーション税制での添付書類「健康維持増進等の取組」関係書類は申告書に添付又は提示が必要。
 平成29年~31年分までの確定申告については、これまでどおり医療費の領収書の添付・提示でも可。また、医療保険者から交付を受けた医療費通知(健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」)を添付すると明細書の記入を省略できる。
【参照:資料医療費控除の明細書】

https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf

3 事業所得関係

⑴ 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業投資促進税制)の改正
 ア 特定生産性向上設備等について、即時償却と10%の税額控除との選択適用ができる制度の見直し(上乗せ措置の廃止等)が行われた上、適用期限が2年延長された。すなわち、一定の機械装置等を取得等した場合に取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できる(措法10の3①)。
 イ 適用手続きは、特別償却の場合、青色申告決算書の「減価償却の計算」「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」欄に『特例(措法10の3)』と記入。
 税額控除の場合、「中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」を確定申告書に添付すること。
 ウ 平成29年4月1日前に取得等をした特定生産性向上設備等については従前どおり。
【参照 中小企業投資促進税制】
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2017/170905toushisokushinpanf.pdf

⑵ 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)改正

 ア 企業の活性化を図るため一定の要件を満たした経営改善設備(器具備品、建物附属設備)の取得を行った場合に取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除の選択適用ができる。
イ 制度そのものの改正はないが、税額控除については上記⑴と下記⑶の制度の税額控除措置と合計して適用年分の税額の20%相当額を限度とし、適用期限が2年延長された。
【参照 商業・サービス業・農林水産業活性化税制】
https://www.mirasapo.jp/finance/pdf/Q10.pdf

⑶ 特定中小企業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業経営強化税制)の創設

 上記⑴の制度の上乗せ措置の廃止に伴い設けられた措置で、29年4月1日~31年3月31日までの期間内に一定の設備を取得し、指定事業に供した場合、即時償却又は取得価額の10%の税額控除を選択摘要することができる制度が創設された(措法10の5の3)。

【参照 税制措置・金融支援活用の手引き 中小企業庁】
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170407zeiseikinyu.pdf

4 税額控除関係

⑴ 既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充
 ア 住宅ローン関係
 居住している住宅について、耐震・省エネリフォームと併せて一定の『耐久性向上改修工事』が「特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」(措法41の3の2)の適用対象に追加された。
 イ 自己資金関係
 「既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除」(措法41の19の3)の適用対象に耐震改修工事又は省エネ改修工事と併せ行う一定の『耐久性向上改修工事』が加えられた。

⑵ 省エネ改修の要件緩和
 従前居室の全ての窓に対して改修工事をすることが要件となっていたが、住宅全体の省エネ性能が改修により満たされれば税額控除の対象となった。

⑶ 住宅ローン控除の対象外となる勤務先からの借入金利率の緩和
 住宅ローン控除の対象とならない勤務先からの借入金の利率が、1%未満から0.2%未満とされた。
【参照 長期優良住宅化リフォーム等の促進に向けた既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充】
http://www.mlit.go.jp/common/001154854.pdf

5 届出書の提出先の簡略化

これまで、「納税地の異動」等を行う場合、『届出書』を異動前と異動後の納税地を管轄する税務署にそれぞれ提出していたが、平成29年4月1日以降は次の提出先にだけ提出すればよいこととされた。

① 納税地の変更に関する届出書 ➡ 変更前の納税地の所轄税務署長(所法16)

② 納税地の異動に関する届出書 ➡ 異動前の納税地の所轄税務署長(所法20)

③ 個人事業の開業・廃業等届出書 ➡(納税地と事務所の所在地が異なる場合)納税地の税務署長(所法229、所規99)

④ 給与支払事務所等の移転届出書 ➡ 移転前の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長

2⃣【誤りやすい事項】

1 金融所得課税

⑴ 平成28年から適用されている公社債・公社債投信等に対する課税関係の見直しの概要
 ア 特定公社債、公募公社債投信等の利子は、20.315%源泉徴収後、申告不要または申告分離課税を選択することができる。
 譲渡損益については、従前非課税だったが、申告分離課税(税率20.315%)に改められた。
 イ 特定公社債等については、特定口座での取扱いも可。したがって、源泉徴収あり特定口座で取引していれば、申告不要とすることができ、これらの口座間及び上場株式等に係る譲渡益との損益通算や繰越控除ができる。
 ウ 一般個人投資家の投資対象とならない特定公社債以外の一般公社債及び私募公社債投信等については、一般株式等グループとして分類され、上場株式等グループとの間で損益通算は不可。

※ ○ 特定公社債は次のとおり
 国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募または上場されている公社債(証券会社・銀行が窓口で販売している公社債は概ね「特定公社債」となる。)。
   預貯金の利子等については、従前と同様源泉分離課税のままの取扱い。

公社債・公社債投資信託等に対する課税

 

平成27年以前

平成28年~
特定公社債・公募公社債投資信託 左記以外公社債・私募公社債投資信託
利子 利子所得・源泉分離課税(20.315%) 20.315%【源泉徴収有】申告分離(申告不要とするも可) 源泉分離課税(20.315%)
譲渡益 非課税 20.315%【特定口座で源泉徴収なら申告不要可】申告分離 20.315%申告分離
損益通算・繰越控除 不可 可(特定公社債等利子・配当所得・譲渡所得との) 不可(譲渡内通算可)
特定口座での取扱い 不可 不可      

⑵ 配当所得等の申告に当たっての注意事項

 ア 課税方法の変更
 確定申告において、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等を、更正の請求や修正申告において総合課税へ変更することはでない。例えば、申告分離課税を選択して確定申告をした場合には、その後において更正の請求や修正申告するときにおいても、申告分離課税を選択することになる(措通8の4-1)。
 イ 申告方法
 上場株式等の配当等を申告する場合には、その全額について総合課税又は申告分離課税のいずれかを選択することになっている(措法8の4②)。したがって、一部を総合課税に、残りを申告分離課税とする申告は認められていない。
 ウ 所得税と住民税別々の申告方式を採ることの是非
 例えば、次のケースの場合、住民税の納税通知書が送達する前であれば、所得税と異なる住民税の申告を別途行うことが認められている(地法税法313⑬)。
 ○ 上場株式等の配当所得について所得税は総合課税、住民税は申告不要制度(または申告分離課税)を選択することで住民税の税負担を抑える。
 ○ 所得税は申告分離課税で損益通算や繰越控除を利用、住民税は申告不要制度を選択し国民健康保険料等の増加を抑える。
【参照 練馬区 特別区民税・都民税申告書(上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書)他の市区町村は、それぞれ対応が異なるので問い合わせが必要http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/zei/oshirase/kazeihoshiki…/moushidesyo2.pdf

⑶ 上場株式等に係る配当等と譲渡損失の損益通算
 ア 分離課税から総合課税への選択替え
 ○ 源泉徴収選択口座内で上場株式等の配当等と譲渡損失とが損益通算されている場合において、その譲渡損について確定申告をするときは、併せて配当等の申告も必要となる(措法37の11の6⑩)。その際配当等の申告について総合課税への選択替をすることができる。しかしながら、利子等については、申告分離が原則なので、総合課税の選択をすることはできない(措法8の4②)。
 ○ 源泉徴収選択口座の譲渡所得等の黒字の金額と同じ源泉徴収選択口座の配当等の金額のいずれかのみの申告をすることは可(源泉徴収選択口座内に配当所得と利子所得両方がある場合、配当所得のみ又は利子所得のみを抜き出して申告することはできない。)。
 イ 複数の源泉徴収選択口座がある場合等の申告方法
 ○ 複数の源泉徴収選択口座の譲渡所得等の金額を申告するかどうかは、源泉徴収選択口座ごとに選択することができる(措法37の11の5①、措通37の11の5-2)。
 ○ 複数の源泉徴収選択口座で上場株式等の利子等又は配当等受領をしている場合において、それらを申告するときは、それぞれの源泉徴収選択口座(口座内の利子等と配当等の合計)ごとに申告不要制度の適用を選択することができる(措法37の11の6⑨)。
ウ 源泉徴収選択口座以外の利子等や配当等
申告方法については、1回に支払いを受ける利子等又は配当等ごとに選択ができる(措法8の5④)。

2 不動産所得・事業所得関連

⑴ 減価償却関係(相続により取得した減価償却資産の償却方法)
 相続により資産を取得した場合、取得価額、帳簿価額、耐用年数は引き継ぐ旨の規定となっている(所法60①、所令126②)が、償却方法についての引継規定はないため、被相続人が旧定率法により償却していた減価償却資産を相続により取得した場合でも、その相続人は旧定率法を用いて減価償却費の計算をすることはできない。
 個人の法定償却方法は定額法のため、新たに業務を開始した相続人が定率法を選択する場合には、償却方法の届出を新たに提出する必要がある(所令123①②)。
 平成19年4月1日以降に取得した建物、平成28年4月1日以降取得した建物附属設備・構築物については、定額法に限られる(所令123⑤、所基通49-1)。

⑵ 青色申告特別控除について
 青色申告者が事業所得や不動産所得(事業的規模)で貸借対照表の提出他の条件を満たした場合、それぞれの所得の金額を算出するのに当たっては、青色申告特別控除(65万円)の適用があるが、当初申告が期限後申告の場合には、控除額が常に10万円となるので注意が必要。

⑶ 青色申告申請書の提出期限
ア 原則
 ○ 青色申告の承認を受けようとする場合、承認を受けようとする年の3月15日までに提出を要す。
 ○ 新規に事業を開始した場合、開業してから2か月以内に提出を要す。
※ 注意事項
 既に不動産貸付業を行っているような場合は新規に事業を開始したことにならない。例えば、従前から不動産貸付業を行っている人が、平成30年5月に新規に小売店を開業予定している場合、平成30年分から青色申告をするのであれば、平成30年3月15日までに提出する必要があり(所法144)。

 イ 相続により被相続人の業務を承継した場合(所基144-1)
 ○ 業務を承継した時から2か月以内に提出
 ○ 青色申告者である被相続人の業務を承継した場合は、準確定申告書の提出期限である死亡の日から4か月以内に提出

  区分 青色申告承認申請書の提出期限
原則 青色申告の承認を受けようとする年の3月15日
新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合) 業務を開始した日から2か月以内
被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以後に業務を承継した場合) 業務を承継した日から2か月以内
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日) 死亡の日から4か月以内
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日) その年12月31日
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日) 翌年2月15日

 

新たに設立された法人に係る消費税の納税義務(個人株主の場合)

《質問》

 新たに設立された法人に係る消費税の納税義務については、消費税法上、「新設法人」と「新規設立法人」という用語が使い分けられており、それぞれに見合う規定がおかれていますが、次のような、新たに設立された㈱Aの設立当初2年間に係る消費税の納税義務の有無判定は、そのいずれによって、どのように行うことになるかご教示ください。

《前提》

① ㈱Aは、2017年4月3日に、資本金800万円で、個人株主甲と乙の両名が出資して設立された。
② 甲は、㈱Aの発行済株式総数の51%を有しており、残りの49%を、甲とは親族関係にない知人乙(㈱Aの他に、連年、売上5億円超の㈱Bを完全支配している。)が有している。
③ 甲は、㈱Aとは別に、丙(甲の実弟で、甲とは別生計である。)との共同出資で、7年前に㈱C(資本金896万円、1月決算、連年、売上5億円超。)を設立しているが、それぞれの持株割合は、設立以来甲が54. 7%、丙が45.3%であり、㈱Aの設立を経て現在(本件質問時)まで変動はない。
④ ㈱Aの特定期間における課税売上高は1,000万円以下である。

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父親の所有する建物に対し、子が損害保険契約を締結している場合の課税関係

《質問》

 父親が所有する建物を、生計を一にする長男が借り事業を営んでいます。長男はこの建物に対し火災保険契約を締結し保険料を負担していますが、支払保険料はどのように処理したらよいのでしょうか。また、万が一火災に遭い父親が保険金を受け取ったり、満期で返戻金を受け取った場合等課税関係はどのようになるのかご教示願います。

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貸地の一部を返還された場合の借地権の取扱いについて

《前提》

地主は法人、借地人は個人(個人事業用)。
借地人個人は普通借地権所有。
借地人個人は30坪の借地権を有し、ここに2棟の建物を建て事業を行っていた。
5年前に借地契約の更新に当たり、更新期間20年ということで400万円の更新料を授受した。
借地人個人は、5年経過した今になって1棟(敷地10坪分)を取壊した上で10坪分の借地権を返してきた。
同時に5年前授受した更新料のうち100万円の返還を求めてきたため、支払うことにした。
100万円の算定根拠
  400万円 × 10坪/30坪 × 15年/20年 = 100万円

《質問》

 返還した100万円は、経費として落とすことは可能ですか。それとも無償返還された借地の買取価格として土地勘定になりますか。

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海外からの公的年金も受け取っている年金受給者の確定申告

《質問》

 私は、65歳となり今後公的年金等を受給することになりますが、公的年金に係る雑所得はどのように計算するのでしょうか。また、公的年金の確定申告不要制度があると聞いています。次のような年金を(年額)受給する予定ですが確定申告は不要と考えてよろしいでしょうか。
①厚生年金 300万円(源泉徴収あり)
②ドイツからの公的年金 10万円
③私的年金 10万円(必要経費控除後)

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小規模宅地の特例(貸付事業用)の適用について

《概要》

被相続人(母親)が平成29年3月に死亡。
相続人は2人(長男・次男)です。
母親の自筆遺言書があり、裁判所の検認は済みました。
相続財産に土地が複数あり、2人に相続させる内容です。
相続人間で揉めていて、裁判になる予想です。
次男より、相続申告の依頼を受けております。
相続人全員の選択同意書は揃えられません(長男から委任状はもらえません。)。

《質問》

1. この場合に、遺言書通りに分けて、次男の相続する土地のみ小規模宅地の特例(貸付事業用)を適用して申告すると、税務上問題はありますか。

2. 小規模宅地の特例は期限後申告又は、更正の請求でも認められますか。

3. 長男が遺贈で取得した土地も貸付事業用宅地ですが2人合わせて200㎡以下の場合でも選択同意書は必要ですか(これ以外に特例対象宅地はありません。)。

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個人が法人に土地の無償貸与をした時の借地権認定課税について

《事実関係》

個人Aが法人Bに土地を貸し、法人Bは借地に工場を立てて事業を営んでいます。
個人Aと法人Bの間で賃貸借契約書を交わしておりますが、賃料は無料、ただし公租公課は賃借人が負担するという内容で実質的には使用貸借契約と思われます。
賃貸契約書は、昭和57年11月1日に作成されています。
法人Bの貸借対照表に借地権は計上されていません。
無償返還届出書は未提出です。
この地域の借地権割合は50%です。

《当方の見解と質問》

① 個人Aと法人Bで結んだ契約は使用貸借契約と考えます。無償返還届出書の提出がなく、法人Bは権利金相当額を個人Bに支払っていないため、受贈益を得たことになります。このような場合の財産評価は、個人Aの土地は50%減額し、法人Bは借地権を計上することとされています。
 しかし、受贈益の処理を法人Bが行っておらず、受贈益の認定課税もされていないため、個人Aの土地は100%で評価し、法人Bに借地権は計上しないと考えますがよいでしょうか。

② 本来は借地権の認定課税がされるべきですがなされていないため、現在は認定課税について時効が成立していると考えて、個人Aの土地は50%減額し、法人Bは借地権を計上することは可能でしょうか。

③ 現在は事実上使用貸借契約ですが、今後賃料の授受を行って、無償返還届出書の提出を考えています。このような場合、個人Aの土地は20%減額し、法人に借地権20%を計上して評価することは可能でしょうか。また、現段階で無償返還届出書を提出することについて、どのような税務上のリスクが考えられるのでしょうか。

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退職所得の選択課税

《質問》

 私は外国人で日本の会社に10年ほど勤務した後、国外での支店勤務となり2年が経過しました。この度退職し、母国で会社を立ち上げようと考えています。退職に当たり、日本の本社からの退職金が600万円支給されることになっています。会社からの退職金は、非居住者となるため、20.42%の所得税が源泉徴収されるとききました。源泉徴収された所得税は、差し引かれたままとなってしまうのでしょうか。

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親の事業を引き継ぐ時の棚卸資産および減価償却資産の取扱いについて

《前提》

 父親が個人事業主(農業、消費税課税事業者)で所得税確定申告をしています。これからは、生計を一にしている息子が事業を引き継ぐ予定です。

《質問》

① 父親が個人事業の廃業届を提出すると消費税法4条5項1号のみなし譲渡の規定は適用されるのでしょうか。条文では「家事のために」とありますので、そのままこの規定を適用するのはどうかと思いますが、実務上、税務署がその規定を運用しているとすれば従うしかないと考えます。

② 事業主の父親が廃業届を提出しないとすると、生計を一にしている息子さんは、本来は父親が使っている減価償却資産の減価償却ができるのに、廃業届を出していないことで減価償却できないということでよろしいでしょうか。

③ 個人事業を法人成りによって法人に引き継ぐのに当たって、個人事業用の資産を法人に無償譲渡又は無償で貸与した時の所得税・消費税の取扱いはどうなるのでしょうか。

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