土地及び土地の上に存する権利の評価上の通則

1. 物件の確認
所在、所有者、使用者等の確認を行う。
  ⇒取得者課税の原則(相続税法第1条の3及び第1条の4)

2. 土地の評価上の区分
(1) 原則(評基通7)
 土地の価額は、課税時期の現況によって、次の地目の別に評価する(別紙1参照)。
宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地・雑種地

(考え方)
 これは、土地の取引は、通常利用単位ごとに行われ、その取引価格は利用単位を基に形成されていると解されている(平成15年4月22日千葉地裁)。

(2) 特例的な取扱い(評基通7ただし書き)
イ 一体利用の土地
 一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、その内の主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する。
キャプチャ145*C土地は、ゴルフ練習場の駐車場として利用している。
⇒ A、Bを一体で評価する。
⇒ C土地は、不特定多数の者の通行の用に供されて道路によりA、B土地とは物理的に分離されていることから区分して評価します。

(考え方)
評基通7ただし書きにおいて、一体として利用されている一団の土地(隣接)が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとしている。これは、地目別評価の原則に従うと、大規模な工場用地、ゴルフ練習場用地等のように一体として利用されている一団の土地のうち2以上の地目がある場合は、その一団の土地をそれぞれの地目ごとに区分して評価することになるが、これでは一体として利用されることによる効用が評価額に反映しないため、実態に則した評価を行うこととしたものである。

ロ 一団の土地(別紙2 参照)
 市街化調整区域以外の都市計画区域で、市街地的形態を形成する地域において、市街地農地、市街地山林、市街地原野又は宅地と状況が類似する雑種地のいずれか2以上の地目の土地が隣接しており、その形状、地積の大小、位置等からみてこれらを一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価する。(*宅地は、一体で評価しないことに留意する。)

キャプチャ147(事例①)の場合、標準的な宅地規模を考えた場合にはA土地は地積が小さく、形状を考えた場合には、B土地は単独で評価するのではなくA土地と合わせて評価するのが妥当と認められます。また、位置を考えた場合には、C土地は道路に面していない土地となり、単独で評価するのは妥当ではないと認められることから、A、B及びC土地全体を一団の土地として評価することが合理的であると認められます。
(事例②)の場合、山林のみで評価することとすると、形状が間口狭小、奥行長大な土地となり、また、山林部分のみを宅地として利用する場合には、周辺の標準的な宅地と比較した場合に宅地の効用を十分に果たし得ない土地となってしまいます。
(事例③)では、各地目の地積が小さいこと、(事例④)では、山林部分が道路に面していないことから、やはり宅地の効用を果たすことができない土地となります。

(考え方)
 宅地化が進展している地域に存し、市街化農地等及び宅地と状況が類似する雑種地が隣接している場合には、その規模、形状、位置関係等から一団の土地として価格形成がなされるケースがあります。これらの土地は、近隣の宅地の価額の影響を強く受けるため、原則として、いわゆる宅地比準方式により評価することになっており、基本的な評価方法はいずれも同じであるという評価方法の同一性に着目して、地目の別に評価する土地の評価単位の例外として、その形状、地積の大小、位置等からみて一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価することとなります。

別紙1 土地の評価単位(原則的な取扱い)

3. 相続・遺贈又は贈与により取得した宅地の評価(別紙2 参照)

別紙2 国税庁ホームページより(宅地の評価単位)

(1) 取得者単位で評価
現行相続税法は、取得者課税方式によってますから、原則として、取得した土地ごとに評価します。

(2) 不合理分割と認められる場合
分割前の画地を「1画地の宅地」とし評価します。

不合理分割とは
① 分割後の画地が宅地としての通常の用途に供することができないとき
 無道路地・帯状地・過剰な不整形地等となる
② 分割後の画地が宅地として、その地域の標準的な宅地の地積を有さず、
  著しく狭くなってしまうとき
③ 故意に土地の価値を下げるような分筆を行い、土地の評価額を下げて、
  相続税負担を意図的に大きく軽減させようとしているとき
④ 現在及び将来において、有効な土地利用ができないとき

 分筆したことによって、著しく評価を下げることになったとしても、その地域の標準的な面積を有しており、土地の有効利用が可能である場合には、その分割に妥当性があると認められますので、不合理分割には該当しません

不合理分割の例

① A土地の地積が狭小で、B土地は一方路線のみに接することとなる場合
 【判定理由】
  A土地‥・間口狭小、奥行長大の補正ができる。
  B土地‥・側方加算がされない。
 キャプチャ148

② B土地を接道義務に満たない間口距離の土地に分筆した場合
 【判定理由】
  接道義務‥・都市計画法上、幅員が4m以上の道路に2m以上接して
  いなければなりません。
  B土地‥・間口が4mあれば、通常の用途に供せますが、本事例の
  場合、接道が1mであり、建築基準法その他の法令により規制されます。
  (不合理分割とされます。)
  (注)‥・間口が4mあり、標準的な面積を有していれば、合理的な分割
  といえます。
  キャプチャ149
(参考) 接道義務(東京都建築安全条例の場合)
  キャプチャ160

③ A土地の地積が狭小で、B土地が無道路地となる場合

 【判定理由】
B土地‥・通常の用途として、土地の有効利用を考慮した場合、
  わざわざ無道路地として分割しない。
 キャプチャ150

④ A土地の地積は標準的だが、B土地を故意に無道路地として分筆した場合
 キャプチャ151

⑤ 故意にB土地を正面路線と裏路線に接する形状に分筆させた場合
【判定理由】
  A、B土地‥・不整形地補正を適用するため
  B土地‥‥‥併せて、角地加算を免れるため
 キャプチャ152

⑥ 建物が既に建築されているにもかかわらず建物を分断する形状で分筆した場合
  例示
  建物の所有者がAだとした場合
 【判定理由】
  土地をA、Bに分割相続する合理的な理由がない。
 キャプチャ153

  全体を1画地として、評価する。

特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等の範囲

《質問》

図解相続税・贈与税(大蔵財務協会)に次のような記述があります。

 特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等の範囲(措通69の4-23)
A 被相続人の有する宅地等の上に特定同族会社の所有する建物等があり、当該特定同族会社(申告時期において清算中法人を除きます。)が事業(不動産賃貸業等を除きます。)を行っている場合
キャプチャ300

 なお、特定同族会社が不動産賃貸業等を行っている場合は、上記の80%の減額割合が50%となります。

B 被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の建物があり(土地の貸借は無償)、特定同族会社(申告期限において清算中の法人を除きます。)が建物を借りて事業(不動産賃貸業等を除きます。)を行っている場合
キャプチャ301

 ここで質問です。

 Aのなお書で「特定同族会社が不動産貸付業を行っていいる場合は上記の80%の減額割合が50%となります。」という記述があり、Bのパターンではその記述がないのは何故でしょうか。

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配偶者居住権について

 民法改正に伴い、相続税法第23条の2が規定され、令和2年4月1日以後に開始する相続により取得した財産に係る相続税について配偶者居住権が適用されることとなります。
 そこで、令和2年2月12日付課評2-5ほか3課共同「相続税法基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)により、次のとおり具休的な取扱いが定められました。
 なお、この通達に関するあらましは、令和2年2月21日付「相続税法基本通達の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし」として、国税庁から情報が発出されています。国税庁ホームページに掲載されていますので、ご覧になってください。
 また、このあらましの中で、新設された「配偶者居住権等の評価明細書」が紹介されています。

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租税特別措置法(山林所得・譲渡所得等関係)の取扱いについて

 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例が一部改正になりました。これは、租税特別措置法施行令第23条第6項及び第7項が全部改正になったため、租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)通達の第3 5-9の2及び第3 5-9の3が新設されたものです。以下に通達等を抜粋しましたので、参考にしてください。

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「令和元年台風第19号」に係る相続税・贈与税の申告・納付等の 期限の延長等について

 令和元年台風第19号による災害に係る相続税・贈与税の申告期限等について、国税庁からの告示を添付しましたので、執務の参考としてください。
 なお、土地評価に当たっての「調整率」は、現時点では公表されていません。今後、国税庁ホームページにおいて公開されますのでご注意ください。

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小規模宅地の特例適用について

《質問》

案件の概要
居住用建物を生前に取壊し、新たな居住用兼賃貸建物を建設しました。
時系列は下記の流れになります。
建築工事契約  : 2018年8月
居住用建物取壊 : 2018年9月8日(取壊登記)
相続開始    : 2018年10月22日
建物完成工事  : 2018年12月5日(表示登記2018年12月25日)
建物が完成し、配偶者及び長男世帯は申告期限前に居住開始。
建物及び敷地について、配偶者が相続取得。

キャプチャko検討事項
 被相続人が建築中であった居住用建物の敷地及び建物を、配偶者が取得しました。
 当該建物はメゾネット2F建てで、配偶者及び長男世帯の居住用と残りの部分は賃貸の用に供しています。
 そこで、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例適用について検討しています。

長男世帯と生計一の場合
① 配偶者の居住の用に供した1室に対応する敷地面積部分について小規模の減額を適用。
② ①及び長男世帯を入れた2室に対応する敷地面積部分について小規模の減額を適用。

長男世帯と生計別の場合
③ 配偶者の居住の用に供した1室に対応する敷地面積部分について小規模の減額を適用。
④ ①及び長男世帯を入れた2室に対応する敷地面積部分について小規模の減額を適用。

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生命保険契約に関して

《質問》

① 当初生保契約 平成12年
  契約者  A(実質保険料全額負担者)
  被保険者 義理息子B
  受取人  Bの妻C(Aの長女)
② 上記契約 平成20年に変更
  契約者  B
  被保険者 B
  受取人  C
③ 上記②契約平成29年7月実質負担者Aに相続発生
 実質保険料負担者がA、保険契約者がBなので、相続税法の規定でBが生命保険契約に関する権利を遺贈により取得したものとみなされ、生命保険契約の解約返戻金相当の金額をみなし相続財産として算入し、Bは相続税額の2割加算をして昨年相続税の申告をしました。
〔被相続人以外の者がその生命保険契約の契約者である場合における「生命保険契約に関する権利」のうち被相続人が負担した保険料に対応する部分は、相続又は遺贈により取得したものとみなす(相法3①三)〕

 相続申告後平成30年6月に契約者BからCに変更してしまいましたが、(この時点で契約者C、被保険者B、受取人C)生命保険契約における契約者の変更については、生命保険制度を踏まえて、その契約者の変更時点では、生命保険に関する権利を個人間の贈与として課税関係が発生させない考えでいいと思いますが、この度契約者をやはり相続で実質負担者の地位を引継ぎ相続税申告をしたBにCから変更しようと予定しています。(相続でBが保険料を全額負担したとみなされたので現在の実質負担者は契約者が平成30年6月の変更により契約者がCであったとしてもBという考えでいいと思いますが)この変更(C→B)についても変更時点では当然贈与の課税関係はないと思います。
 今回予定のC→B変更後、将来Bが死亡した時は「実質負担者B、保険契約者B、被保険者B、受取人C」でCの受取保険金は契約者の変更を重ねていきますが、相続税の課税対象ということでよろしいでしょうか?

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貸家建付地の評価単位について

《質問》

 下図のとおり、土地Aに建物B,C,Dがあり、それらの建物を甲法人(又は同一の個人)が一括して賃借し、それを更にそれぞれ第三者に賃貸(また貸し)している場合の土地の評価について

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租税特別措置法70条について

《質問》

 被相続人A 相続人Bがいました。
 相続開始平成31年4月4日
 (相続人はB一人です)
 相続財産約3億円

 その後Bが平成31年4月19日死亡しました。
 被相続人Bの相続人C、D、Eら3名が被相続人Aの財産をAの財産名義のまま、Aの相続税申告期限までに公益法人等に寄附をしました。
 この場合、寄附された財産は
① 被相続人Aの相続税の課税価格に算入しない
② 被相続人Bの相続税の課税価格に算入しない
③ 被相続人A、被相続人Bの相続財産に影響はない
のいずれでしょうか。
 寄附されたのはB死亡後なので、Aから相続を受けたBの相続財産から寄附がなされたものとして②と考えますが、正しいでしょうか。

2 上記の場合に、被相続人Aの相続税(約1億円です)を被相続人Bの相続税申告(算出相続税額約4千万円です)において債務控除できると考えますが、正しいでしょうか。
 (申告期限までに債務が確定しており、確実な債務。相次相続控除がありますが、相次相続控除は強制適用なので、債務控除とは条文上も別枠で関係がないので)

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相続登記と贈与税

《質問》

 父が亡くなりました。父の相続人は私たち兄弟3人です。遺産分割協議はまだ行っていませんが、土地建物については、法定相続分どおりの共同相続登記の申請を私が行い、このたび登記が完了しました。
 今後、遺産分割協議が整い、私たち3人が1/3づつ共同相続している土地建物の持分が変更になった場合は、遺産分割のやり直しとして、贈与税が課税されるのでしょうか。
 なお、父の遺産額は相続税の基礎控除以下であったので、相続税の申告は行っていません。

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