保険を利用した二次相続対策について

《質問》

 保険設計書(終身介護・定期保険)と今後の具体的なプランをお送りいたします。
 私が確認したい点は、概ね下記の三点です。

1. 相続発生時の介護保険の権利に関する評価について
10年後、父に相続が発生した場合、未経過分の前納保険料は相続財産となり、既払分の保険料についてはその時点においては解約返戻金が発生しないためゼロの評価でよいでしょうか。

2. 相続発生後に相続人が当該保険を解約した場合の課税関係
当該保険の権利を相続し契約者となった長男が15年目に解約した場合、一時所得となりますが、父が一時払した保険料も長男の一時所得の経費となりますか。

3. 払込期間中に長男が要介護状態となった場合
15年以内に、長男が要介護状態になって介護保険料を受け取った場合、父からの贈与にはならないと認識していますがそのような理解でよいでしょうか。

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民法1050条(特別の寄与)新設に伴う相続税の取扱い

 民法1050条(特別の寄与)が新設され、令和2年7月1日以降適用されています。
 これに伴い、相続税法も改正になっていますので、その部分について解説をします。

【民 法】
第1050条 (特別の寄与)
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

第904条の2(寄与分)
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

 民法第1050条が今回新設された「特別の寄与」であり、それに対して、民法904条の2は従来から規定されていた「寄与分」です。
 双方の規定を比べると、第1050条が適用される者は相続人を除く親族であるのに対し、第904条の2が適用される者は共同相続人であるところに相違点があります。
 「親族」とは、民法第725条に規定される者をいい、「共同相続人」とは、法定相続人のうち、現実に相続財産を相続した者をいいます。したがって、民法1050条は、法定相続人(共同相続人)以外も含めていることから、請求できる者の範囲が広くなっています。
 また、民法第1050条は、無償で特別の寄与をすることを条件としており、その報酬は金銭での支払いが請求できることとなっています。それに対して、民法904条の2には、「無償」「金銭」という条件はありません。

 ところで、民法第1046条(遺留分侵害額の請求)は、第1項で「遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」と規定しており、これを受けて、所得税法基本通達33-1の6(遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転)において、「債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる」とし、代物弁済として譲渡所得が課税になる旨を定めています。そうすると、民法第1050条第1項は、「特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができる」ことから、金銭の支払に代えて資産等を渡した場合も代物弁済として譲渡所得が課税になるのか否かという疑問が生じますが、現在のところ、そのような通達が定められていないため、今後注意していく必要があると思います。

 また、民法第1050条第5項は民法第904条の2にはない条項です。
 民法第904条第1項は、寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続人間で配分し、その控除したものを寄与者の相続分に加算することとしています。
 これに対し、民法第1050条第5項は、特別寄与者以外の各相続人は、各人の相続分に応じた寄与料の額を負担するという規定振りになっています。
 実務上、前者は、申告書第11表で通常通り各相続人の相続財産を記載すれば済みますが、後者については申告書の記載方法が異なります。このことについては相続税法改正のところで説明します。

(参考)
第725条 (親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族

 以上、民法について解説しましたが、次に、民法改正に係る相続税法の改正部分について解説をします。

【相続税法】

(相続税の納税義務者)
第1条の3 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
 イ 一時居住者でない個人
 ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの
 イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの
 (1) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの
 (2) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
 ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第1号に掲げる者を除く。)
四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第2号に掲げる者を除く。)
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
2 所得税法(昭和40年法律第33号)第137条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第137条の3(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。
一 所得税法第137条の2第1項(同条第2項の規定により適用する場合を含む。次条第2項第1号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
二 所得税法第137条の2第1項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第2号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第137条の3第1項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
三 所得税法第137条の3第2項(同条第3項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第2項第3号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第1号ロ又は第2号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第137条の3第2項の規定の適用に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
3 第1項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第3項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
二 一時居住被相続人 相続開始の時において在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの又は当該相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。

(遺贈により取得したものとみなす場合)
第4条 民法第958条の3第1項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
2 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合においては、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を当該特別寄与者による特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなす。

 民放第1050条の新設に伴い、それでは親族が受け取った特別寄与料に対する課税はどうなるかという問題が生じますが、その問題を解決するため相続税法第4条第2項が新設され、ここで、「遺贈により取得したものとみなす」と規定しました。
 そうすると、相続税法第1条の3第1項第1号は「遺贈により財産を取得した者は、相続税を納める義務がある」規定になっていますから、遺贈により特別寄与料を取得した親族に対しては、相続税が課税されることになりました。

(債務控除)
第13条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
2 相続又は遺贈により財産を取得した者が第1条の3第1項第3号又は第4号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前2号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
四 その財産に関する贈与の義務
五 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務
3 前条第1項第2号又は第3号に掲げる財産の取得、維持又は管理のために生じた債務の金額は、前2項の規定による控除金額に算入しない。ただし、同条第2項の規定により同号に掲げる財産の価額を課税価格に算入した場合においては、この限りでない。
4 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る課税価格に算入される場合においては、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

 相続税法は、第13条の債務控除の規定第4項で、特別寄与料を支払った相続人は自己が負担した部分の金額を債務として控除する旨を規定しています。
 前述した民法第1050条第5項で、民法第904条の2の規定と異なるのはこの部分で、相続税法が債務控除の項目で規定したところから、民法第1050条の特別寄与料は申告書第11表で調整するのではなく、実務的には、申告書第13表の「債務の明細」欄で、特別寄与料を支払った者の債務として控除することになります。

(相続税額の加算)
第18条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となつている場合を含まないものとする。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつている場合は、この限りでない。

 この相続税法第18条が、申告書を作成する段階になって気が付く意外な落とし穴になっている規定ですが、特別寄与者は親族ではあっても法定相続人ではなく、この条項に該当する者になりますから、相続税額が20%加算されることになります。
 基礎控除の人数には算入されず、加算だけされますから、慎重な対応が必要になるのではないでしょうか。

(相続開始前三年以内に贈与があつた場合の相続税額)
第19条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前三年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産(第21条の2第1項から第3項まで、第21条の3及び第21条の4の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除く。)に限る。以下この条及び第51条第2項において同じ。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第15条から前条までの規定を適用して算出した金額(当該贈与により取得した財産の取得につき課せられた贈与税があるときは、当該金額から当該財産に係る贈与税の税額(第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)として政令の定めるところにより計算した金額を控除した金額)をもつて、その納付すべき相続税額とする。
2 前項に規定する特定贈与財産とは、第21条の6第1項に規定する婚姻期間が二十年以上である配偶者に該当する被相続人からの贈与により当該被相続人の配偶者が取得した同項に規定する居住用不動産又は金銭で次の各号に掲げる場合に該当するもののうち、当該各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める部分をいう。
一 当該贈与が当該相続の開始の年の前年以前にされた場合で、当該被相続人の配偶者が当該贈与による取得の日の属する年分の贈与税につき第21条の6第1項の規定の適用を受けているとき。 同項の規定により控除された金額に相当する部分
二 当該贈与が当該相続の開始の年においてされた場合で、当該被相続人の配偶者が当該被相続人からの贈与について既に第21条の6第1項の規定の適用を受けた者でないとき(政令で定める場合に限る。)。 同項の規定の適用があるものとした場合に、同項の規定により控除されることとなる金額に相当する部分

 相続税法第19条は、第1項において「遺贈により財産を取得した者」を含めた規定になっていますから、特別寄与者については3年以内贈与のチェックを怠らない必要があります。

(相続財産法人に係る財産を与えられた者等に係る相続税の申告書)
第29条 第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたため新たに第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなつた者は、同項の規定にかかわらず、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
2 第27条第2項及び第4項から第6項までの規定は、前項の場合について準用する。

(修正申告の特則)
第31条 第27条若しくは第29条の規定による申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書を提出した者(相続税について決定を受けた者を含む。)は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。
2 前項に規定する者は、第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
3 前項の規定は、同項に規定する修正申告書の提出期限前に第35条第2項第5号の規定による更正があつた場合には、適用しない。
4 第28条の規定による申告書又は当該申告書に係る期限後申告書を提出した者(贈与税について決定を受けた者を含む。)は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなつたため既に確定した贈与税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。

(更正の請求の特則)
第32条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第33条の2において同じ。)をすることができる。
一 第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2 (寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
二 民法第787条(認知の訴え)又は第892条から第894条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第884条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第919条第2項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
三 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
五 第42条第30項(第45条第2項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第48条第2項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。
六 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
七 第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたこと。
八 第19条の2第2項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後において同条第一項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第1号に該当する場合を除く。)。
九 次に掲げる事由が生じたこと。
 イ 所得税法第137条の2第13項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第1項の規定の適用を受ける同項に規定する国外転出をした者に係る同項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継したその者の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 ロ 所得税法第137条の3第15項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第7項に規定する適用贈与者等に係る同条第四項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継した当該適用贈与者等の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
 ハ イ及びロに類する事由として政令で定める事由
十 贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに第21条の2第4項の規定に該当するものがあつたこと。
2 贈与税について申告書を提出した者に対する国税通則法第23条の規定の適用については、同条第1項中「五年」とあるのは、「六年」とする。

 特別寄与者の申告期限は、特別寄与料が受領できることが確定した日から起算しますから、遺産分割によったときは遺産分割協議書の日、家庭裁判所の調停・審判によったときは決定通知書の日から起算することになります。
 そこで、相続税法第29条第1項、第31条第2項、第32条第1項第7号、では「第4条第2項に規定する事由」規定がそれぞれ加えられています。

以上、説明をしましたが、▢内は全て私見でありますことをお断り申し上げます。

相続人不存在の場合の各税の課税について

《質問》

 相続財産法人の納税義務についてご相談です。

 被相続人 甲
 相続人 なし
 相続財産 土地と建物のみ

 相続人不存在により、相続財産法人が作られ相続財産管理人が選任されました。
 被相続人甲が代表取締役をしていた会社Aの借入金1億円について甲が連帯保証人になっていたため、その債務の弁済を求められました。
 相続財産管理人は債務の返済のため相続財産である土地と建物を6千万円で売却し、借入金を6千万円弁済し、不足の4千万円については双方協議の上、返済不要ということになりました。
 相続財産がゼロとなったため国庫に収納すべき残余財産はありません。
 上記一連の流れについて、所得税、法人税、消費税、相続税について相続財産法人は未申告・未納税です。
 以上の取引について税務上問題になる点はございますでしょうか?

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相続税における寄与分の支払について

《質問》

 相続における遺産分割協議において、相続人(二男)の妻に対して療養看護に努めたことによる同人の寄与分として、1千万円を支給することになりました。
 療養看護の内容は、被相続人は独居していたため、病院への送迎・清掃・食事の世話、洗濯・移動の補助です。
 期間は約1年半くらいです。
 ところが、新日本法規出版「遺言書・遺産分割協議書等条項例集」をみますと「療養看護型」の寄与が認められるための要件として基準が設けられており、上記のごとき看護の内容では税務上、寄与分が承認されることにより課税関係が変わるのか懸念しています。

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路線価が付されていない道路に接する宅地の評価

《質問》

 路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に特定路線価を申請すべきか、路地状敷地として評価すべきか教示願います。

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持分会社を退職する社員の出資の払い戻しについて

《質問》

 持分会社甲社(合同会社)を退社する社員の出資の払い戻しについて質問です。
資本金    30,000,000円
決算期    3月
社員の退社日 R2年3月31日
退社する社員は、個人Bと法人Cがあり、個人Bは法人Cの100%株主です。
出資金 A  1,000万円
    B     500万円
    C     250万円
    D     750万円
    E     300万円
    F     200万円

1. 持分の払い戻しを行う場合、その価額は「評価すべき持分会社の課税時期における各資産を財産評価基本通達の定めにより評価した~」とありますが、この「課税時期」というのは、退社日であるR2年3月31日で評価するのか、「取引相場のない株式の評価方法}に準じて、直前期の決算期末(H31年3月期)で評価するのか、どちらを採ればよいのでしょうか。

2. 出資の評価方法ですが、会社法で「退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。」とあり「配当還元方式」は採れないように読めますが、前期、前々期と配当をしているので、「配当還元方式」を採ることは可能でしょうか。

3. 退社の伴う持分の払い戻しを受ける場合、評価した価額が1口50,000円のところを出資した金額の1口10,000円で払い戻しをしてほしいとの申し出があり、会社側もこれに応じた時の、税務上の課税関係について教えてください。
ア 退社する出資者が個人の場合
イ 退社する出資者が法人の場合
ウ 甲社の処理(仕訳)

4. 退社する社員の出資持ち分を、払い戻しに代えて、第3者に譲渡することは可能でしょうか。

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合同会社の持分の譲渡価額について

《前提》

 親族間(ご兄弟です)で合同会社の持分を譲渡する際の譲渡価額について教えてください。
 みなし贈与が課税されない金額で譲渡できればと考えています。
 譲渡口数は、85,000口です。
 相続税の持分会社の出資の評価は、以下のようになっています。
① 定款に相続人が社員の地位を承継できる旨の定めがあり持分を承継する場合 → 取引相場のない株式の評価方法に準じて評価(類似を使える、純資産価額37%控除できる)
② 持分の払戻しを受ける場合 → 純資産価額

《質問》

1. 譲渡の場合には、持分の払戻しではないので、「取引相場のない株式の評価方法に準じて評価(類似を使える、純資産価額37%控除できる)」で評価した価額で譲渡してもみなし課税は起きないと考えて差し支えないでしょうか。{1口当たり1,570円(類似:@42円・純資産価額:@3,861円・会社規模:中の小)}

2. それとも、所得税法でいう「その時における価額」とは払戻時の価額であり、純資産価額で譲渡を行わないと差額についてみなし贈与課税を受ける可能性がありますでしょうか。(1口当たり純資産価額3,861円)
 例えば、①の価額133,450,000円で譲渡した場合、②との差額194,735,000円に贈与税課税?

※①の場合、@1,570×85,000口=133,450,000円で譲渡
 ②の場合、@3,861×85,000口=328,185,000円で譲渡

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土地及び土地の上に存する権利の評価上の通則

1. 物件の確認
所在、所有者、使用者等の確認を行う。
  ⇒取得者課税の原則(相続税法第1条の3及び第1条の4)

2. 土地の評価上の区分
(1) 原則(評基通7)
 土地の価額は、課税時期の現況によって、次の地目の別に評価する(別紙1参照)。
宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地・雑種地

(考え方)
 これは、土地の取引は、通常利用単位ごとに行われ、その取引価格は利用単位を基に形成されていると解されている(平成15年4月22日千葉地裁)。

(2) 特例的な取扱い(評基通7ただし書き)
イ 一体利用の土地
 一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、その内の主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する。
キャプチャ145*C土地は、ゴルフ練習場の駐車場として利用している。
⇒ A、Bを一体で評価する。
⇒ C土地は、不特定多数の者の通行の用に供されて道路によりA、B土地とは物理的に分離されていることから区分して評価します。

(考え方)
評基通7ただし書きにおいて、一体として利用されている一団の土地(隣接)が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとしている。これは、地目別評価の原則に従うと、大規模な工場用地、ゴルフ練習場用地等のように一体として利用されている一団の土地のうち2以上の地目がある場合は、その一団の土地をそれぞれの地目ごとに区分して評価することになるが、これでは一体として利用されることによる効用が評価額に反映しないため、実態に則した評価を行うこととしたものである。

ロ 一団の土地(別紙2 参照)
 市街化調整区域以外の都市計画区域で、市街地的形態を形成する地域において、市街地農地、市街地山林、市街地原野又は宅地と状況が類似する雑種地のいずれか2以上の地目の土地が隣接しており、その形状、地積の大小、位置等からみてこれらを一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価する。(*宅地は、一体で評価しないことに留意する。)

キャプチャ147(事例①)の場合、標準的な宅地規模を考えた場合にはA土地は地積が小さく、形状を考えた場合には、B土地は単独で評価するのではなくA土地と合わせて評価するのが妥当と認められます。また、位置を考えた場合には、C土地は道路に面していない土地となり、単独で評価するのは妥当ではないと認められることから、A、B及びC土地全体を一団の土地として評価することが合理的であると認められます。
(事例②)の場合、山林のみで評価することとすると、形状が間口狭小、奥行長大な土地となり、また、山林部分のみを宅地として利用する場合には、周辺の標準的な宅地と比較した場合に宅地の効用を十分に果たし得ない土地となってしまいます。
(事例③)では、各地目の地積が小さいこと、(事例④)では、山林部分が道路に面していないことから、やはり宅地の効用を果たすことができない土地となります。

(考え方)
 宅地化が進展している地域に存し、市街化農地等及び宅地と状況が類似する雑種地が隣接している場合には、その規模、形状、位置関係等から一団の土地として価格形成がなされるケースがあります。これらの土地は、近隣の宅地の価額の影響を強く受けるため、原則として、いわゆる宅地比準方式により評価することになっており、基本的な評価方法はいずれも同じであるという評価方法の同一性に着目して、地目の別に評価する土地の評価単位の例外として、その形状、地積の大小、位置等からみて一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価することとなります。

別紙1 土地の評価単位(原則的な取扱い)

3. 相続・遺贈又は贈与により取得した宅地の評価(別紙2 参照)

別紙2 国税庁ホームページより(宅地の評価単位)

(1) 取得者単位で評価
現行相続税法は、取得者課税方式によってますから、原則として、取得した土地ごとに評価します。

(2) 不合理分割と認められる場合
分割前の画地を「1画地の宅地」とし評価します。

不合理分割とは
① 分割後の画地が宅地としての通常の用途に供することができないとき
 無道路地・帯状地・過剰な不整形地等となる
② 分割後の画地が宅地として、その地域の標準的な宅地の地積を有さず、
  著しく狭くなってしまうとき
③ 故意に土地の価値を下げるような分筆を行い、土地の評価額を下げて、
  相続税負担を意図的に大きく軽減させようとしているとき
④ 現在及び将来において、有効な土地利用ができないとき

 分筆したことによって、著しく評価を下げることになったとしても、その地域の標準的な面積を有しており、土地の有効利用が可能である場合には、その分割に妥当性があると認められますので、不合理分割には該当しません

不合理分割の例

① A土地の地積が狭小で、B土地は一方路線のみに接することとなる場合
 【判定理由】
  A土地‥・間口狭小、奥行長大の補正ができる。
  B土地‥・側方加算がされない。
 キャプチャ148

② B土地を接道義務に満たない間口距離の土地に分筆した場合
 【判定理由】
  接道義務‥・都市計画法上、幅員が4m以上の道路に2m以上接して
  いなければなりません。
  B土地‥・間口が4mあれば、通常の用途に供せますが、本事例の
  場合、接道が1mであり、建築基準法その他の法令により規制されます。
  (不合理分割とされます。)
  (注)‥・間口が4mあり、標準的な面積を有していれば、合理的な分割
  といえます。
  キャプチャ149
(参考) 接道義務(東京都建築安全条例の場合)
  キャプチャ160

③ A土地の地積が狭小で、B土地が無道路地となる場合

 【判定理由】
B土地‥・通常の用途として、土地の有効利用を考慮した場合、
  わざわざ無道路地として分割しない。
 キャプチャ150

④ A土地の地積は標準的だが、B土地を故意に無道路地として分筆した場合
 キャプチャ151

⑤ 故意にB土地を正面路線と裏路線に接する形状に分筆させた場合
【判定理由】
  A、B土地‥・不整形地補正を適用するため
  B土地‥‥‥併せて、角地加算を免れるため
 キャプチャ152

⑥ 建物が既に建築されているにもかかわらず建物を分断する形状で分筆した場合
  例示
  建物の所有者がAだとした場合
 【判定理由】
  土地をA、Bに分割相続する合理的な理由がない。
 キャプチャ153

  全体を1画地として、評価する。

特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等の範囲

《質問》

図解相続税・贈与税(大蔵財務協会)に次のような記述があります。

 特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等の範囲(措通69の4-23)
A 被相続人の有する宅地等の上に特定同族会社の所有する建物等があり、当該特定同族会社(申告時期において清算中法人を除きます。)が事業(不動産賃貸業等を除きます。)を行っている場合
キャプチャ300

 なお、特定同族会社が不動産賃貸業等を行っている場合は、上記の80%の減額割合が50%となります。

B 被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の建物があり(土地の貸借は無償)、特定同族会社(申告期限において清算中の法人を除きます。)が建物を借りて事業(不動産賃貸業等を除きます。)を行っている場合
キャプチャ301

 ここで質問です。

 Aのなお書で「特定同族会社が不動産貸付業を行っていいる場合は上記の80%の減額割合が50%となります。」という記述があり、Bのパターンではその記述がないのは何故でしょうか。

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配偶者居住権について

 民法改正に伴い、相続税法第23条の2が規定され、令和2年4月1日以後に開始する相続により取得した財産に係る相続税について配偶者居住権が適用されることとなります。
 そこで、令和2年2月12日付課評2-5ほか3課共同「相続税法基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)により、次のとおり具休的な取扱いが定められました。
 なお、この通達に関するあらましは、令和2年2月21日付「相続税法基本通達の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし」として、国税庁から情報が発出されています。国税庁ホームページに掲載されていますので、ご覧になってください。
 また、このあらましの中で、新設された「配偶者居住権等の評価明細書」が紹介されています。

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