損害保険の取り扱いについて

《質問》

 個人事業者が受け取った損害保険金の取り扱いについて教えてください。
 自動車整備業を営む個人事業者の場合、ほぼ以下のパターンになると考えていますが、私の認識は間違えていませんでしょうか。
 法人と違い、雑収入として経理されるのは、以下のホとへの場合に限定されると整理しました。(ハとニは通常の売上と同じなので売上勘定計上消費税課税売上)

イ 事業用資産や身体への損害賠償としての損害保険金=非課税 事業主借
ロ 資産の修理費用の補填として受け取る損害保険金=
  修理代金>損害保険金  の場合差額が必要経費
  修理代金<損害保険金  の場合差額出ても非課税
ハ お客さんの保険会社から直接振り込まれた自動車整備業の売上代金=売上(売掛金)・消費税課税
ニ 商品の損失補填の保険金=売上(売掛金)消費税課税
ホ 休業損失補填のための保険金=雑収入  消費税対象外
へ 必要経費補填のための保険金=雑収入  消費税対象外(タックスアンサーNo2201のケース)

 最もよく分かっていないのが、ロの場合の経費補填のための損害保険金です。
 事業用資産の場合、タックスアンサーNo.2201 個人事業者が事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金を受け取ったとき とみますと修繕費と雑収入の両建て経理をするように、と読み取れます。
 このタックスアンサーが言っているのは、自己の資産に生じた修理費用(タックアンサーで言えば店舗の修繕費)などの場合ではなく、それとは別に新たに生じた経費(タックスアンサーの例だと補修期間に生じた仮店舗の賃借料)について受け取った損害保険金のみ課税対象(消費税対象外)だといっているのでしょうか?
 また、消費税の取扱いは、保険会社から受け取るとしても、
ハはお客さんからではなく保険会社が変わりに払った売上金なので消費税課税売上
ニは商品の対価としての保険金なので消費税課税売上
ホは休業していた間の補償であり、何等かの事業対価ではないので消費税対象外
と考えていますが、合っていますでしょうか?
特にハは直接取引をしていても被保険者の側では本来
  現預金/保険金収入(保険金受取)
  修繕費/現預金(保険金を原資に修理代支払い)
となるところ、短縮されて
  修繕費(課税仕入れ)/保険金収入(不課税)
の仕分けが成立していると考えています。

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米国居住の非居住者が内国法人の株式を譲渡した場合の課税関係

《質問》

 米国居住の(日本では)非居住者Aが保有している内国法人X社の株式全部を、Aの子であるBとCに譲渡することになりました。日本での課税関係はどのようになりますか。なお、現在のX社の株式の所有状況はAが34%、BとCが33%づつです。また、Aは日本に恒久的施設は有していません。さらに、X社は不動産関連法人には該当しません。

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死亡した者の住民税の課税(不動産所得と配当所得)

《質問》

 個人Aは昨年10月に死亡しました。昨年の所得に対する住民税の課税がどのようになるのか教えてください。昨年Aの死亡するまでの所得状況は、不動産所得が1,000万円、上場株式に係る配当所得が300万円(受取時に国税・地方税が徴収)です。

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住宅ローン控除(入居する前に修繕を行った場合)

《質問》

 この度中古住宅を住宅ローンにより取得しましたが、居住用に供する前に修繕を行い入居しました。住宅ローン控除の適用においてこの修繕の取扱いはどのようになりますか。

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被相続人の事業を相続人が引き継いだ際の申告と届出等について

《質問》

 個人Aは不動産貸付業を営んでいました。これまで所得税については青色申告で、消費税については課税事業者として簡易課税で申告してきましたが、令和2年12月7日に死亡しました。相続人は配偶者B(無職)と長男C、次男D(いずれも会社員)の計3人です。遺言は無く、遺産分割が令和3年5月に決定し、長男が賃貸不動産を全て相続し貸付業務を行うことになりました。
 各人の所得税・消費税の申告書の提出、届出書・申請書等の提出をいつまでに行うかについて説明して下さい(コロナ延長考慮せず)。

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コロナで出国できない者がベトナムで課税された役員報酬の課税関係

《質問》

 個人Aは、日本法人から給与を得ています。また、今年の2月からベトナム法人の役員となり同法人からも報酬を得ています。ベトナムでは当該役員報酬に対し20%の日本の所得税に相当する税が課税されました。Aは本来ベトナムで3年間現地での勤務を予定していましたが、コロナの影響で日本に居住したまま出国できない状況が続いています。課税関係についてご教示ください。また、ベトナムで課税された税金はどのように調整されますか。

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住宅の取得等に含まれる消費税が8%と10%がある場合の住宅ローン控除

《質問》

 住居の工事請負契約を平成31年3月に契約しました。建築費は3000万円で、契約書に記載された消費税率は、8%となっています。その後追加工事が行われ、令和2年9月になり住居が完成し入居しました。追加工事費は500万円で、10%の消費税が課されています。住宅ローン控除の額はどのように計算しますか。本体工事または追加工事にどのように充てたとして控除額の算出をするのですか。なお、住宅ローンの金額は2500万円です。

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確定申告に当たり注意すべき事項(所得税)第4回

十七 臨時所得の平均課税
問 確定申告において臨時所得の平均課税を失念していた場合、更正の請求はできるのか。

答 平成23年分の税制改正で、当初申告要件が廃止され、確定申告で適用せずに申告したとしても、更正の請求、修正申告において、適用受ける旨の記載と明細書の添付があれば適用ができる(所法90④)。

十八 税額控除
1 配当控除失念による更正の請求
問 確定申告において配当控除を失念した場合、更正の請求等による是正ができるのか。

答 住宅ローン控除等の他の税額控除と異なり、確定申告書への記載が要件とされておらず、更正の請求等による是正ができる(所法92)。

2 外国税額控除
⑴ 更正の請求での外国税額控除適用
問 確定申告書に外国税額控除の記載がない場合、更正の請求において外国税額控除を適用できないのか。

答 平成23年分以後の所得税における外国税額控除の適用に当たっては、当初申告要件が廃止され、従来の確定申告書に加え修正申告書又は更正の請求書に当該控除金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、控除対象外国所得税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類を添付すればできることとされた(所法95⑩)。

⑵ 外国税額控除の適用年度
問 令和2年分の所得に対する外国所得税を令和3年になってから支払うが、外国税額控除を適用はいつか。

答 外国税額控除を適用する年分は、外国所得税を納付することとなる日の属する年(継続適用を条件に支払った年とすることもできる。)となる(所基通95-3)。この場合、令和2年分は、控除余裕額を計算した外国税額控除の計算明細書を確定申告書に添付して申告したうえで、令和3年分でその控除余裕額の範囲内で外国税額控除を行うことになる(所法95②、122②)。

⑶ 申告しないことを選択した場合の外国税額控除
問 特定口座(源泉徴収あり)で取り扱っている国外株式の配当等について、配当所得の申告をしないことを選択した場合、外国税額控除だけを申告することができるのか。

答 国外株式の配当等について、申告不要制度(措法8の5、9の2⑤)の適用を受けること(申告しないこと)を選択した場合には、当該配当等に係る外国所得税額は、外国税額控除の計算上「外国所得税の額」に該当しないものとみなされるため、外国税額控除の計算の基礎に入れることはできない(措令4の5⑪)。

3 住宅借入金等特別控除
⑴ 相続による取得
問 相続により住宅を取得するとともに住宅ローンを継承した場合、住宅借入金等特別控除の適用はあるのか。

答 相続により住宅を取得するとともに借入金を承継しても、その借入金は相続による債務の承継であり住宅を取得するための借入金ではないので、相続により取得した住宅については、住宅借入金等特別控除の対象とならない(措法41)。

★⑵ 財産分与による取得
問 離婚による財産分与で前夫所有の住宅持分を取得し住宅ローンを引き継いだ場合、住宅借入金等特別控除の適用はあるのか。

答 贈与による取得ではなく、生計を一にする親族等からの中古家屋の取得ではないことからその他の要件を満たしていれば住宅借入金等特別控除の適用はある。

★⑶ 共有持分の追加所得
問 前夫と共有マンションを連帯債務による住宅ローンで取得し、住宅借入金等特別控除の適用を受けてきた。この度離婚による財産分与で、前夫から共有持分を追加取得し新たに金融機関から借入で連帯債務を返済した場合、住宅借入金等特別控除の適用はあるのか。

答 「家屋を2以上有する場合」には該当せず、当初持分に併せて追加取得した共 有持分についても住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる(措令26④)。控除額の計算については、住宅借入金等特別控除の重複適用に準じて行う。

★⑷ 住宅借入金等特別控除の重複適用
問 平成25年に全額住宅ローンにより3000万円(残高2500万円)で新築した建物について、令和2年に新たに全額ローンで増改築500万円(残高500万円)を行った場合の令和2年分控除額はいくらか。

答 平成25年建物取得分 2500万円×1%=25万円(控除限度額20万円)
令和2年増改築分  500万円×1%=5万円(控除限度額40万円)
20万円+5万円=25万円(控除限度額は両者のうち多い方の40万円)
したがって25万円が控除額となる。
なお、増改築が特別特定取得に該当すれば、当該取得分については13年間の控除が受けられる。

⑸ 住宅借入金等特別控除の対象となる増改築等
問 父所有の建物を所有者でない子が増改築した場合、住宅借入金等特別控除の適用はあるのか。

答 増改築した場合の住宅借入金等特別控除の適用は、自己の所有している家屋 について増改築した場合に限られるので、例えば、父の所有する家屋について子が増改築しても住宅借入金等特別控除は適用されない(措法41⑱)。
増改築をする家屋の共有持ち分を取得している場合には住宅借入金等特別控除は適用がある。

★⑹ 中古住宅の範囲
問 中古住宅の取得で住宅借入金等特別控除の対象となるもの

答 ①耐火建築物以外の建物は建築後取得までの期間が20年、耐火建築物は25年以内であるもの
  ② ①以外では、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅に該当するもの(耐震基準に該当するもの)

⑺ 住宅ローンの繰上返済
問 住宅ローンを繰上返済した場合

答 借入金の償還期間が当初10年以上であっても、その後、繰上返済等により償還期間が10年未満となった場合には、繰上返済等をした年から住宅借入金等特別控除は適用されない(措通41-19)。

★⑻ 住宅借入金等特別控除と譲渡所得の特例
問 家屋を居住用に供した年前後における住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の課税の特例等との適用について

答 令和2年4月1日以降の譲渡から、個人が居住用家屋等をその者の居住用に供した年及び前2年、後3年の計6年の間においては、住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の課税の特例等の重複適用を受けることはできないこととなった(措法41⑳㉑)。同日前の譲渡については、居住用に供した年と前後2年ずつの計5年間について重複不可と規定されていたため、居住年から3年めは重複適用できた。

⑻ 住宅資金贈与の特例と住宅借入金等特別控除
問 住宅資金贈与の特例を受けた場合の取得対価の計算はどうなるのか。

答 個人が住宅借入金等特別控除の適用を受けている年分又は前年分において、住宅資金の贈与税の非課税の特例、又は相続時精算課税の特例とを併用した場合は、住宅借入金等特別控除額の計算上、当該特例を受けた金額を住宅等の取得価額から減算する必要がある。
また、補助金(住まい給付金等)を受け取った場合も住宅等の取得対価から減額する必要がある(措法41、70の2、70の3措令26⑤)。

⑼ 個人間売買での取得
問 令和2年に個人間売買で住宅を取得した場合は特定取得となるのか

答 個人間売買による消費税の課税対象とならない住宅取得の場合には、特定取得に該当しない(措法41⑤)ため、税額控除の上限は20万円となる。なお、個人間売買でも、売主がその住宅を業務用資産として使用していた場合には、課税取引となり特定取得の場合に該当することになる。

★⑽ 借入金の担保
問 住宅新築にあたり、預金担保の借入を行い建築資金とした場合、住宅借入金等特別控除の適用はあるのか。

答 担保物についての制約はなく、借入期間が10年以上等の条件を満たしていれば、住宅借入金等特別控除の適用はある。

4 住宅耐震改修特別控除
⑴ 所有者以外が耐震改修
問 所有者以外の居住者が耐震改修を行った場合

答 所有者以外の者の居住者が、耐震改修を行った場合でも住宅耐震改修特別控 除の適用はある。措法41の19の2については、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除のように「(特定)個人が所有している家屋」である必要はない。

⑵ 住宅借入金等特別控除との重複適用
問 住宅借入金等特別控除と住宅耐震改修特別控除との重複適用はできるのか。

答 一の工事であっても、住宅耐震改修特別控除、住宅借入金等特別控除の各要件に該当する場合には、重複して適用することができる(措法41①⑩、措法41の19の2①)。

十九 確定申告
1 確定申告書の撤回
問 所法121条(確定申告を要しない場合)に該当する者が提出した第3期分の税額が記載された確定申告書は、撤回できるのか。

答 所法121条に該当する者が提出した確定申告書は、撤回が認められる。なお、申告書が撤回された後は、無申告となる(所基通121-2(注)1)。

2 給与所得者が20万円以下の給与を受け取った場合
問 日本の子会社から給与の支払いを受けている者(年末調整済)が、外国の親会社から20万円以下の給与等(ストックオプションを含む)の支払を受けた場合、確定申告義務はあるのか。

答 源泉徴収が行われない給与等の支払を受けている場合は、所法121条の規定(確定申告を要しない場合)の適用はなく、確定申告が必要である(所法121①、所基通121-5)。

3 源泉徴収されない公的年金が400万円以下の者の確定申告義務
⑴ 公的年金収入が源泉徴収されていない場合
問 源泉徴収の対象とならない年金を含む公的年金等の収入金額が400万円以下である場合に確定申告は不要と考えていいのか。

答 源泉徴収の対象とならない年金(例えば、公的年金として取り扱われる外国の制度に基づき国外において支払われる年金)の支給を受ける者は、公的年金等に係る確定申告不要制度を適用できない(所法121③)。

★⑵ 所得金額調整控除と年金所得者者の確定申告不要制度
問 年金所得者が給与収入も有する場合、所得金額調整控除後で確定申告不要制度を判定するのか。

答 確定申告不要制度の要件に該当するか否かの判定については、給与所得と公的年金収入を併有する場合、所得金額調整控除を適用した後の給与所得の金額を基に判定する(措法41の3の3②、⑥)。

 

確定申告に当たり注意すべき事項(所得税)第3回

十六 所得控除
1 医療費控除
⑴ 添付書類
問 医療費控除を受ける際の添付書類の変更について

答 平成29年分以降の確定申告書を平成30年1月1日以降に提出する場合、領収書の添付又は提示に代えて、医療費の明細書又は各保険者からの医療費通知を添付しなければならないこととされた(所法120④、所規47の2⑧⑨)。

★⑵ 医療費控除(補てん金)

問 癌と宣告されたことを保険事故として支給される保険金は、医療費控除に係る補てん金の額となるのか。

答 死亡したこと、重度障害になったことを基因として支払われる保険金は、医療費の補てんを目的とする保険金に当たらないため、医療費から差し引く必要はない(所基通73-8、73-9)。
【参考】
○医療費から控除するもの

支給先等 支給目的 種類
社会保険、共済、国民健康保険 医療費の支出事由を給付原因として支給 療養費、家族療養費、出産育児一時金、家族出産一時金、高額療養費
損害保険契約、生命保険契約等 医療費の補てんを目的として支払われる 傷害費用保険金、医療保険金、入院費保険金等

○医療費から控除しないもの

支給先等 支給目的 種類
社会保険、共済、国民健康保険 休業補償的なもの 傷病手当金、出産手当金
損害保険契約、生命保険契約等 死亡したこと、重度障害になったことで支払われるもの 死亡保険金、高度障害保険金

★⑶ 「医療費控除の明細書」の書き方
問 次の設例の場合、「医療費控除の明細書」の記入方法について
設例 本人の所得金額 500万円
浦和一郎(本人) ○○病院 入院費 20万円 入院給付金25万円
次郎(長男・生計一) △△病院 入院費 30万円 入院給付金15万円(令和3年受取予定)
よしこ(妻)   ××歯科  インプラント治療 40万円

答 次のとおり

○令和2年分医療費控除の明細書【内訳書】

⑴医療を受けた方の氏名 ⑵病院・薬局などの支払先の名称 ⑶支払った医療費の額 ⑷ ⑶のうち生命保険や社会保険などで補てんされる金額
浦和一郎 ○○病院 200,000 200,000
浦和次郎 △△病院 300,000 150,000
浦和よしこ ××歯科 400,000

⑷ 医療費控除(セルフメディケーション)
問 セルフメディケーション税制を選択して申告したが、後日従来の医療費控除を選択、更正の請求書ができるか。

答 セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例であり、申告の際に従来の医療費控除との選択適用となる。したがって、重複適用や、一度選択した控除を更正の請求や修正申告において変更することはできない(措法41の17の2)。

2 社会保険料控除(介護保険料、後期高齢者保険料)
問 控除対象配偶者である妻の年金から差し引かれた介護保険料又は後期高齢者医療保険料を夫の社会保険料控除とすることができるか。

答 社会保険料控除は、「居住者が…支払った場合又は給与から控除される場合」控除できる旨の規定となっていることから、妻の年金から差し引かれた介護保険料又は後期高齢者医療保険料を夫の社会保険料控除とすることはできない(所法74①)。なお、後期高齢者医療保険料については、妻の後期高齢者医療保険料を夫の口座から振替により支払うことを選択できることになっていることから、その選択をして夫の口座から振替により支払った場合には、夫の社会保険料控除の計算に含めることができる。
(注)妻の介護保険料が特別徴収(年金から天引き)されている場合は、本人の申し出により、特別徴収から普通徴収(現金納付又は口座振替)への変更はできないため、妻の介護保険料を夫の口座から振替により、支払うことはできない。ただし、妻の介護保険料が普通徴収されている場合、市区町村等へ一定の手続きをすることにより、妻の介護保険料を夫の口座から振替により支払うことができる。

3 寄附金控除
⑴ 入学寄附金
問 いわゆる入学寄附金は寄附金控除の対象となるのか。
答 入学1年目の年末までに支払った学校に対する寄附は、原則として寄附金控除の対象とならない(所法78②、所基通78-2)。

⑵ 宗教法人に対する寄附
問 宗教法人に対する寄附は寄附金控除の対象となるのか。

答 宗教法人に対する寄附は、国宝、重要文化財の保護の観点等から財務大臣が指定するものを除き、寄附金控除の対象とならない(所法78②二)。なお、指定された寄附金は財務大臣により告示されることになる(所令216②)ので、官報等により確認ができる。

⑶ 税額控除と寄附金控除
問 公益社団法人等に対して寄附を複数行った場合に、一部を税額控除とし、残りを寄附金控除の対象とすることはできるのか。

答 公益社団法人等に対する寄附について、所得控除又は税額控除を選択する場合には、その全てについて、いずれか一方を選択しなければならない(措法41の18の3-1)。

★⑷ ふるさと納税
問 課税所得金額500万円の所得者が、102,000円のふるさと納税をした場合の節税額と申告書への記載方法
○ふるさと納税控除額

税額 対象額 控除額
所得税 102,000-2,000=100,000 20.42% 20,420円
住民税所得割額 102,000-2,000=100,000 10% 10,000円
住民税特例控除額 102,000-2,000=100,000 69.58% 69,580円
合計 100% 100,000円

○ 住民税特例控除の割合
(人的控除差調整額控除後>0)

課税総所得金額 特例控除率
195万円以下 84.895%
330万円以下 79.79%
695万円以下 69.58%
900万円以下 66.517%
1800万円以下 56.307%
4000万円以下 49.16%
4000万円超 44.055%

(注)特例控除額は所得割額の20%が限度
限度額の判定(500万円×10%×20%=10万円>69,580)

申告書(第二表)
○寄附金控除に関する事項(㉘)

寄附先の名称 ○○市 寄附金 102,000

○住民税・事業税に関する事項

都道府県・市町村への寄附(特例控除対象) 共同募金、日赤その他の寄附 都道府県条例指定寄附 市町村条例指定寄附
102,000  –  –  –

4 障害者控除
⑴ 要介護認定
問 介護保険法により要介護認定を受けたことを理由に、障害者控除を適用できるのか。

答 要介護認定を受けたことのみで、障害者控除の対象とはならない。ただし、障害の程度が障害者に準ずるものとして、市町村長等*から認定を受けている者(「障害者控除対象者認定書」を交付されている者)は適用がある(所令10①七)。
*市町村長等とは、市町村長又は特別区の区長をいうが、社会福祉事務所が老人福祉法第5条の4第2項各号に掲げる業務を行っている場合には、社会福祉事務所長を指す。

⑵ 年少扶養親族の場合
問 年少扶養親族(扶養親族のうち、16歳未満の者をいう。)については、(特別)障害者控除が適用できないのか。

答 障害者控除の規定は、「居住者の同一生計配偶者又は扶養親族が障害者である場合」と規定されているので、16歳未満の扶養親族(扶養控除の適用のある控除対象扶養親族には該当しない。)が(特別)障害者に該当する場合には障害者控除の適用がある(所法79)。

⑶ 成年被後見人
問 成年被後見人は、障害者控除の対象となる特別障害者には該当しないのか。

答 成年被後見人は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当する(国税庁HP平24.8.31文書回答事例)。

★⑷ 配偶者特別控除と障害者控除
問 配偶者特別控除の対象となる配偶者が、身体障害者である場合、障害者控除の適用はあるのか。

答 障害者控除の対象となるのは「同一生計配偶者」であり、配偶者特別控除の対象となる配偶者はこれに当たらないため、障害者控除の適用はない(所法79②③)。なお、配偶者自身は所得税の計算上、障害者控除の適用はある。

5 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除
⑴ 配偶者特別控除の適用範囲
問 配偶者特別控除の所得基準

答 平成30年分の所得税から配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が、38万円超123万円以下となった。平成16年分から平成29年分までは、38万円超76万円未満である。いずれも合計所得金額に応じて逓減する。

⑵ 所得制限について(分離譲渡所得がある場合)
問 分離譲渡所得の金額がある場合の所得制限はどのように算定するのか。

答 同一生計配偶者や扶養親族の判定の際の合計所得金額は、分離譲渡所得がある場合特別控除前で算定する(措法31①③、32①④、所基通2-41(注))。

⑶ 所得制限について(純損失がある場合)
問 純損失(雑損失)の繰越控除がある場合の所得制限はどのように算定するのか。

答 純損失(雑損失)の繰越控除がある場合には、合計所得金額を繰越控除前で算定する(所法2①三十ロ、三十三)。

⑷ 扶養親族所属の変更
問 確定申告書において、控除対象扶養親族として申告していた者を、更正の請求や修正申告によって、別の納税者の控除対象扶養親族に変更することができるか。

答 二以上の居住者の扶養親族に該当する場合の扶養親族の所属は、①予定納税の減額申請書②確定申告書③扶養控除等申告書等に記載されたところによることから、その後の更正の請求や修正申告によって扶養親族の所属を変更することはできない(所令219①、所基通85-2)。

★⑸ 同一の者が配偶者控除と扶養控除の適用
問 年の中途で死亡した父親の準確定申告において配偶者控除の適用を受けた母親について父親が死亡した後においては子が扶養している場合には、扶養控除の適用はできないのか。

答 父親の準確定申告における同一生計配偶者の該当の有無については、死亡日の現況で判定する。子の申告において、控除対象扶養親族の該当の有無は12月31日の現況により判定する(所法85③)。したがって、母親は父親の配偶者控除の適用を受けたうえ、子は母親を控除対象扶養親族として扶養控除の適用も受けることができる。

⑹国外居住親族に係る送金関係書類
問 扶養控除の適用を受けようとする国外居住親族が複数おり、送金を代表者にまとめて行っている場合、その送金証明書を国外居住親族全員分の送金関係書類として取り扱うことができるか。

答 国外居住親族について扶養控除を適用する場合に添付する送金関係書類は、国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにすることが必要である(所規47の2⑤、所基通120-8)。

6 ひとり親控除、寡婦控除
★⑴ 婚姻歴がない未婚の親
問 婚姻歴がない未婚の親は、ひとり親控除の適用があるのか。

答 「ひとり親」とは、現に婚姻していない者又は配偶者の生死が明らかでない一定の者をいい、婚姻歴の有無は問われない(所法2①三十一)。

★⑵ 寡婦控除
問 昨年まで寡婦控除の適用を受けていた者(夫と離婚した後、扶養親族があった者)が本年は扶養親族がいなくなった場合

答 扶養親族がいない者で寡婦控除が適用されるのは、夫と死別又は夫が生死不明の場合に限られているので、寡婦控除の適用はない(所法2①三十)。

★⑶ 合計所得金額が500万円超の場合
問 合計所得金額が500万円超の場合のひとり親控除、寡婦控除の適用

答 ひとり親控除、寡婦控除(令和2年分以降)については、所得者の合計所得金額が500万円以下であることが適用要件とされている(所法2①三十、三十一)。なお、令和元年分以前は、合計所得金額が500万円超であっても、離婚又は死別した場合、扶養親族や総所得金額等が38万円以下の生計を一にする子がいる場合には、寡婦控除の適用が受けることができる。

7 所得控除の計算順序
問 退職所得を有する者が、各所得控除の合計金額が総所得金額よりも多額であるため、総所得金額から差し引きき切れない場合

答 所得控除は、総所得金額、山林所得金額又は退職所得金額から順次控除する(所法87②)。したがって、所得控除の合計額が総所得金額よりも多額であり、かつ、退職所得を有する場合には、源泉徴収で申告不要の退職所得を申告することで、総所得金額から差し引ききれなかった所得控除の額を退職所得から差し引きすることができる。

 

確定申告に当たり注意すべき事項(所得税)第2回

九 給与所得
1 ストックオプション等の所得区分
問 外国親会社から日本子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使に係る経済的利益や、リストリクテッドストック(譲渡制限付株式)の譲渡制限解除による株式所得に係る利益の所得区分

答 ストックオプションの権利行使に係る経済的利益やリストリクテッドストックの譲渡制限解除による株式取得の利益に係る所得は、原則として給与所得となる(所法28、36、所令84、所基通23~35共-6)。

2 ストックオプションの収入金額
問 外国親会社から日本子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使に係る経済的利益について給与所得の金額を計算する場合、証券会社等に支払った取引手数料は収入金額から控除できるか。

答 発行法人から付与されたその新株予約権等の行使に係る経済的利益については、その新株予約権等の行使に基づいて取得する株式の行使日における価額から、その新株予約権等の行使に係る権利行使価額(新株予約権の取得価額に行使に際し払い込むべき額を加算した金額)を控除した金額とされている。したがって、権利行使のために証券会社等に支払った手数料を差し引きことはできない(所法36②、所令84②)。なお、株式を売却した際には、譲渡所得の金額の計算上、取得費として総収入金額から控除する。

★3 共働き世帯の所得金額調整控除
問 共働き世帯の場合、所得調整控除は夫婦どちらかで適用することになるのか。

答 夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦間に年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦双方がこの控除の適用を受けることができる。

★4 16歳未満の扶養親族がいる場合の所得金額調整控除
問 扶養親族に16歳未満の者しかいない場合には所得金額調整控除の適用はないのか。

答 「控除対象扶養親族」と異なり「扶養親族」には16歳未満の者も含まれるため、給与等の収入金額が850万円を超えており、16歳未満の扶養親族がいれば所得金額調整控除の適用を受けることができる。

十 退職所得
1 退職所得の収入計上時期
問 退職した翌年に退職金の支給を受けた場合の収入計上時期

答 退職所得の収入金額は、原則としてその支給の起因となった退職日による。ただし、会社役員等の場合で、その支給について株主総会等の決議を要するものについては、その決議のあった日とされる(所基通36-10)。

★2 退職所得に係る住民税の取扱
問 退職所得の住民税における課税の取扱はどのようなものか。

答 特別徴収で住民税が差し引かれ課税関係が終了する。損益通算や純損失の繰越控除、所得控除の額を控除することはできない。また、住民税の場合についてだけ合計所得金額や総所得金額等の合計額には含まれない(地法50の2、328)。

十一 譲渡所得
1 株式の譲渡に際し支払った管理費の扱い
問 株式等に係る譲渡所得等の所得区分が譲渡所得である場合に、金融商品取引業者に支払った管理費は収入から控除できるか。

答 株式等に係る譲渡所得等の所得区分が譲渡所得である場合の所得金額の計算は、総収入金額から所得の基因となった株式等の取得費及びその株式等の譲渡に要した費用の額、その年中に支払うべきその資産を取得するために要した負債の利子の合計額を控除することとされており、管理費はこの譲渡に要した費用に当たらないため収入金額から控除することはできない(所法33③、措法37の10⑥三、37の11⑥)。

2 贈与時に負担した名義書換料
問 贈与により取得したゴルフ会員権に係る譲渡所得の計算上、贈与時に負担した名義書換料は必要経費となるのか。

答 贈与、相続又は遺贈により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、その資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときには、各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、当該資産の取得費に算入できる(所基通60-2)。

3 譲渡所得における消費税の取扱い
問 消費税の課税事業者がその事業について全て税抜経理で処理を行っている場合、事業用の店舗を売却した時の譲渡所得の計算はどのようにするのか。

答 消費税の課税事業者が店舗等を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算は、次のとおり、その方の事業所得等に係る経理方式と同一の経理方式により計算する(平元.3.29直所3-8「2(注)2」)。
① 税込経理方式を採用している方
税込価額で収入金額、取得費、譲渡費用を計算
② 税抜経理方式を採用している方
税抜価額で収入金額、取得費、譲渡費用を計算
③ 非事業者、免税業者
税込経理方式を採用している方と同じ

★4 金地金の売買
問 平成20年に金地金300グラムを90万円で購入し、令和2年に210万円で売却した場合の所得区分はどうなるのか、また、所得金額等はいくらとなるのか。

答 金地金の譲渡による所得は総合課税の譲渡所得となる。所得金額は収入金額210万円-取得価額90万円-特別控除50万円=所得金額70万円
他に所得がなければ、5年超所有の譲渡所得の課税標準、合計所得金額は
70万円×1/2=35万円となる。
ちなみに、譲渡対価の額が200万円を超える場合、税務署へ支払調書の提出がされる。

十二 一時所得
損害保険の満期保険金の所得区分
問 店舗に係る損害保険の満期保険金は事業所得となるのか。

答 損害保険契約に基づき受け取る満期保険金は、被保険物が事業用資産であっても一時所得とされる(所基通34-1⑷)。

十三 雑所得
1 遡及して受け取った国民年金
問 過去に遡及して国民年金の支払いを受けた場合の収入計上時期はいつか。

答 年金の収入計上時期は、その支給の基礎となった法令等により定められた支給日であるため、前年分以前の期間に対応する年金が一括して支給されても、年分ごとに区分して収入金額を計算する(所基通36-14⑴)。

2 FX取引
問 店頭取引の外国為替証拠金取引(FX)についての課税関係

答 FXの差金等決済により生じた差益の課税関係は、店頭取引と取引所取引(金融商品取引所の開設する金融商品市場で行われる取引)のいずれの場合も、申告分離課税の「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15%(地方税5%)の税率で課税される(措法41の14①)。
なお、損益金額については、支払調書として税務署に提出される。

十四 損益通算等
1 一時所得や総合譲渡所得との損益通算
問 事業所得の赤字と一時所得又は総合長期譲渡所得を通算する場合の注意事項

答 一時所得又は総合長期譲渡所得と通算する場合は、50万円の特別控除後で、1/2を乗ずる前の金額と通算する(所法69①、所令198三、所法22②)。

2 土地等の取得に要した借入金利子の取扱い
問 事業的規模の不動産所得者の場合、土地等の取得に要した借入金の利子の取扱い

答 土地等の取得に要した借入金の利子から生じた損失については、不動産の貸付けを事業的規模で行っているか否かに関わらず、不動産所得に係る損益通算の特例が適用される。したがって、不動産所得が赤字の場合、損益通算の対象とはならない(措法41の4)。

3 居住用財産の買換え等の所得金額要件
問 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5)と特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2)の適用にあたり、合計所得金額が3000万円を超えることになった場合

答 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5)と特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2)の適用にあたっては、所得金額の要件はない。しかし、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の特例と特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除の特例を適用するにあたっては、合計所得金額が3000万円を超える年は適用ができない(措法41の5④ただし書き、41の5の2④ただし書き)。

4 非居住者である役員の給与と不動産所得
問 確定申告において、非居住者である内国法人の役員が、役員給与と事業的規模(恒久的施設)の不動産所得に係る損失を損益通算はできるのか。

答 平成29年分以降、恒久的施設(PE)に帰属しない所得は、源泉分離課税により完結することとなった。そのため、非居住者の役員給与は、PEに帰属しない所得であることから、総合課税の対象とはならず、不動産所得に係る損失と損益通算することはできなくなった(所法164)。

十五 純損失の繰越控除・繰戻し
1 期限後申告での繰越控除
問 純損失が生じた年において期限後申告を提出している場合、純損失の繰越控除の適用はあるのか。

答 損失発生年の期限内申告は適用要件ではなく(平成23年分以降)、純損失が生じた年において期限後申告をしている場合であっても、その翌年以降純損失の繰越控除は適用できる(所法70④)。

2 純損失の発生年の翌年以後白色申告の場合
問 純損失の繰越控除は、純損失が生じた翌年以後も青色申告書を提出する必要があるのか。

答 繰越控除の適用年において青色申告であることは要件となっていないことから、例えば、純損失が生じた年に青色申告者が法人成し、その年の翌年以後白色申告者(給与所得者)となった場合であっても、純損失の繰越控除は適用することができる(所法70④)。

3 純損失の一部繰戻
問 純損失について繰戻し還付請求をする場合、一部繰戻はできるのか。

答 純損失は、その全部を繰り戻さないで、一部を繰り戻し、残りをその純損失が生じた年の翌年以降3年間に繰り越すことができる(所法70、140①二)。