土地等の評価・計6回《第4回》

【土地等の評価】《第4回》

Ⅳ 特殊な状況における宅地の評価

(1)私道の用に供されている宅地の評価(評価通達24) 
 道路は、公的な主体が設置し維持管理している道路(公道)と、私人が設置し維持管理している道路(いわゆる私道)とに分けられます。
 そして、私道には、①公共の用に供するもの(通り抜け道路のように不特定多数の通行の用に供されている道路と、②そうでないもの(袋小路のように、専ら特定の者の用に供する行き止まり道路)とがあります。
 ①の私道は、もはや私有物として勝手な処分ができるものではないので、このような私道の価額は、評価しないこととしています(評価通達24後段)。
 一方、②の私道は、その使用収益にある程度の制約はありますが、私有物として所有者の意思に基づく処分の可能性は残されています。このようなことから、②の私道の評価は、次の算式により評価することとしています。

私道でないものとした場合の価格 × 30% = ②の私道の評価額

(注)専用利用している路地状敷地については私道としての評価は行いません(下記質疑応答事例【私道の用に供されている宅地の評価】を参照してください。)。

○質疑応答事例【私道の用に供されている宅地の評価】
       【不特定多数の者の通行の用に供されている私道】

(2)土地区画整理事業施行中の宅地の評価(評価通達24-2)

イ 評価通達における評価方法
 土地区画整理事業が施行されている地域にある宅地で、仮換地の指定がされている宅地の評価方法は、次のとおりとなっています。
(イ)原則
 仮換地の価額で評価します。
(ロ)例外
 仮換地が指定されている場合であっても、次のいずれにも該当する場には、従前地の価額により評価します。
① 仮換地について使用又は収益を開始する日(仮換地の指定の効力発生日)を別に定めるとされているため、仮換地について使用又は収益を開始することができないこと
② 仮換地の造成工事が行われていないこと

ロ 路線価図及び評価倍率表への表示(関東信越国税局における取扱い)
 土地区画整理事業が施行中の区域については、路線価図及び評価倍率表に「個別評価」と表示がされています。
 相続税又は贈与税の申告に際し、「個別評価」と表示されているため評価することができない場合は、その土地等を評価するための路線価等を納税義務者からの申出に基づき回答しています。

ハ 個別評価申出書
 「個別評価申出書」に「個別評価により評価する土地等の所在地、状況等の明細書」、「個別評価申出書添付資料一覧表」及び物件案内図、地形図、道路の状況がわかる写真等の資料を添付して、評定担当署宛てに提出してください。
 したがって、路線価図等において、「個別評価」と表示されている宅地については、個別評価申出書を提出し、税務署長から回答のあった路線価や倍率に基づいて評価額を算定することとなります。
※「個別評価申出書」の様式は、関東信越国税局ホームページに掲載されています。

(3)造成中の宅地の評価(評価通達24-3)
 農地に土を盛ったり、山林を切り崩したり、池沼を埋め立てたりして宅地を造成する場合がありますが、課税時期において造成中の宅地は、次の算式により評価します。
キャプチャ4
(注)課税時期までに投下した費用の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額です。

(4)農業用施設用地の評価(評価通達24-5)
 農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」といいます。)に規定する農用地区域内又は都市計画法に規定する市街化調整区域内の「農業用施設用地(注)の価額は、次の算式により評価します。
(注)「農業用施設用地」とは、畜舎、蚕室、温室、農産物集出荷施設、農機具収納施設など農振法第3条第3号及び第4号に規定する施設の用に供されている宅地をいいます。
キャプチャ5
(注1)「農地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、倍率地域であれば、基準とすべき付近の農地の地目(田、畑)及びその固定資産税評価額を確認し、その固定資産税評価額にその地目の倍率を乗じて求めます。
(注2)農業用施設用地の評価に係る宅地造成費は、市街地農地等の評価に係る宅地造成費の金額を用いて算定します(具体的な金額等は、財産評価基準書「宅地造成費の金額表」を参照してください。)。

(5)セットバックを必要とする宅地の評価(評価通達24-6)

イ セットバックとは
 建築基準法第42条第1項において道路は幅員4m以上のものとされていますが、同条第2項では、その例外(幅員4m未満)として、建築基準法施行の時点で、すでに建築物が建ち並んでいるもので特定行政庁(知事又は市・町長)が指定したものも「道路」として定義しています(一般的に「2項道路」又は「みなし道路」と言われています。)。
キャプチャ6 この建築基準法第42条第2項に規定する道路に面する宅地は、その道路の中心線から2mずつ後退した線が道路の境界線とみなされ、将来、建物の建替え等の場合にはその境界線まで後退(セットバック)して「道路敷き」として提供しなければならないことになっています。

ロ セットバックを必要とする宅地の評価
 セットバックを必要とする宅地は、現在の利用には特に支障がない場合であっても、その宅地の価額は、セットバックを要しない宅地の価額に比較して減価することとなります。そのため、「2項道路」に面しており、セットバックを必要とする宅地は、次の算式により評価します。
キャプチャ7

(6)都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価(評価通達24-7)
 「都市計画道路予定地」となっている区域内においては、都市計画法の規定により、通常2階建ての建物しか建築できないなど建築に制限を受けることになり、その土地の利用用途、高度利用度及び地積の関係によって土地価格に影響を及ぼすことになります。
 そのため、都市計画道路予定地の区域内にある宅地は次の算式により評価します。
キャプチャ8
(注)「地積割合」とは、その宅地の総地積に対する都市計画道路予定地の部分の割合です。

(7)文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価(評価通達24-8)
 文化財保護法に規定する重要文化財に指定された建造物、同法に規定する登録有形文化財である建造物及び文化財保護法施行令に規定する伝統的建造物(以下「文化財建造物」といいます。)については、文化財保護法による法的規制を受けるとともに、その保護がなされています。
 このような文化財建造物及びその敷地については、一般の売買実例はほとんどないことから、それを基に路線価等を定め、あるいは家屋の価額の算定方法を示すことは困難です。
 そのため、文化財建造物及びその敷地については、それが文化財でないものとして評価した場合の価額から、その文化財の種類に応じた法的規制の程度又は利用上の制約等に応じた一定の評価減を行うことにより評価することとしています。
(注)文化財建造物である家屋の評価は、評価通達89-2を参照してください。
文化財建造物である家屋の敷地は、次の算式により評価します。
キャプチャ10

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