土地等の評価・計6回《第5回》

【土地等の評価】《第5回》

Ⅴ 貸宅地の評価

 借地権等が設定されている宅地(貸宅地)については、これらの権利の価額に相当する減価が生じていると考えられることから、評価通達では、貸宅地の評価に当たっては、その宅地の自用地としての価額から設定されている権利の価額を控除して評価することとしています。

(1)普通借地権の目的となっている宅地の評価(評価通達25(1))
 「普通借地権の目的となっている宅地」は、次の算式により評価します。

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相当の地代を収受している貸宅地の評価等(個別通達)
 土地を同族会社に賃貸する場合等において普通借地権の設定に当たり権利金の授受に代えて相当な地代を支払うことが約定されるなど特殊な場合の評価方法等については、以下の個別通達があります。
○ 相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和42年12月5日)
○ 相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和60年6月5日)

○質疑応答事例【複数の地目の土地を一体利用している貸宅地等の評価】

(2)定期借地権の目的となっている宅地の評価(評価通達25 (2))
「定期借地権の目的となっている宅地」は、次の算式により評価します。

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一般定期借地権の目的となっている宅地の評価(簡便法)
 借地借家法第22条に規定する「一般定期借地権」の目的となっている宅地については、次の個別通達により、課税上弊害がない限り、評価通達による原則評価に代えて、「底地割合」を基として評価することとしています。
○一般定期借地権の目的となっている宅地の評価に関する取扱いについて(平成10年8月25日)

○質疑応答事例【一般定期借地権の目的となっている宅地の評価一簡便法(1)】
       【一般定期借地権の目的となっている宅地の評価一簡便法(2)】

(3)地上権の目的となっている宅地の評価(評価通達25 (3))
 「地上権の目的となっている宅地」(注)は、次の算式により評価します。

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(注)建物所有を目的とする地上権の目的となっている宅地は、上記1の「普通借地権の目的となっている貸宅地」又は上記2の「定期借地権の目的となっている貸宅地」として評価することになります。

(4)区分地上権の目的となっている宅地の評価(評価通達25 (4))
 「区分地上権の目的となっている宅地」は、次の算式により評価します。

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○質疑応答事例【区分地上権の目的となっている宅地の評価】

(5)区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価(評価通達25 (5))
 「区分地上権に準ずる地上権の目的となっている宅地」は、次の算式により評価します。

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○質疑応答事例【区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価】

 

Ⅵ 借地権等の評価

 評価通達9に定める土地の上に存する権利のうち、宅地の上に存する権利としては、①普通借地権、②定期借地権、③地上権、④区分地上権及び⑤区分地上権に準ずる地役権の5種類があり、これらの権利の評価方法について説明します。

(1)普通借地権の評価(評価通達27)
 「普通借地権」(注1)は、次の算式により評価します。

自用地としての価額 × 借地権割合(注2) = 普通借地権の評価額

(注)1 借地借家法(平成3年法律第90号)の制定(平成4年8月1日施行)により認められた一般の借地権(借地借家法第2条)は、「普通借地権」といわれています。また、借地借家法の施行前に成立している既存の借地権については、従前の取扱いが適用されます(同法附則第4条ただし書)。
 評価通達では、これら2種類の借地権をいずれも建物の所有を目的とする地上権又は賃借権である「借地権」として取り扱っています。
2 借地権割合は、路線価地域においては路線価図でAからGまでの記号により、倍率地域においては評価倍率表でパーセントにより表示されています。

(2)定期借地権の評価(評価通達27-2)
 定期借地権制度は、その種類と設定期間との組み合わせにより多種多様な借地契約の設定が想定され、借地契約の内容も、地代額の設定から権利金・保証金の支払いの有無(多寡)にいたるまで、極めて個別性が強く、また、借地契約の更新がなく契約終了により確定的に借地関係が終了することから、借地契約の残存期間の長短によって定期借地権の価額は異なることになります。
 上記を踏まえ、評価通達では簡便法として、「定期借地権設定時において借地人に帰属する経済的利益の総額」を基に、「課税時期における残存期間」を考慮して、次の算式により定期借地権の価額を算定します。

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「定期借地権設定時に借地人に帰属する経済的利益の総額」の求め方
 定期借地権設定時に借地人に帰属する経済的利益には、①借地契約終了の時に返還を要しない権利金などの一時金の支払いに伴う前払地代、②借地契約終了の時に返還を必要とするが、無利息又は低利で預託される保証金に伴う前払地代、③地代が低額で設定されたことに伴う差額地代があります。
 なお、具体的な計算方法は、評価通達27-3 に定められています。
「基準年利率」及び「複利年金現価率」
 各年月の基準年利率及び各利率に係る複利年金現価率等については、国税庁ホームページの法令解釈通達(財産評価関係:個別通達)の「平成○年分の基準年利率について」で公表されています。

(3)地上権の評価(相続税法23)
 「地上権」(注)は、次の算式により評価します。

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(注)地上権は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するためにその土地を使用する権利(民法第265条)をいいますが、建物所有を目的とする地上権は「借地権」に該当しますので、上記1の「普通借地権」又は上記2の「定期借地権」として評価することになります。

(4)区分地上権の評価(評価通達27-4)
 民法269条の2の規定による地上権は、工作物の所有を目的とし、土地の一定層を客体として設定されるものであり、「区分地上権」と呼ばれています。
 この区分地上権は、通常、鉄道や道路のためのトンネルの所有を目的とするものが多く、この場合には、国土交通省が中心となって設けている中央用地対策連絡協議会理事会が定めた「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」に定める「土地利用制限率算定要領」を基として補償金が支払われているのが現状です。
 このような現状を踏まえ、区分地上権は、次の算式により評価します。

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 なお、設定事例が最も多い地下鉄等のトンネルの所有を目的とする場合の区分地上権の割合は、過去の補償金の支払事例等から、30%とすることができます。
【地下鉄等のトンネルの所有を目的とする区分地上権の評価(簡便法)】
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(5)区分地上権に準ずる地役権の評価(評価通達27-5)
 「区分地上権に準ずる地役権」とは、特別高圧架空電線の架設等を目的として、地下又は空間について上下の範囲を定めて設定されたもので、建造物の設置を制限するものとされています(地価税法施行令第2条第1項)。
 このような地役権は、区分地上権と同じ内容(効果)をもつものであり、地役権設定に当たり支払われる保証金も、区分地上権の場合と同様に、「土地利用制限率算定要領」を基として補償金が支払われているのが実情です。
このため、「区分地上権に準ずる地役権」は、区分地上権と同様に、次の算式により評価します。
キャプチャ212
 なお、「区分地上権に準ずる地役権」は、建造物の設置を制限するものであることから、家屋に対する建築制限の強弱に着目し、①家屋の建築が全くできない場合には50%又は借地権割合のいずれか高い割合を、②家屋の建築ができるとしても、その構造、用途等に制限を受ける場合には30%の割合を、基にして評価することができます。
                        特別高圧架空電線
区分地上権に準ずる地役権が存する土地 キャプチャ13
                    鉄塔          鉄塔

【「区分地上権に準ずる地役権」の評価(簡便法)】
キャプチャ14

 

Ⅶ 貸家建付地等の評価

(1)貸家建付地の評価(評価通達26)
 貸家の借家人は家屋に対する権利を有するほか、その家屋の敷地(貸家建付地)についても、家屋の賃借権に基づいて、家屋の利用の範囲内で、ある程度の支配権を有していると認められ、逆にその範囲において、地主(貸家建付地の所有者)は、利用についての受忍義務を負うこととなります。
 そのため、借家人の有する支配権を消滅させるためには、いわゆる立退料の支払いを要する場合もあり、また、その支配権が付着したままの状態でその土地(貸家建付地)を譲渡するとした場合には、支配権が付着していないとした場合における価額より低い価額でしか譲渡できない場合もあります。
 そこで、貸家建付地の価額は、自用地としての価額から借地権割合と借家権割合(30%)の相乗積を乗じて計算した価額を控除した価額によって評価することとしています。
 また、アパートや貸ビルの一部に賃貸の用に供されていない部分がある場合には、上記の考え方に基づき、課税時期において現実に貸し付けられている部分の割合を賃貸割合と定め、次の算式により、貸家建付地の評価額を求めることとしています。
キャプチャ15
(注)1 借家権割合は、評価倍率表の「借家権割合」の欄に記載してあり、当局管内6県の借家権割合は、全て30%です。
2 賃貸アパートなど、その貸家に係る各独立部分がある場合の賃貸割合は、次の算式により計算します。
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※ 賃貸割合の算定に当たって、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる各独立部分」がある場合には、その各独立部分の床面積を、賃貸されている各独立部分の床面積(B)に加えて賃貸割合を計算して差し支えありません。
 なお、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる」かどうかは、その部分が
① 各独立部分か課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、
② 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、
③ 空室の期間、他の用途に供されていないかどうか、
④ 空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、
⑤ 課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか、
などの事実関係から総合的に判断します。

○質疑応答事例【貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価】
       【貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲】

(2)貸家建付借地権等の評価(評価通達28~31)

キャプチャ17

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