取引相場のない株式の評価について

《前提》
建物X

・ 建物はX社が所有、他に賃貸している。
・ X社の株主は甲
・ 甲と乙は夫婦、丙はその子供
・ 甲、乙、丙とX社は、賃貸借契約(固定資産税の3倍相当の地代支払い)を締結 「無償返還の届出書」を提出している。

《質問》

① 甲から丙へX社株式を贈与する場合、純資産価額の計算上、計上すべき借地権の価額はどのように計算するのでしょうか。
② 当該贈与後、甲、乙、に相続があり、丙が当該土地を取得する場合の当該土地の評価方法(評価単位含む)を教えてください。
③ 仮に株主が甲と乙の場合、甲、乙から丙へX社株式を贈与する場合、純資産価額の計算上、計上すべき借地権の価額はどのように計算するのでしょうか。

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第三者間の株式売買における配当還元方式の適用について

《前提条件》

 事業会社の株式について。
 社長が株式の71%を保有しており、その他社長の親族外で29%保有している。
現在1株も保有していない取締役が、上記親族外株主より20%の株式を売買にて取得予定。
 なお、現在株式を保有している親族外株主と取得予定の取締役の間にも血縁関係等はない。
 その際に、配当還元方式にて算定した価格にて売買を行う。

《質問事項》

DCF法などと比較して低い価額で買い取ることとなりますが、課税上弊害が発生する可能性はありますか?

《当社の見解》

 第三者間での売買については、低額譲渡の問題等は無いため、配当還元方式による評価額で売買したとしても、弊害は発生しないと思われる。

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中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置について

~ 桜友 国税実務問答(第442回)法人税 より ~

【質 問】
 当社は、3月決算の青色申告法人です。令和3年度税制改正において、給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除制度のうち中小企業者等が給与等の引上げを行った場合に係る措置が改組され、中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置(以下「本件特例」といいます。)が整備されたと聞きました。
 当社の国内雇用者への給与等の支給額等の状況は以下のとおりですが、令和4年3月期において、本件特例の適用を受けることができるでしょうか。
 また、適用を受けることができる場合に、法人税額から控除できる金額はいくらになりますか。
 なお、当社は、本件特例の適用対象となる中小企業者等に該当し、当期の調整前法人税額は1,500千円です。

《当社の事業年度》
令和4年3月期(以下「当期」といいます。):自令和3年4月1日至令和4年3月31日
令和3年3月期(以下「前期」といいます。):自令和2年4月1日至令和3年3月31日

《国内雇用者への給与等の支給額等の状況》        (単位:千円)
国内雇用者

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小規模宅地等の特例の適用の可否について:ケース4

キャプチャ342

《相続関係》
被相続人  X氏
                    同族会社a
相続人  妻  B氏  被相続人と同居(同族会社役員)
     長男 A氏  被相続人と同居(同族会社役員)
     長女 C氏         (同族会社従業員)
     二男 D氏         (同族会社役員)

《賃貸関係》
◆建物アに関しては,毎月25万円で同族会社に貸付をしている。
 (従来50万円で貸していたが,会社の状況が悪化したため、令和1年10月からは25万円に変更)
◆建物イに関しては,毎月40万円で同族会社に貸付をしている。
 1階部分(貸付部分)
 2階部分は、X氏とB氏が住んでいる。
 3階部分は、A氏の家族が住んでいる。
 生活は独立分離しており、お風呂なども2、3階それぞれにある。

《a法人の株主》
 代表はA氏
 令和2年8月決算
 X氏   2,533,000株
 B氏    117,000株
 A氏      350,000株
 合計   3,000,000株

《質問》

 今回の相続で,小規模宅地の特例が使えるのはどのパターンか、有利なものを
ご教示いただけますでしょうか。

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小規模宅地等の特例の適用の可否について:ケース3

キャプチャ340

《状況》

・被相続人X(母)と相続人A(子)が同じ建物内(戸建)で生活している。
・生活形態は、1FがX、2・3FがAであったが、入口や風呂は同じ。
 キッチンは別であり、生活も別々であった。
 電気料金などの支払は、IFがX、2・3FはAと別々に行っていた。
 財布は別の状態。
・被相続人Xは2019年7月頃より、施設に入所。 2020年11月に死亡。
・土地はXのものであるが(これから遺産分割協議書作成予定)、未登記のため亡くなった夫のものになっている。
・建物は、A名義。
・固定資産税は、土地はX、建物はAがそれぞれ支払っていた。

《質問》

 今回の相続において、土地をAが相続した場合、小規模宅地の特例は使えますでしょうか。

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小規模宅地等の特例の適用の可否について:ケース2

1 基本情報
 被相続人:父
 相続人:長男、次男(両者ともサラリーマンであり、被相続人とは生計別)
 被相続人が所有する土地の上に、被相続人名義の家屋が2棟(A.B)あります。
 2棟はそれぞれ固定資産税が課税され、また、1~2m離れて建設されており、渡り廊下でもつながっていません。なお、登記簿上はA棟(平屋/床面積110㎡/S48年築)が母屋として、B棟(2階建/床面積120㎡/H9年築)がその附属建物とし登記されています。
 被相続人は普段はA棟で生活を行い、相続人(長男・次男)はB棟で寝起きしていますが、B棟に風呂とキッチンがないためA棟に風呂に入りに行き、普段の食事はA棟で被相続人ととっていました。
 いわゆるB棟は子ども部屋とトイレがある家屋です。

2 居住していた者の判定について
 下記資料は、所得税の居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の解説です。
※別添「全日本不動産協会HP」資料参照
(抜粋)
『3.2の判定基準による判定の実際
 2.の通達における「……日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定」する場合、具体的にどのような事実に着目されるのでしょうか。
 そもそも「居住」とは、そこで日常生活を送って起居すること、寝起きすることですから、その家屋がそのために最低限必要な程度の大きさ・設備を備えていることが必要です。2.の通達でも、「その家屋の構造及び設備の状況」が考慮すべき点として言及されています。具体的には、その家屋に、台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室が備わっていることが必須となります。』

 ここでは、総合勘案する際の設備要件として、具体的にはその家屋に、『台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室』が備わっていることが必須と断言しています。
 B棟にあてはめると、離れは居住の用に値する家屋ではない、となります。
 具体的には、離れは、台所、浴室の必須の設備が備わっていません。
 それでは、彼らはどこに居住していたのか。生活の本拠はどこなのか。
 それは、風呂もキッチンもトイレも備えた居住用家屋、朝晩の食事や家族のだんらんを共にする母屋に居住していた。そこが、生活の本拠であったという結論を導きました。
 あくまで、離れの目的は、母家が居住用家屋の機能として必須の、『台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室』のうち、兄弟が4人もいるので、母家では、寝室の機能を果たすスペースがありません。母家の居住用家屋の機能の補完として、寝室を確保することを目的とした、母家と2つ合わせて一の家屋という解釈です。
 母屋に居住していたのならば、相続人の長男・次男は父と同じ居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者に該当するという結論になります。

《質問》

 前提のように、相続人の長男・次男が相続するのであれば、小規模宅地の特例は適用されますでしょうか。

キャプチャ339

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小規模宅地等の特例の適用の可否について:ケース1

《質問》

 被相続人甲は下図のとおり甲所有の920㎡の土地の上にA家屋とB家屋を所有しています。
 A家屋には甲と甲の配偶者が居住しています。
 B家屋には甲の長男乙が居住しています。
 甲の死亡1週間後に甲の配偶者も亡くなりました。
 甲の相続人は配偶者と長男乙のみです。
 今回、甲の相続により乙は上記土地家屋を相続します。
 この場合、甲乙が生計一の場合、B宅地について小規模宅地の特例が適用できると思いますが如何でしょうか。
 A宅地については甲死亡時には甲の配偶者が生存していたので乙は家なき子とはならず、相続で取得したA宅地については小規模宅地の特例が適用できないと思いますが如何でしょうか。
 また、生計一の判断はどのような基準で判断すればよいでしょうか。
 ちなみに乙は個人で建設業を営み、父甲に専従者給与を支払っていました。
 また、上記土地については地積規模の大きな宅地として評価しても良いでしょうか。

キャプチャ334

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テニスコート敷地の評価及び小規模宅地の特例について

《質問》

 テニスコート及びクラブハウスの敷地について(図面参照)
 テニスコート及びクラブハウスはそれぞれ別の契約書にて、同族会社へ貸付を行い、同族会社がテニスクラブの運営を行っております。

[評価単位・評価方法]
 クラブハウスの敷地283㎡は宅地であり、テニスコートの敷地3281㎡は雑種地であるためそれぞれ別評価単位として評価します。
 クラブハウスの敷地は、家屋を同族会社へ賃貸しているため、貸家建付地とします。
(賃料が土地&建物の年間固定資産税の1.5倍ほどですが、そもそも賃貸借といえるのでしょうか?)
 テニスコート敷地は、貸し付けている雑種地であるが、その芝・防球ネット・照明設備などの賃貸している設備はすべて個人所有であるため、賃借権の控除は行いません。
 また、造成費の控除も行わないため、シンプルな自用地評価とします。
※不動産登記事務取扱手続準則69条(9)で「テニスコートについては、宅地に接続するものは宅地とし、その他は雑種地とする」と定められていますが、本件のテニスコート敷地は「宅地に接続するもの」には該当しないでしょうか?

[小規模宅地]
 クラブハウスの敷地及びテニスコート敷地のいずれも、400㎡まで特定同族会社事業用宅地等の適用ありとし、有利な方から適用します。
 それぞれ賃貸借と呼べるかがポイントかと思いますが、いかがでしょうか?
 平成29年3月3日の国税不服審判所の裁決で、固定資産税の半分以下でテニスコートを同族会社へ賃貸していたものは、実態は使用貸借とされていますが、本件は1.5倍ほどは取っているので問題ないでしょうか?ただし周辺相場よりは安い賃料であると思います。
 他にも考えうる論点などがあれば、ご教示ください。
 10億超の土地となり、税務調査が入ると想定しております。

テニスコート及びクラブハウス敷地

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確定申告に当たっての注意すべき事項⑸

【措法39条】相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

1 特例の概要
 相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合に、譲渡した資産の取得費を一般の方法により計算した取得費に一定額を加算する特例です。

2 適用可能期間の条件
 相続の開始があった日の翌日から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間の譲渡について適用されます(措法39①)。
★ 取得費加算の特例が適用可能期間内か否かは、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」の相続開始日と譲渡した年月日等により確認します。
★ 物納をして、措法40条の3≪物納による譲渡所得等の非課税≫の規定の適用がない物納許可限度額を超える金額(過誤納金として還付を受ける金額)について譲渡所得の課税の対象となる場合は、要件を具備すれば、この特例の規定の適用を受けることができます。
 また、長期保有の土地等の場合は、「優良住宅地の造成等のために土地を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」(措法31条の2)の規定の適用を受けることもできます。

3 適用対象資産
① 特例の対象となるのは、譲渡所得(所法33)に限ります(措法39①)。
⇒山林所得には、適用できません(立木に注意)(所法33②二)。
② 特例の対象となるのは、相続等で取得した部分のみです。
⇒相続等により取得した部分以外の部分がないか確認します。

4 取得費加算の計算
 相続等により取得した土地等を譲渡した場合には、その譲渡をした土地等に対応する相続税に相当する金額を取得費に加算することとされ、次の算式のとおり、取得費加算の計算を行います。
算式

★ 上記算式中の「その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した土地等の相続税評価額」には、相続時精算課税の適用を受けて、相続財産に合算された贈与財産である土地等や、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した土地等が含まれ、相続開始時において棚卸資産その他これに準ずる資産であった土地等は含まれません(措法39①、所法33②一)。

5 相続税額に異動が生じた場合
 更正等により相続税額に異動が生じた場合には、異動後の相続税額を基として取得費加算額の計算を行います(措令25の16②、措通39- 9 、39-10)。
★ 相続税の申告書提出後、更正の請求に基づく更正や修正申告等により、相続税額が異動している場合がありますので注意が必要です。

6 代償金の支払がある場合
 代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合は、措通39- 7に定める計算を行う必要があります。
★ 代償金を支払って取得した場合の取得費加算額の計算は、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」裏面の算式により行います。

7 譲渡した資産のうち相続等による取得部分と自己取得部分がある場合
 譲渡した資産のうち相続等による取得部分と自己取得部分がある場合には、相続等により取得した資産のみが適用対象となります。
★ 共有物件である場合のほか、過去に贈与等により持分移転がある場合に注意する必要があります。

【措法41条の5】居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

1 特例の概要
 一定の居住用財産の譲渡損失の金額については、他の所得との損益通算が認められ、また、通算後の譲渡損失については3年間の繰越控除ができる特例です。

2 特例を受ける条件
 買換資産取得のための住宅借入金等の償還期間は10年以上であること(措法41の5①⑦一、四)
 また、繰上返済をした後も借入金の償還期間が10年以上である必要があります(措通41の5 -17)。
 措法41条の5の繰越控除の適用(譲渡の年の翌年以降)に当たっては、買換資産に係る「住宅借入金等の残高証明書」により、償還期間を確認します。
(注)申告書には,買換資産の「住宅借入金等の残高証明書」の添付が必要です(措法41の5⑤,措規18の25②)。
⑵ その年の前年以前3年内において、他の居住用財産の譲渡損失の金額について、この特例の適用を受けていないこと(措法41の5①)。
⑶その年又はその年の前年以前3年内において、措法41の5の2第1項の規定の適用を受けていないこと(措法41の5⑦一)。
⑷ その年の前年又は前々年の資産の譲渡につき居住用財産に係る特例(措法31の3①、35①(35③による適用を除きます。)、36の2又は36の5)の適用を受けていないこと(措法41の5⑦一)。
⑸ 繰越控除の適用を受ける年分については、その年分の合計所得金額(後記【その他】1 参照)が3,000万円を超えないこと(措法41の5④)。

3 住宅借入金等特別控除との関係
 措法41条の5の規定と住宅借入金等特別控除は重複して適用を受けることができます。

4 純損失との関係
 この特例における譲渡損失の金額については、純損失の繰戻し還付制度の適用がありません(措法41の5⑨)。

【措法41条の5の2】特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

1 特例の概要
 所有期間が5年超の居住用家屋又は土地を譲渡した場合、一定の譲渡損失については損益通算、3年間の繰越控除ができる特例です。

2 特例を受ける条件
⑴ 譲渡資産に係る一定の住宅ローン等があること
⑵ その年の前年以前3年内において、他の居住用財産の譲渡損失の金額について、この適用を受けていないこと(措法41の5の2①)。
⑶ その年又はその年の前年以前3年内において、措法41の5第1項の規定の適用を受けていないこと(措法41の5の2⑦一)。
⑷ その年の前年又は前々年の資産の譲渡につき居住用財産の譲渡に係る特例(措法31の3①、35①(35③による適用を除きます。)、36の2又は36の5)の適用を受けていないこと(措法41の5の2⑦一)。
⑸ 繰越控除の適用を受ける年分については、その年分の合計所得金額が3,000万円を超えないこと(措法41の5の2④)。

3 損益通算及び繰越控除可能譲渡損失限度額
 措法41条の5の規定と異なり、次のとおり、損益通算及び繰越控除可能譲渡損失の限度額の計算が必要です。
ローン残高

4 純損失との関係
 この特例における譲渡損失の金額については、純損失の繰戻し還付制度の適用がありません(措法41の5の2⑨)。

5 住宅借入金等特別控除との関係
 措法41条の5の2の規定と住宅借入金等特別控除は重複して適用を受けることができます。

【その他】

1 合計所得金額について
⑴ 合計所得金額とは、所法70条≪純損失の繰越控除≫及び所法71条≪雑損失の繰越控除≫の規定を適用しないで計算した場合における所法22条≪課税標準≫に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいいます(所法2①三十イ(2))。
⑵ 合計所得金額の計算に当たっては、措置法に規定する課税長期譲渡所得金額又は課税短期譲渡所得金額を計算する場合における特別控除額の控除前の金額となります(所基通2 -41)。
 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用している場合には、繰越控除前の金額で判定します(措法41の5⑫一、措法41の5の2⑫一)。

2 合計所得金額により適用が制限される取扱い
 以下の主な制度、特例の適用に当たっては、適用を受ける者の合計所得金額に制限があります。
・ 寡婦控除(所法2①三十)…500万円以下
・ ひとり親控除(所法2①三十一)…500万円以下
・ 配偶者控除及び配偶者特別控除(所法83①,83の2①)…1,000万円以下
・ 基礎控除(所法86①)…2,500万円以下
※ 納税者本人の合計所得金額に応じて控除額が異なります。
・ 住宅借入金等特別控除(措法41①)…3,000万円以下
・ 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除(措法41の5④)…3,000万円以下
※ 損益通算については合計所得金額に制限はありません。
・ 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除〔措法41の5の2④〕…3,000万円以下
※ 損益通算については合計所得金額に制限はありません。
・ 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2②一)…2,000万円又は1,000万円以下
※ 贈与と同年中に旧住居を譲渡している場合には特に注意が必要です。

3 生活に通常必要でない資産の譲渡
 総合譲渡所得であっても、主として、個人の趣味、娯楽等、生活に通常必要でない資産の譲渡損失の金額は、他の所得との損益通算はできません(所法69②、所令178①)。
★ 平成26年度税制改正により、生活に通常必要でない資産の範囲にゴルフ会員権やリゾート会員権等が含まれることになりました。
 当該改正により、ゴルフ会員権等の譲渡により生じた損失については、他の所得との損益通算はできません。

4 登記事項証明書の添付省略
 令和3年7月1日以降、譲渡所得の特例の適用に係る申告書提出時に不動産識別事項等※の提供があった場合は、登記事項証明書の添付が不要となります(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律11、同法施行令5)。
※不動産識別事項等とは次に掲げる事項をいいます。
① 土地にあっては、土地の所在する市区町村、字及び当該土地の地番(不動産登記法第2条第17号に規定する地番をいいます。以下同じ。)又は当該土地の不動産番号(不動産登記規則第1条第8号に規定する不動産番号(13桁)をいいます。以下同じ。)
② 建物にあっては、建物の所在する市区町村、字、土地の地番及び当該建物の家屋番号(不動産登記法第2条第21号に規定する家屋番号をいいます。)又は当該建物の不動産番号

確定申告に当たっての注意すべき事項⑷

2⃣ 譲渡所得の特例関係
【所法58条】固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例

1 特例の概要
 所有していた固定資産を他の者の所有していた固定資産と交換した場合、課税上、譲渡はなかったものとみなす特例です。

2 特例を受ける条件
 当事者双方が、1年以上所有していた固定資産が特例の対象となりますが、交換のために取得したと認められるものは対象となりません。
⑵ 交換譲渡資産と交換取得資産は同種の資産(土地と土地、建物と建物)でなければなりません。また、交換取得資産は交換譲渡資産の交換直前と同じ用途(宅地は宅地、農地は農地等)に供さなければなりません。
⑶ 交換差金は時価の高い方の20%以内でなければなりません(交換差金については課税されます。)。

3 交換差金の取扱い
 ○ 資産の一部を交換とし、他の部分を売買とした場合
 一の資産につき、その一部分については交換とし、他の部分については売買としている場合には、売買代金は交換差金となります(所基通58- 9)。
 土地を交換し、その土地上の建物を売買した場合には、この取扱いの適用はありません。
 ○ 交換差金の譲渡所得の取得費
 交換差金に係る譲渡所得金額を計算する場合に、取得費として控除できるのは、交換差金に対応する部分のみです。
 この場合の概算取得費は,交換差金の5%となり、交換譲渡資産の価額の5%として計算することはできません。

【措法31条の2】優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

1 特例の概要
 国、地方公共団体等への譲渡でこの特例を受けられる場合には、税率は、課税長期譲渡所得金額が2, 000万円以下の部分は所得税10%(住民税4%)、2, 000万円超の部分は所得税15%(住民税5%)に軽減されます。

2 特例を受ける条件
 措法31条の2の対象となるのは長期保有(譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超えるもの)の土地等のみです。建物、建物附属設備、構築物については、適用を受けることはできません。

3 特例適用が受けられない場合
 その譲渡について、措法33条から33条の4まで、34条から35条の3まで、36条の2、36条の5、37条、37条の4から37条の6まで、37条の8又は37条の9の規定の適用を受ける場合は、この規定の適用を受けることはできません(揩法31の2④)。

4 超過物納の取扱い
 物納について許可があり、当該物納財産の価額のうち物納許可限度額を超える金額(過誤納金として還付を受ける金額)は、揩法40条の3≪物納による譲渡所得等の非課税≫の規定の適用がないことから譲渡所得の課税の対象となりますが、物納財産が長期保有の土地等である場合には、国等に対する土地等の譲渡に当たるため、措法31条の2の規定の適用を受けることができます。
★ 適用要件を満たせば相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(措法39条)の規定の適用も受けることができます。

【措法31条の3】居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

1 特例の概要
 一定の居住用財産を譲渡した場合の税率は、課税長期譲渡所得金額が6, 000万円以下の部分は所得税10%(住民税4%)、6, 000万円超の部分は所得税15%(住民税5%)と軽減されます。

2 特例を受ける条件
 居住用財産である土地、建物が、ともに譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えていること(令和3年の場合、平成22年12月31日以前に取得したもの)が必要です。登記事項証明書等により所有期間を確認します。
(注)建物及びその敷地である土地を譲渡した場合で、いずれか一方の所有期間が10年以下である場合は、そのいずれも措法31条の3の規定の適用を受けることができません(措通31の3-3)。

3 敷地のうちに所有期間が異なる部分がある場合
 居住用家屋とともにこれらの家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡があった場合において、当該土地等のうちにその年の1月1日における所有期間が10年を超える部分とそれ以外の部分がある場合には、その土地等のうち所有期間が10年を超える部分のみが、この特例の対象となります(措通31の3-4)。

4 他の特例との関係
 措法35条①(3,000万円の特別控除)との併用はできますが、買換え特例(措法36の2)や交換特例(措法36の5)の適用を受ける場合には、この特例の適用はありません。

【措法31条の3、措法35条①】居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例・居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円控除)

 両特例を適用するに当たっての注意事項は次のとおりです。
1 店舗併用住宅等の場合の適用範囲
 店舗併用住宅等について、居住用以外の部分は措法31条の3及び35条1項の規定の適用を受けることはできません。
 措通31の3-7により計算した居住の用に供している部分がそれぞれ家屋又は土地等のおおむね90%以上である場合は、当該家屋又は当該土地等の全部がその居住の用に供している部分に該当するものとして取り扱って差し支えありません(措通31の3-8、35- 6)。

2 居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合
 居住用家屋の所有者(例えば父)とその敷地の所有者(例えば子)が異なる場合において、父と子が同居し生計を一にする等の状況を満たした家屋の譲渡に譲渡損失が生じ、敷地の譲渡に譲渡益が生じたときに、敷地の所有者が措法31条の3又は35条1項の規定の適用を受けた場合には、家屋の所有者に係る譲渡損失について措法41条の5第1項又は41条の5の2第1項の規定の適用を受けることはできません(措通31の3 -19、35- 4 )。

3 居住の用に供されなくなったものの譲渡
 居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡していない場合は、特例の適用を受けることができません(令和3年分の譲渡所得については、平成30年1月2日以後に居住の用に供されなくなったものが適用可能となります。)。
 建物を取り壊した場合は、取り壊し後、その敷地について、貸付けその他の用途に使用せず、その取り壊した日から1年以内に売買契約が締結され、かつ、居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡をすれば、特例の適用を受けることができます(揩通31の3-5、35-2)。
 また、取り壊された年の1月1日における家屋及び土地等の所有期間が10年を超えていなければ、措法31条の3の規定の適用を受けることができません(措通31の3-5(注))。
★ 居住用に供されなくなった日を住民票等により確認します。
★ 居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合であっても、居住の用に供されなくなってから相続により取得した場合、譲渡者白身が所有者として居住の用に供していない場合は、特例の適用を受けることができません。

4 同一敷地内に居住用と非居住用の2棟の建物がある場合
 同一敷地内に居住用と非居住用の2棟の建物がある場合には、居住用敷地に係る面積は、原則として、各棟ごとの敷地の利用状況により区分しますが、それができない場合には、各建物の一階の床面積の比によりあん分することも可能で、敷地面積をあん分する場合は、各建物の総床面積を基に計算しません。

5 住宅借入金等特別控除との関係
 措法31条の3、35条1項の規定と住宅借入金等特別控除を重複して適用を受けることはできません(措法41⑳、㉑)。
 なお、措法36条の2、36条の5、37条の5の規定の適用についても同様です。
⑵ 令和3年の譲渡について措法31条の3、35条1項の規定の適用を受ける場合は、同年、令和4年又は5年に居住を開始した家屋について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません(令和3年の譲渡について措法36条の2、36条の5、37条の5の規定を適用した場合についても同様です。)(措法41⑳)。

⑶ 令和3年の譲渡に措法31条の3、35条1項の規定の適用を受ける場合で、その適用を受ける資産以外の家屋について、平成30年、令和元年又は令和2年に入居し、住宅借入金等特別控除の適用を受けている場合には、令和3年分の所得税の確定申告期限までに、既に住宅借入金等特別控除の適用を受けた各年分の所得税について、適用額を「0」とする修正申告書又は期限後申告書(「義務的修正申告書等」といいます。)を提出する必要があります(措法36条の2、36条の5又は37条の5の規定を受ける場合についても同様です。)(措法41の3①)。
《参考》
 住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用財産そのものを譲渡した場合は、当該譲渡に措法35条1項(同条3項の規定により適用する場合を除きます。)の規定の適用を受けても、前年以前の住宅借入金等特別控除について義務的修正申告等を行う必要はありません(ただし、譲渡の年以降は、その年末に居住していないこととなるため、住宅借入金等特別控除を適用することはできません。)。
  イメージ図(図解 所得税 大蔵財務協会)
キャプチャ税額

【措法35条③】被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除(3, 000万円控除)

1 特例の概要
 相続人が、被相続人居住用家屋及びその敷地等を相続又は包括遺贈により取得し、一定の譲渡をした場合に、3,000万円控除の適用を受けることができます。
★被相続人居住用家屋又はその敷地等のいずれかのみを取得した場合には、この特例は適用できません。例えば、相続人(子)所有の土地に、被相続人(父)が建物を所有し居住用としていた場合には特例対象とはなりません(措通35- 9)。

2 被相続人居住用家屋とは
 ① 被相続人の居住の用に供されていた家屋であること(措法35④)
 ② 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
 ③ 区分所有建物でないこと
 ④ 相続開始の直前(特定事由※により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合には、当該特定事由により居住の用に供されなくなる直前)において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
 ※特定事由とは、介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人又は介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当する被相続人が一定の老人ホーム等に入居又は入所していることなどをいいます(措法35④、措令23⑥、措規18の2③)。

★ 特定事由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合、被相続人の居住の用に供されなくなった時から、相続開始の直前まで引き続き被相続人居住用家屋が被相続人の物品の保管その他の用に供されている必要があります(措令23⑦一)。
★ 家屋に同居人又は賃借人がいる場合には、この特例は適用できません(措通35-12)。
★ 特定事由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合の本特例の適用は、平成31年4月1日以後の譲渡に限ります。

3 特例対象となる譲渡要件
 相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合に、この特例の適用を受けることができます(措法35③)。

4 譲渡の対価の額の要件
⑴ 本特例を適用しようとする譲渡の対価の額が1億円を超える場合、適用はありません(措法35③)。
⑵ 譲渡の対価の額と適用前譲渡・適用後譲渡に係る譲渡の対価の額の合計が1億円を超える場合、その適用はありません(措法35⑤⑥)。
★ 適用前譲渡・適用後譲渡とは、居住用家屋取得相続人(被相続人居住用家屋又はその敷地のいずれかを相続又は包括遺贈により取得した者)が行う揩法35⑤に規定する対象譲渡資産一体家屋等(相続開始の直前において一体として被相続人の居住の用(特定事由により、被相続人居住用家屋が相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合には、当該被相続人居住用家屋が被相続人の物品の管理その他の用)に供されていた家屋又はその敷地)の譲渡をいい、対象譲渡資産一体家屋等に含まれるか否かの判定には、併用住宅の店舗部分や相続していない部分など、特例の対象とならない部分も含みます(措通35-22)。
★ 共有者である居住用家屋取得相続人とともに譲渡した場合、共有者の譲渡は適用前譲渡に該当するため、その共有者の譲渡価額も含めて1億円を超えるかどうかの判定を行います(措通35-20)。

【措法36条の2、措法36条の5】特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例

1 特例の概要
 所有期間及び居住用に供している期間が10年超の居住用資産を譲渡し、代わりに居住用資産を取得した場合、譲渡価額より買換価額の多い時には課税対象とはなりません。買換価額より譲渡価額が多い場合には差額が課税対象となります。交換した場合には、時価の差額に対して課税されます。交換譲渡資産の時価よりも交換取得資産の時価が多い時は課税されません。

2 譲渡資産の対価の額等の要件
 譲渡資産の譲渡に係る対価の額又は交換譲渡資産の価額に相当する金額が1億円を超える場合には、特例の適用を受けることはできません(措法36の2①、36の5-)。
★ 譲渡資産の譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかの判定は、譲渡資産が共有の場合には、各所有者ごとの譲渡対価により、また、店舗兼住宅等及びその敷地の用に供されている土地等である場合には、その居住の用に供している部分に対応する譲渡対価により判定します(措通36の2-6の2 ⑴⑵)。
★ 譲渡資産と一体として居住の用に供されていた家屋又は土地等を、譲渡資産を譲渡した年及びその年の前後2年以内に譲渡(贈与も含みます。)している場合には、これらの譲渡対価の額(贈与又は著しく低い価額(時価の2分の1に満たない金額)による譲渡の場合には、時価相当額が譲渡対価の額となります。)も含めて1億円を超えるかどうかの判定を行います(措法36の2③④、措令24の2⑨、措規18の4④、措通36の2-6の4)。

【措法33条の4】収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除(5,000万円控除)

1 特例の概要
 収用等により資産を譲渡した場合、事業施行者等から最初に買取りの申出があった日から6ヶ月以内に譲渡が行われる等一定の要件に該当し、「収容等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」や「交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例」の適用を受けないことを条件に譲渡所得の金額から5,000万円を控除する特例です。

2 2年以上にわたって収用等が行われた場合の特例適用
 同一事業で2年以上にわたって収用等が行われた場合には、最初の年に譲渡した資産にのみ適用されます(措法33の4③二)。

3 「最初に買取りの申出を受けた者」とは
 最初に買取り等の申出を受けた者(その者から相続又は遺贈(死因贈与を含みます。)により申出を受けた資産を取得した者を含みます。)のみが適用を受けることができます(措法33の4③三、措通33の4-6)。
 したがって、親に買取り等の申出がされた後、子が当該物件の贈与を受け、対価補償金を取得した場合には5, 000万円控除の適用を受けることはできませんが、最初に申出を受けた者が死亡した場合で、その者から当該申出を受けた資産を相続又は遺贈(死因贈与を含みます。)により取得した場合には5, 000万円控除の適用を受けることができます(措法33の4③三、措通33の4-6)。

4 他の特例との関係
 「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」(措法31条の2)の規定を重複して適用を受けることはできません(措法31の2④)。

【措法34条,措法34条の2】特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(2,000万円控除)・特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(1,500万円控除)

 1 特例の概要
 前者は、地方公共団体等が土地区画整理事業として行う公共施設の整備改善や宅地造成事業等のために土地等が買い取られた場合等一定の要件に該当するものについて、譲渡所得から2,000万円を控除する特例です。
 後者は、特定住宅地造成事業等のため土地等を譲渡した場合に一定の要件に該当するものについて、譲渡所得から1,500万円控除する特例です。

2 同一事業で2以上の年にわたって買い取られた場合の特例適用方法
 同一事業で2以上の年にわたって買い取られた場合には、2,000万円控除は、最初の年に買い取られた土地等にのみ適用され(措法34③)、また、1,500万円控除は、一定の事業については、最初の年に買い取られた土地等にのみ適用されます(措法34の2④)。
★ 1,500万円控除の連年適用
(例)2以上の年にわたって公拡法(公有地の拡大の推進に関する法律)6条1項の協議に基づき地方公共団体等に買い取られた場合(措法34の2②四)には、1,500万円控除の連年適用が可能です。
※ 1,500万円控除について、連年適用が可能な事業か否かは条文で確認が必要です。

3 他の特例との関係
 「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」(措法31条の2)の規定を重複して適用を受けることはできません(措法31の2④)。

【措法35条の2】特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(1,000万円控除)

1 特例の概要
 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内にある土地又は土地の上に存する権利を譲渡した場合には、長期譲渡所得の金額から1,000万円を控除する特例です(措法35の2①)。建物等に係る譲渡所得については、この特例は適用できません。
 また、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済、所令120条の2第2項5号に規定する所有権移転外リース取引により取得した土地等については、この特例は適用できません(措法35の2①、措令23の2②)。

2 譲渡資産の所有期間の要件
 譲渡をした日の年の1月1日における所有期間が5年を超えている必要があります。

【措法35条の3】低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(100万円控除)

1 特例の概要
 低未利用土地等で所有期間5年を超えるものを譲渡した場合には長期譲渡所得の金額から100万円を差し引く特例です。したがって、建物等に係る譲渡所得については、この特例は適用できません。
 「低未利用土地」とは、居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地をいいます(土地基本法13④)。

2 特例を受ける条件
 譲渡の対価の額(低未利用土地等の譲渡とともにした当該低未利用土地の上にある建物等の譲渡の対価を含む。)が500万円以下であること(措法35の3②)。
⑵ 譲受人は譲渡後に当該低未利用土地等の利用をすること
⑶ 令和2年7月1日以降の譲渡であること

【措法37条】特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例

1 特例の概要
 事業用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡し、一定の期間内に特定の地域内にある土地等の特定資産を取得し、その取得の日から1年以内に事業用に供した時は課税を繰り延べる特例です。

2 特例を受ける条件
⑴ 面積制限について
 買換資産の土地については、面積制限(原則、譲渡土地面積の5倍)があることに注意が必要です(措法37②、措令25⑨)。面積制限を超えているときは、その超えた部分には適用できません(措法37②)。
 なお、譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超える国内にある土地等、建物又は構築物から国内にある土地等、建物又は構築物への買換えにおける、買換資産の土地等の範囲は、事務所等の一定の施設の敷地の用又は一定の駐車場の用に供されるもので、その面積が300㎡以上のものに限られます(措法37①四)。

⑵ 建物のみの譲渡の場合
 建物のみを譲渡した場合には、土地を買換資産とすることができません。
(土地0㎡×5倍=0㎡)

⑶ 「事業」の範囲
 事業には事業に準ずるものも含まれます。例えば事業に称するに至らない不動産の貸付で、相当の対価を得て継続的に行われるものをいいます。

⑷ 譲渡資産の「譲渡」の範囲
 次の譲渡は特例適用の範囲から除外されています。
 ○ 贈与、交換、出資、
 ○ 代物弁済(金銭債権の弁済に代えてするもの)による譲渡
 ○ 収用等による譲渡(措法33)
 ○ 交換処分等による譲渡(措法33の2)
 ○ 換地処分等による譲渡(措法33の3)

⑸ 買換資産の「取得」の範囲
 次の「取得については買換資産の「取得」の範囲から除かれています。
 ○ 贈与、交換による取得
 ○ 所有権移転外リース取引による取得
 ○ 代物弁済(金銭債権の弁済に代えてするもの)による取得