平成30年 確定申告直前誤りやすいポイント解説(資産税)

Ⅰ譲渡所得関係

1 取得費について
 買入時の契約において建物と土地の価額が区分されていない場合には、「建物の標準的な建築価額表」を基に建物の取得価額を計算しても差し支えない。
 (消費税導入後、不動産業者等から買い入れた場合には、原則的に建物に係る消費税が表示されていることから、建物と土地の価額が区分されている。)
 なお、実際の取得価額が不明な場合には、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することが原則であるが、建物については、前記と同様の方法によっても差し支えない。
 しかし、土地について、「市街地指数」等によって買入時の価額を推計することにはリスクが伴うため、慎重に検討する必要がある。
(参考情報・・・平成12年11月16日裁決)

2 収用補償金の所得区分について
 公共事業等の収用補償金は、支払名目により所得区分が異なるので、内容を吟味して所得区分を判定する必要がある(参考資料参照)。
 なお、経費補償金等について課税の延期を行う場合には、「収益補償金等の課税延期申出書」の提出が必要となる。

3 重複適用できない特例関係について
 重複して適用できない特例があるため、各種特例を適用する際には留意する必要がある。
(1)居住用財産の買換え(交換)特例(措法36の2、措法36の5)と居住用財産を譲
渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(2)住宅借入金等特別控除の特例(措法41)と居住用財産の買換え(交換)の特例(措法36の2、揩法36の5)若しくは特別控除の特例(措法35①)又は居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(3)被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)と相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例(措法39)

4 被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例について
(1)この特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、被相続人が主として居住の用に供していた「一の建築物」に限られるため、被相続人が主として居住の用に供していた母屋とは別の建築物(離れ、倉庫、車庫等)及びその敷地に対応する部分(面積)については、母屋との一体利用の有無に関わらず、この適用対象から除かれる。
(2)被相続人居住用家屋が一定の耐震基準を満たしていない場合には、その敷地の譲渡日(原則として引渡日とし、契約日を譲渡日として申告した場合は契約日。)までに当該家屋の取壊しを了していない限り、この特例の適用を受けることはできない。
 ※譲渡物件の引渡後に買主の負担で建物を取り壊す場合は、特例の適用受けることはできない。
(3)被相続人居住用家屋に被相続人以外の者が居住していた場合(相続開始後も含む)は、この特例を受けることはできない。
(4)この特例を受ける場合、「特例対象譲渡物件」部分については「相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例」(措置法第39条)の特例を受けることはできないが、「特例対象譲渡物件」以外の部分については、同一に譲渡した場合であっても措置法第39条の適用を受けることができる。
(5)この特例の適用を受けようとする場合、被相続入居住用家屋又は当該家屋の敷地を相続により取得した他の相続人に対し、この特例の適用を受ける譲渡をした旨、譲渡した日等を通知しなければならない。

5 特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除について
(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した土地等を譲渡した場合には、1, 000万円の特別控除の適用がある。
(2)この取得について、譲渡人の配偶者、直系血族、生計を一にしている親族、事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者と生計を一にしている親族、等(措置法施行令第23条の2第1項参照)からの取得は除かれている。
また、取得の原因について、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済、等(措置法施行令第23条の2第2項参照)による取得は除かれている。
(3)この特例の適用は、土地又は土地の上に存する権利(借地権等)に限られていることから、建物等の譲渡による譲渡所得には適用されない。
したがって、土地及び建物を一括して譲渡した場合には、当該譲渡による譲渡所得のうち、土地の譲渡に対応する部分についてのみこの特例の適用がある。

6 相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例について
(1)物納した土地及び物納申請中の土地については、相続等により取得した土地等から除かれる。
(2)超過物納により過誤納金を受領した場合、この特例の適用がある。
(3)代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合の取得費加算の計算については、措置法通達39-7によることに留意する。
 なお、代償分割により取得した土地を譲渡してもこの特例の適用はない。
(4)措法第39条の計算における「相続税の課税価格」とは、相続税の申告書第1表①欄「取得財産の価額」に②欄「相続時精算課税適用財産の価額」と⑤欄「純資産に加算される贈与財産の価額」を加えた価額である(債務控除は行わない)。

7 株式の譲渡について
 「源泉徴収口座」による株式の譲渡を申告した場合、所得金額が増加することから、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料、介護保険料が増加する。この場合、申告した後において申告しないこととする変更はできないため、特に留意する必要がある。

Ⅱ贈与税関係

1 直系尊属(父母又は祖父母等)からの贈与について
 特例税率の適用に当たって、受贈者の年齢判定の基準日は、その年(贈与をした年)の1月1日現在において20歳以上の者であることに留意する。

2 相続時精算課税の特例について
(1)年齢判定の基準日こついて、贈与者、受贈者ともに、贈与を行った年(受けた年)の1月1日現在において贈与者は60歳以上、受贈者は20歳以上であることに留意する。
(2)特例を受ける場合には、宥恕規定がないため、申告期限内に申告書、選択届出書及び添付書類を提出する必要がある。
 2年目以降にこの特例を受ける場合にも、宥恕規定がないため、期限内申告を行わないと特別控除の残額があっても控除することはできない。
(3)この特例の適用を受けて申告した財産の評価に誤りがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産について記載があることから、正しい控除を受ける金額の記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認める場合には、その記載をした修正申告書の提出があったときに限り、特別控除の適用を受けることができる(相続税法第21条の12第3項)。
 更正の請求においても同様の解釈ができる。
(4)特定贈与者から贈与を受けた財産の一部を申告し、一部について申告漏れがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産についての記載がないことから、特別控除の適用はない。したがって、特別控除の額は期限内申告の額のままで、修正申告をする必要がある。

            主な収用補償金の課税区分一覧表
  補償金の種類 税法適用上の区分   所 得 区    摘  要
土地の取得に係る補償 対価補償金 分離譲渡所得 棚卸資産を除く。
土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償
残地保証
建物等の移転料 建物移転料 移転補償金 一時所得 実際に建物等を取り壊した場合には、対価補償金として分離譲渡所得とすることができる。ただし、棚卸資産を除く。
工作物移転料
動産移転料  
仏壇・神棚移転料  
仮住居補償  
仮倉庫補償  
仮車庫補償  
移転雑費 移転先等の選定に要する費用 交付の目的に従って支出した場合には、総収入金額に算入しない。
法令上の手続きに要する費用
転居通知費・移転旅費
その他雑費 補償の実体的な内容に応じて判定。
立木 庭木 移転補償金 一時所得 伐採をした場合は総合譲渡所得。
収穫樹
用材林 対価補償金 山林所得 所有期間が5年を超えるもの。
就業不能補償 収益補償金 事業又は雑所得  
営業補償  
特産物補償  
天恵物補償  
家賃減収補償 不動産所得  
墳墓改葬料 精神補償金 非課税  
弔祭料  
祭祀料(遷座祭典料)  
飲料水補償 その他の補償金 一時所得  
し尿処理補償

《参考資料》

番号法施行規則の改正についてのお知らせ

平成29年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし

建物の標準的な建築価額表

特例の適用を受ける場合に申告書に添付する書類

土地や建物などの譲渡所得について主な特例の適用を受ける場合の 申告書添付書類チェックシート

被相続人居住用家屋等確認申請書

 

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