相続開始前に空室の期間があった場合における、貸付事業用の小規模宅地等の特例の適用の可否について

《質問》

・ 相続開始日 : R4.2.7
・ 自宅(3階建て)の3階部分が賃貸用
・ R2.12から空室で、R4.1から新たな賃借人に賃貸
・ 退去後、速やかに新たな賃借人の募集を開始
・ 空室の間、他の用途に供していない

 13か月の空室期間がありますが、退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、相続開始日においては賃貸されていますので、租税特別措法通達69の4-24の3における「一時的に賃貸されていなかったと認められるとき」に該当し3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等に該当せず、貸付事業用の小規模宅地等の特例を適用して差し支えないでしょうか?

【論点①】相続開始日において空室の場合(小規模宅地等の特例の適用)との比較について
 租税特別措法通達69の4-24の3において、「一時的に賃貸されていなかったと認められるとき」の例示として、「(1)継続的に賃貸されていた建物等につき賃借人が退去をした場合において、その退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき」と示されていますが、速やかに募集が行われており、相続開始日において賃貸されていれば、その空室の期間は問われない、もしくは何年間も募集しているなど募集期間として相当な期間を超過していなければ問題ない、と考えてよいでしょうか?

(根拠)
 租税特別措法通達69の4-24の2において、相続開始日において空室であった場合も一時的に賃貸されていなかったと認められる場合は、小規模宅地等の特例が適用できるとされており、資産課税課情報第9号(令和3年4月1日)の事例6において、「空室となった直後から不動産業者を通じて新規の入居者を募集しているなど、いつでも入居可能な状態に空室を管理している場合は相続開始時においても被相続人の貸付事業の用に供されているものと認められる」と参考で示されています。相続開始日において空室の場合と、相続開始前において空室の期間がある場合とで、取り扱いが異なることとなるのは違和感がありますので、相続開始前において空室の期間がある場合も同様の基準で判断すべきと考えました。

【論点②】貸家建付地評価の一時的に賃貸されていなかったと認められる期間との比較について
 財産評価基本通達26において「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」も貸家建付地評価ができると示されており、タックスアンサーNo.4614において、「空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること」と具体的な期間も示されています。一方で小規模宅地等の特例の場合は、【論点①】のとおり具体的な期間は示されておらず、いつでも入居可能な状態に空室を管理している場合といった要件しか示されていません。貸家建付地評価の場面と、小規模宅地等の特例の適用の場面で、「一時的に賃貸されていなかった」の認定基準は異なると考えてよいでしょうか?

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為替差損益の課税関係

《質問》

 個人Aはカナダに土地建物を取得し貸付けをしています。
 次のような場合の課税関係(為替差損益の所得区分等の取扱い)はどのようになるのかご教示願います。
 ケース1
2017年 50万カナダ$(TTM 80円)で土地建物を自己資金で取得
2022年 50万カナダ$(TTM 100円)で 土地建物を売却した場合
(減価償却費・譲渡費用等は考慮しない前提です。)
 ケース2-1
2017年 50万カナダ$(TTM 80円)で土地建物を取得
 取得にあたり30万カナダ$を借入し、取得資金に充てました。
その後、毎月2500カナダ$(返済時 TTM 85円)の元本返済、利息とともに支払いを行っています。
 ケース2-2
2022年 70万カナダ$(TTM 100円)で売却することになり、売却代金から外貨で借入金の残額15万カナダ$を返済した場合

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事前確定届出給与について

《質問⦆

 通常は、定時株主総会で役員賞与を決議して、「事前確定届出給与に関する届出書」を出す流れです。
 下図のように定時株主総会前の臨時株主総会で新たに翌期の役員賞与を決議して、1月以内に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出すれば、翌期に届け出通りに支給して損金算入は認められるでしょうか。なお、臨時改訂事由には該当しません。

・決算期は令和2年4月1日から令和3年3月31日
・令和2年3月26日の臨時株主総会で、令和2年9月、12月、令和3年3月の役員賞与を決議
・「事前確定届出給与に関する届出書」を令和2年4月27日までに提出

事前確定

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貸家建付地としての評価の可否

《質問》

平成22年(2010年)の相続時、土地をAが、その土地にある貸家4棟をBが相続しました。
令和2年(2020年)にAが死亡し、Aが相続した土地をBが相続します。
貸家4棟のうち2棟は平成22年の相続時から賃借人は変わっていません。
賃借人の変わっていない土地は貸家建付地として評価してよろしいでしょうか。
なお、土地については使用貸借であり、AとBは生計が別です。

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消費税課税事業者選択届書の提出時期について

《質問》

 個人Aは、令和1年11月に不動産貸付物件を売却するまで消費税の課税事業者として不動産貸付収入を得ていましたが、売却後は貸付事業は廃業し、現在に至るまで何ら事業は行っていません。
 令和4年8月になり事業を開始することになり、設備投資として多額の減価償却資産を取得する予定ですので還付を受けるために課税事業者の選択届出書の提出したいと思っていますが、令和4年中に届出書の提出を行えばよろしいのでしょうか。気がかりなのは貸付物件を売却した際に、事業廃止届出書の提出をしていないことです。 “消費税課税事業者選択届書の提出時期について” の続きを読む

消費税棚卸資産に係る調整

《質問》

 課税事業者が翌課税期間に免税事業者となる場合は期末棚卸資産に係る消費税額の調整(仕入税額控除減算)が必要となってきますが、翌々課税期間が課税事業者になった場合、課税事業者期間において調整した棚卸資産が売れ残り期末棚卸資産となった時には再調整(仕入税額控除の適用)はできませんか。

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相続により取得した外貨預金を日本円に換金した場合の為替差損益の計算

《質問》

 個人Aは、父Bの相続で取得した米ドルでの外貨預金(10万ドル 相続税評価1ドル100円)を所持しています。
 最近円安が進行(現在 1ドル 125円)していることもあり、預金を解約し円転したいと考えています。このような場合、為替差益の計上はどのようになりますか。預金は平成元年当時預けたもので当時のレートは1ドル150円でした。

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従前に退職金を受け取っている場合の退職所得控除額の計算

《質問》

 この度次の経歴の役員が退任し退職金を支払うことになりましたが、このような場合退職所得控除額の計算についてご教示ください。
1990年4月A社入社
2020年3月31日 役員に就任することになり、使用人部分の退職金として2,000万円を支払いました。
2022年3月末 役員を退任  役員期間の退職金として200万円を支払うこととなった場合の退職所得控除額は①-②=140万円でよろしいでしょうか。

① 800万円 + 70万円×(32年-20年)=1,640万円   (使用人+役員)勤続期間(1990年2022年 32年間)
② 800万円 + 70万円×(30年-20年)=1,500万円   使用人勤続期間(1990年2020年 30年間)

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非上場株式についての贈与税の納税猶予

社長の弟(専務)の保有する自社株を後継者(社長の娘婿)が、引継ぐ場合の特例贈与の適用について  

 X株式会社の代表取締役Aには、相続人3人(妻、長女Bと次女C)がいます。また、Aの弟Eも社内におり専務取締役として業務を行い、15%の自社株を所有しています。
Aは後継者として長女Bの夫(娘婿・養子ではない)Dを指名(特例事業承継計画にて届出)しています。
 なお、Aは、全自社株の80%、時価4,000万円を保有しています(自社株以外の財産は1億円)。
 因みに現在DはAに次ぐ議決権を保有していません(5番手)。

《質問1》  E→Dに特例贈与をA→Dの後に実施予定です。この場合にも特例贈与受けることができ、相続時精算課税も適用できるということでいいでしょうか。

《質問2》  一方で、この場合には、Eの相続の際、申告書にDが登場することになるのでしょうか。相続時精算課税を使おうが使うまいが登場し、DはEの相続時にEの財産状況等を見られてしまう(見ないといけない状況になる)ということでしょうか。

《質問3》  この場合、Eが死亡時(相続開始時)にも、「相続税の猶予」という選択肢はあるのでしょうか。もしないとすると、相続財産として贈与時の時価で計上(加算)しなければならないということでしょうか。

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無償返還の届出について

概要

 建物は、以前は相続人(被相続人の長男)と被相続人が40:60で共有しておりましたが、平成23年に法人に売却をしております。
 *その法人は、相続人(被相続人の長男)が代表者を務め、被相続人は株式は保有しておりませんが、役員です。法人は現時点で400万円ほどの債務超過です。
 その際に、被相続人との間で土地の「使用貸借契約」を締結しておりますが、「無償返還届」は提出していないようです。

《質問》

◆ 今回の相続における、被相続人の土地の評価は6,000万円(100%個人)という評価で問題ないでしょうか。

◆ 今からでも無償返還の届出を出すメリットはありますでしょうか。
  提出すべきでしょうか。
  出した場合の、今回の相続税の課税関係はどのようになりますでしょうか。

◆ 今後この土地と建物を第三者に売却した場合、法人は建物の譲渡益、個人は土地の譲渡益が課税されると思いますが、借地権については課税される可能性は法人にはありますでしょうか。

◆ その他今回の相続において、これから取りうる最善の方法をご教示いただけますでしょうか。
 なお、今回の相続は現時点で財産の額は2億6千万、相続人3名、税額はおよそ4,000万円になっております。

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