《質問》
個人事業を営んでいるAは、前妻との間にできた子Bに対し、事業に従事してもらった対価として給与各年100万円を支払っています。住民登録上は、AとBは同一世帯となっていますが、現実には隣町に住むAの祖父母の家に居住し、寝食を共にしています。この場合、給与はAの必要経費となり、従来から祖父(不動産所得者)の扶養親族としていませんが、更正の請求で扶養控除は認められるのでしょうか。実はAに対する調査において、給与として支払った額は必要経費として認められないと調査官から指摘されています。
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《質問》
個人事業を営んでいるAは、前妻との間にできた子Bに対し、事業に従事してもらった対価として給与各年100万円を支払っています。住民登録上は、AとBは同一世帯となっていますが、現実には隣町に住むAの祖父母の家に居住し、寝食を共にしています。この場合、給与はAの必要経費となり、従来から祖父(不動産所得者)の扶養親族としていませんが、更正の請求で扶養控除は認められるのでしょうか。実はAに対する調査において、給与として支払った額は必要経費として認められないと調査官から指摘されています。
《前提》
被相続人 A
相続人 Aの母、Aの兄
《質問》
Aが公正証書で全財産をユニセフに寄付との遺言を残しています。(約2億円)
Aの母には遺留分の放棄もしてもらってます。
基本的には母、兄には一切かかわりを持ちたくないということです。
遺言執行人はAの友人です。
執行人の報酬としては公正証書にて車(約300万円相当)と記されています。
そこで、まず、
① 相続税申告が必要であるか否か
② 必要な場合申告書の提出はだれが行うか
③ 遺言執行人の報酬について何らかの課税は発生するか
以上、ご教示ください。
《質問》
私は内科医として診療所を開業しています。この度、新規に医療用機器(器具備品)を取得し、設備の刷新を図りたいと考えています。このような場合、友人から中小企業等経営強化法に基づく支援措置である特別償却や税額控除等の適用があると聞きましたが、受けられるのでしょうか。
【納税義務者】
チェック(1) 基準期間の課税売上高の判定
● 基準期間が免税事業者である場合:消基通1-4-5
● 基準期間中に事業用資産(賃貸用住宅)を譲渡した場合
⇒建物と土地等の一括譲渡のケース 消基通10-1-5
● 基準期間の中途で新たに事業を開始した場合:消基通1-4-9
※基準期間が1年でない法人(消法9②二)と相違する点に留意
● 輸出免税売上高:消基通1-4-2
● 非居住者が日本国内で商品販売を行う場合:消基通5-1-11
● 法人成り(法人に引き継いだ事業用資産の譲渡対価)
チェック(2) 相続があった場合の納税義務の免除の特例
● 相続があった年の前々年の課税売上高が1,000万円以下である相続人
が、課税事業者である被相続人の事業を承継したとき
①相続のあった年(消法10①)
②相続があった年の翌年と翌々年(消法10②)
● 被相続人が2以上の事業場を有していた場合で、2人以上の相続人が各
事業場ごとに分割して承継したとき(消法10③)
チェック(3) 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
● 特定期間の中途で開業した場合の課税売上高(消法9の2④一)
※前年の1月1日から6月30日まで(個人事業者の特定期間)の
課税売上げで判定。参照:法人の特定期間(消法9の2④二、三)
● 特定期間中に支払った給与等支払額の範囲:消基通1-5-23
チェック(4) 高額特定資産を取得した場合納税義務の免除の特例(消法12の4)
● 平成28年4月1日以後に高額特定資産の仕入れを行ったが、同年分の課
税売上高が1,000万円を超えなかった場合
● 平成28年4月1日以後に自己建設高額特定資産について、建設等に要し
た費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間の課税売
上高が1,000万円を超えなかった場合
【非課税取引】
チェック(1) 土地の貸付け
● 土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合:消基通6-1-4
● 土地の貸付期間の判定:同上
● 土地付建物等の貸付け: 消基通6-1-5
⇒ 更地のままの貸付け
⇒ 貸付け等に係る対価を建物分と土地分とに区分しているとき
チェック(2) 土地等の譲渡又は貸付けに係る仲介手数料:消基通6-1-6
チェック(3) 郵便切手類の譲渡
● 購入していた印紙を、金券ショップに売却した場合:消基通6-4-1
チェック(4) 物品切手等の発行
● 酒類小売店において、ビール券と引き換えにビールを販売した場合
:消基通6-4-5 同9-1-22
チェック(5) 住宅の貸付け関係
● 用途変更の場合の取扱い:消基通6-13-8
住宅以外の用途に変更することについて
⇒ 契約当事者間で契約変更をした場合
⇒ 契約変更なしに賃借人において事業の用に供した場合
チェック(6) 平成29年度改正事項
● 仮想通貨の譲渡に係る課税関係の見直し
⇒ 非課税とされる支払手段に類するものの範囲に、資金決済に
関する法律に規定する仮想通貨を加える(消令9④、48②一)
《適用関係》
平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用し、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては従前の例による(改正消令附則2)。
ただし、①施行日の前日に100万円以上(税抜き)の仮想通貨を有しており、かつ、②施行日前1月間の平均保有数量に比べ、施行日前日の保有数量が増加している場合には、当該増加分の課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額控除を認めない(改正消令附則8)。
【課税の対象】
チェック(1) 事業としての意義
● 事業規模に達していない建物(居住用は除く。)の賃貸収入
〈例〉建物一棟を業務用として反復、継続、独立して賃貸している場合
:消基通5-1-1
チェック(2) 付随行為:消基通5-1-7
● 事業用車両を売却(下取り)した場合
チェック(3) 自家消費等における対価:消基通10-1-18
● 棚卸資産を家事消費した場合
チェック(4) 法人成り
● 現物出資により事業用資産を法人に引き継いだ場合
:消法2①八、消令2①二、同令45②三
チェック(5) 借家保証金、権利金等:消基通5-4-3
● 賃貸借契約上賃貸借の終了時に返還される保証金等を受領した場合
チェック(6) 前受金、仮受金に係る資産の譲渡等の時期:消基通9-1-27
● 所得税法第67条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)の適用を
受けない場合
<参照> 課税仕入れを行った日の意義(消基通11-3-1)
チェック(7) 自家消費等における対価:消基通10-1-1、同10-1-18
● 棚卸資産以外の事業用資産を家事消費した場合
【課税標準】
チェック(1) 課税資産の譲渡等の対価の額:消基通10-1-1
● 棚卸資産を通常より安い値段で他に販売(次の場合を除く)した場合
● 保有する棚卸資産又は事業用資産の家事消費又は家事使用した場合
チェック(2) 課税資産の譲渡等に際しての資産の下取り:消基通10-1-17
チェック(3) 委託販売等に係る手数料:消基通10-1-12
● 委託販売等における委託者と受託者それぞれに係る課税標準
チェック(4) 売上げに係る対価の返還等の処理:消基通14-1-8
【課税仕入れ】
チェック(1) 費途不明の交際費等:消基通11-2-23
● 接待交際費勘定中に、費途が明らかでないものや、贈答用に購入
した商品券及びビール券の購入代金が含まれている場合
チェック(2) 個人事業者と給与所得者の区分(消法2①十二)
● 課税仕入れに該当する(事業所得)か 否(給与所得)かの判定
<参考>
⇒ 消基通1-1-1に示された事項を総合勘案して判定
⇒ 課税当局の資料:「法人税課速報(源泉所得税関係)【給
与所得と事業所得との区分】東京国税局平成15年7月
第28号」・・・情報公開法9条1項による開示情報
チェック(3) 会費、組合費等:消基通5-5-3
⇒ 同業者団体、組合等に対して支払う通常会費
⇒ 会費名目で支払われる出版物の購読料、職員研修の受講料など
チェック(4) 家事共用資産の取得:消基通11-1-4
⇒ 当該資産の家事消費又は家事使用に係る部分の計算方法
⇒ 当該資産を一時的に家事使用した場合
<参照> 家事共用資産の譲渡(消基通10-1-19)
チェック(5) 従業員の通勤手当:消基通11-2-2
● 通勤に通常必要と認められる金額ではあるが、所得税法上の非課税
限度額を超えている場合
チェック(6) 課税仕入れ等に係る消費税額の控除(消法30②)
⇒ 当課税期間における課税売上割合及び課税売上高の把握
⇒ 当課税期間が1年に満たない場合
⇒ 課税売上割合の端数計算(処理):消基通11-5-6
チェック(7) 一括比例配分方式の2年以上の継続適用:消基通11-2-21
● 一括比例配分方式を採用した課税期間の翌課税期間の課税売上高が5億
円以下かつ課税売上割合が95%以上となった場合の「全額控除」
チェック(8) 更正の請求の可否(通則法23①)
● 一括比例配分方式を選択して確定申告した後の個別対応方式への変更
【控除対象仕入税額の調整】
チェック(1) 免税事業者が翌課税期間は課税事業者となる場合
● 棚卸資産に係る控除対象仕入税額の調整:消基通12-6-1
● 免税事業者時の課税売上げに係る翌課税期間中の値引・返品
チェック(2) 課税事業者が翌課税期間は免税事業者となる場合
● 棚卸資産に係る控除対象仕入税額の調整:消基通12-6-4
【簡易課税制度】
チェック(1) 簡易課税不適用届出書の提出時期
チェック(2) 固定資産等の売却収入の事業区分:消基通13-2-9
● 小売業を営む課税事業者が事業用固定資産を売却した場合
● みなし仕入率の計算の特例(75%ルール)の有無
チェック(3) 75%ルールの判定
● 酒類小売業及び卸売業を営む課税事業者のビール券売上げ
● 75%ルール判定時の端数処理
チェック(4) 食料品小売店舗において行う販売商品の加工等の取扱い
● 精肉(鮮魚)の小売業(第2種)を営む課税事業者が焼鳥、ロースト
チキン(かつおのたたき、焼魚)等に加工販売している場合
:消基通13-2-2、同13-2-3
チェック(5) 小売店が販売したものの購入者が他の事業者であった場合(消令57⑥)
チェック(6) 塗装工事業の判定:消基通13-2-4
⇒ 塗料等の資材を自ら調達する事業形態
⇒ 他人が調達した塗料を塗装する(加工賃)だけの事業形態
チェック(7) 無償で譲り受けたものを事業者に販売している場合(消令57⑥)
チェック(8) 加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供の意義
● 農作業受託金(農業従事者が他の農業従事者の田植え、稲刈り等を
手伝い、得た収入金):消基通13-2-7
チェック(9) 簡易課税制度適用者の基準期間の課税売上高が6,000万円となった
場合
チェック(10) 相続があった場合の納税義務の免除の特例と簡易課税制度の適用
● 「簡易課税制度選択届出書」を提出している事業者が、平成27年中に
相続により被相続人の事業を引き継いだ場合、基準期間(平成27年)
の相続人と被相続人の課税売上高の合計額が5,000万円超のとき(相
続人のみの課税売上高は5,000万円以下)の簡易課税制度適用の可否
チェック(11) 簡易課税制度選択届出書の効力:消基通13-1-3
● 簡易課税制度を適用している事業者が、免税事業者となった後、再び
課税事業者になった場合
【その他の誤りやすいポイント】
➣ 課税事業者が、免税事業者であった課税期間に発生した売掛金等につ
き貸倒れが生じたので、消費税額から控除している。
➣ 消費税の控除不足税額のある還付申告書が提出されたが、明細書の添
付がないにもかかわらず、消費税の還付を行っている。
➣ 課税期間の短縮(3か月)の適用を受けていた事業者が、平成29年1月
20日に不適用届出書を提出し、平成29年1月1日から原則的な課税期間
に戻すこととしている。
➣ 各年分の修正申告により納付すべきこととなった消費税を、その各年
分の所得の計算において租税公課に算入した。
➣ 小包郵便物でまとめて提出された「消費税課税事業者選択届出書」、
「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出日を通信日付によるとして
いる。
Ⅰ譲渡所得関係
1 取得費について
買入時の契約において建物と土地の価額が区分されていない場合には、「建物の標準的な建築価額表」を基に建物の取得価額を計算しても差し支えない。
(消費税導入後、不動産業者等から買い入れた場合には、原則的に建物に係る消費税が表示されていることから、建物と土地の価額が区分されている。)
なお、実際の取得価額が不明な場合には、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することが原則であるが、建物については、前記と同様の方法によっても差し支えない。
しかし、土地について、「市街地指数」等によって買入時の価額を推計することにはリスクが伴うため、慎重に検討する必要がある。
(参考情報・・・平成12年11月16日裁決)
2 収用補償金の所得区分について
公共事業等の収用補償金は、支払名目により所得区分が異なるので、内容を吟味して所得区分を判定する必要がある(参考資料参照)。
なお、経費補償金等について課税の延期を行う場合には、「収益補償金等の課税延期申出書」の提出が必要となる。
3 重複適用できない特例関係について
重複して適用できない特例があるため、各種特例を適用する際には留意する必要がある。
(1)居住用財産の買換え(交換)特例(措法36の2、措法36の5)と居住用財産を譲
渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(2)住宅借入金等特別控除の特例(措法41)と居住用財産の買換え(交換)の特例(措法36の2、揩法36の5)若しくは特別控除の特例(措法35①)又は居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(3)被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)と相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例(措法39)
4 被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例について
(1)この特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、被相続人が主として居住の用に供していた「一の建築物」に限られるため、被相続人が主として居住の用に供していた母屋とは別の建築物(離れ、倉庫、車庫等)及びその敷地に対応する部分(面積)については、母屋との一体利用の有無に関わらず、この適用対象から除かれる。
(2)被相続人居住用家屋が一定の耐震基準を満たしていない場合には、その敷地の譲渡日(原則として引渡日とし、契約日を譲渡日として申告した場合は契約日。)までに当該家屋の取壊しを了していない限り、この特例の適用を受けることはできない。
※譲渡物件の引渡後に買主の負担で建物を取り壊す場合は、特例の適用受けることはできない。
(3)被相続人居住用家屋に被相続人以外の者が居住していた場合(相続開始後も含む)は、この特例を受けることはできない。
(4)この特例を受ける場合、「特例対象譲渡物件」部分については「相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例」(措置法第39条)の特例を受けることはできないが、「特例対象譲渡物件」以外の部分については、同一に譲渡した場合であっても措置法第39条の適用を受けることができる。
(5)この特例の適用を受けようとする場合、被相続入居住用家屋又は当該家屋の敷地を相続により取得した他の相続人に対し、この特例の適用を受ける譲渡をした旨、譲渡した日等を通知しなければならない。
5 特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除について
(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した土地等を譲渡した場合には、1, 000万円の特別控除の適用がある。
(2)この取得について、譲渡人の配偶者、直系血族、生計を一にしている親族、事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者と生計を一にしている親族、等(措置法施行令第23条の2第1項参照)からの取得は除かれている。
また、取得の原因について、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済、等(措置法施行令第23条の2第2項参照)による取得は除かれている。
(3)この特例の適用は、土地又は土地の上に存する権利(借地権等)に限られていることから、建物等の譲渡による譲渡所得には適用されない。
したがって、土地及び建物を一括して譲渡した場合には、当該譲渡による譲渡所得のうち、土地の譲渡に対応する部分についてのみこの特例の適用がある。
6 相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例について
(1)物納した土地及び物納申請中の土地については、相続等により取得した土地等から除かれる。
(2)超過物納により過誤納金を受領した場合、この特例の適用がある。
(3)代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合の取得費加算の計算については、措置法通達39-7によることに留意する。
なお、代償分割により取得した土地を譲渡してもこの特例の適用はない。
(4)措法第39条の計算における「相続税の課税価格」とは、相続税の申告書第1表①欄「取得財産の価額」に②欄「相続時精算課税適用財産の価額」と⑤欄「純資産に加算される贈与財産の価額」を加えた価額である(債務控除は行わない)。
7 株式の譲渡について
「源泉徴収口座」による株式の譲渡を申告した場合、所得金額が増加することから、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料、介護保険料が増加する。この場合、申告した後において申告しないこととする変更はできないため、特に留意する必要がある。
Ⅱ贈与税関係
1 直系尊属(父母又は祖父母等)からの贈与について
特例税率の適用に当たって、受贈者の年齢判定の基準日は、その年(贈与をした年)の1月1日現在において20歳以上の者であることに留意する。
2 相続時精算課税の特例について
(1)年齢判定の基準日こついて、贈与者、受贈者ともに、贈与を行った年(受けた年)の1月1日現在において贈与者は60歳以上、受贈者は20歳以上であることに留意する。
(2)特例を受ける場合には、宥恕規定がないため、申告期限内に申告書、選択届出書及び添付書類を提出する必要がある。
2年目以降にこの特例を受ける場合にも、宥恕規定がないため、期限内申告を行わないと特別控除の残額があっても控除することはできない。
(3)この特例の適用を受けて申告した財産の評価に誤りがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産について記載があることから、正しい控除を受ける金額の記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認める場合には、その記載をした修正申告書の提出があったときに限り、特別控除の適用を受けることができる(相続税法第21条の12第3項)。
更正の請求においても同様の解釈ができる。
(4)特定贈与者から贈与を受けた財産の一部を申告し、一部について申告漏れがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産についての記載がないことから、特別控除の適用はない。したがって、特別控除の額は期限内申告の額のままで、修正申告をする必要がある。
補償金の種類 | 税法適用上の区分 | 所 得 区 | 摘 要 | |
---|---|---|---|---|
土地の取得に係る補償 | 対価補償金 | 分離譲渡所得 | 棚卸資産を除く。 | |
土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償 | ||||
残地保証 | ||||
建物等の移転料 | 建物移転料 | 移転補償金 | 一時所得 | 実際に建物等を取り壊した場合には、対価補償金として分離譲渡所得とすることができる。ただし、棚卸資産を除く。 |
工作物移転料 | ||||
動産移転料 | ||||
仏壇・神棚移転料 | ||||
仮住居補償 | ||||
仮倉庫補償 | ||||
仮車庫補償 | ||||
移転雑費 | 移転先等の選定に要する費用 | 交付の目的に従って支出した場合には、総収入金額に算入しない。 | ||
法令上の手続きに要する費用 | ||||
転居通知費・移転旅費 | ||||
その他雑費 | 補償の実体的な内容に応じて判定。 | |||
立木 | 庭木 | 移転補償金 | 一時所得 | 伐採をした場合は総合譲渡所得。 |
収穫樹 | ||||
用材林 | 対価補償金 | 山林所得 | 所有期間が5年を超えるもの。 | |
就業不能補償 | 収益補償金 | 事業又は雑所得 | ||
営業補償 | ||||
特産物補償 | ||||
天恵物補償 | ||||
家賃減収補償 | 不動産所得 | |||
墳墓改葬料 | 精神補償金 | 非課税 | ||
弔祭料 | ||||
祭祀料(遷座祭典料) | ||||
飲料水補償 | その他の補償金 | 一時所得 | ||
し尿処理補償 |
《参考資料》
番号法施行規則の改正についてのお知らせ
土地や建物などの譲渡所得について主な特例の適用を受ける場合の 申告書添付書類チェックシート
今週の解説は次のとおりです。
《目次》
3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除
4 仮想通貨の取扱い
5 外国からの公的年金
⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
⑵ 公的年金申告不要制度(収入400万円以下)
6 生命保険金等の課税関係
7 空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)
8 住宅ローン控除
⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
⑵ 特定取得の意義
⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
⑹ 控除合計額計算の調整
⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
9 所得控除関係
⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
⑵ 扶養控除の所属の変更
⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
10 保険契約に関する支払調書の見直し
11 附帯税関係(加算税制度の見直し)
《解説》
3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除
平成28年中に生じた先物取引に係る損失を、同年の確定申告に含めず申告していた場合でも、損失を繰り越す旨の更正の請求を行い、その後平成29年分の確定申告において、先物取引に係る所得金額(利益額)から繰越損失額を控除することは認められている(措通41の15-1)。ただし、平成29年分の確定申告を先に行った場合には、平成28年分の更正の請求は認められず、繰越控除はできない。
4 仮想通貨の取扱い
仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分される。
【参照 国税庁ホームページ 個人課税課情報4号平成29年12月1日】。https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/…/01.pdf
5 外国からの公的年金
⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
雑所得を計算する際の公的年金等は、国内の公的年金だけでなく外国の法令に基づく保険や共済制度で日本の国民年金や厚生年金等に類するものも含まれ、公的年金を全て合計し公的年金控除の金額を算出の上、公的年金に係る雑所得の金額を算出する。
⑵ 公的年金申告不要制度(年金収入400万円以下)
国外からの年金等公的年金等の一部でも源泉徴収の行われていない年金が含まれている場合には、確定申告不要制度の適用はない(所法121③)。
6 生命保険金等の課税関係
交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合や満期で保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人がだれであるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になる。
身体の傷害に起因して支払いを受ける保険金等は、被保険者自身が身体に傷害を受け保険金等を受領する場合だけでなく、配偶者や一定の親族が受ける保険金等についても非課税としている(所法9①十七、所令30、183②、所基通9-20・9-21・34-1、相法3①一、5①、相基通3-17)。
保険契約等関係者 | 保険事故等区分 | ||||
保険負担者 | 被保険者 | 保険等受取人 | 傷害 | 死亡 | 満期 |
A | A | A | 非課税 | ― | 一時所得 |
A | A | B | 非課税(親族)(注) 一時所得 |
相続税 | 贈与税 |
A | B | A | 同上 | 一時所得 | 一時所得 |
A | B | B | 非課税 | ― | 贈与税 |
A | B | C | 非課税(親族)(注) 一時所得 |
贈与税 | 贈与税 |
A1/2・C1/2 | A | B | 同上 | 相続税・贈与税 | 贈与税 |
(注) 保険金等受取人が、被保険者の配偶者、直系血族又は生計を一にするその他の親族である場合に限る。
7 空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)
適用要件の概要は次のとおり。このうち、下記⑦の『被相続人居住用家屋等確認書』の交付を受ける際には、家屋の取壊し時から譲渡時までの敷地の使用状況が分かる写真を提出する必要があり(家屋を取壊しの後敷地を売却する場合)、これに備え譲渡前から準備する必要があり注意を要す。
① 昭和56年5月31日以前に建築された家屋及びその敷地で相続開始の直前において被相続人の居住用に供されていたこと
② 相続開始直前において被相続人に同居者がいないこと
③ 譲渡対価の額が1億円以下であること
④ 相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
⑤ 相続の開始から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
⑥ 家屋を取り壊さず売却する時は、その家屋が昭和56年6月1日以後の耐震基準に適合するよう修繕するものであること
⑦ 『被相続人居住用家屋等確認書』を被相続人の所在地市区町村から交付を受けること
【参照 空き家の譲渡所得の3000万円特別控除】 http://www.mlit.go.jp/common/001127709.pdf
8 住宅ローン控除等
⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
平成28年4月1日以降適用対象者が居住者だけでなく非居住者でも適用可とされた。例えば①海外転勤で非居住者となっていた者が帰国後の住居の確保のため、前もって非居住者期間中に住宅を取得した後居住した場合②住宅ローン控除適用者が年の中途で海外勤務となっても家族が引き続き居住している場合等にも適用が可能となっている(措法41①他)。
⑵ 特定取得の意義
『特定取得』とは、住宅の取得等に含まれる消費税率が8%による場合のことを指し、個人間の売買契約において消費税額の表示がない場合には、『特定取得』には該当しない。特定取得に係る住宅とそれ以外の住宅についての住宅借入金等特別控除の控除額は、平成26年以降次のとおり。
取得の種類 | 年末残高の合計額(最高) | 住宅借入金等特別控除額(最高額) | |
特定取得 | 一般取得 | 4000万円 | 40万円 |
認定長期優良住宅 | 5000万円 | 50万円 | |
非特定取得 | 一般取得 | 2000万円 | 20万円 |
認定長期優良住宅 | 3000万円 | 30万円 |
⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
確定申告において一旦選択適用した住宅取得等に係る特別控除は、その年分以降も変更することはできない。
例えば、認定長期優良住宅を借入金で取得し、単年控除を選択した場合、後において住宅ローン控除(10年摘要)への変更をすることはできない(さくら税研フォーラム28年10月31日公開分参照)。
住宅ローン控除等概要 (28年1月~平成33年12月末までに居住等の場合) | |||
区分 | 住宅ローンあり | 自己資金(住宅ローン無) | |
一般住宅 新築・既存住宅 増改築 | 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) | ||
認定住宅 | 住宅借入金等特別控除 年末残高(5000万円限度)×1% 【10年控除 年最高50万円】措法41⑤ 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) | 選択摘要 | 認定住宅新築等特別控除 標準的な費用の額(43,800円×床面積㎡)×10% 【1年のみ控除・1年繰越可 65万円限度】 措法41の19の4 |
省エネ バリアフリー 多世帯 | 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) | 選択摘要 | 既存住宅特定改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 省エネ25万円(太陽光35万円)・多世帯25万円・バリアフリー20万円限度】 同一年中に省エネ、多世帯、バリア工事を実施した場合重複可 最高80万円 措法41の19の3 |
特定増改築等住宅借入金等特別控除(注) 特定借入金×2%+その他借入金×1% 【5年控除 年最高12.5万円】 措法41の3の2 | |||
耐震改修 | 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 最高400万円】 措法41① | 併用可 | 住宅耐震改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 25万円限度】 措法41の19の2 |
(注)省エネ改修工事や耐震改修工事と併せ行う、一定の耐久性向上改修工事も平成29年4月から対象となりました。 | |||
※1 控除額等は、建物等に含まれる消費税率が8%である場合の金額です。 | |||
※2 多世帯同居改修工事については、平成28年4月~33年12月までに居住した場合 |
⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
父の所有する家屋に子が増改築をする場合のように、自身が所有していない建物に増改築しても住宅借入金等特別控除の対象となる『増改築』には該当しない(措法41①⑬)。
⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
借入金の償還期間が当初10年以上になっていても、その後、繰り上げ返済等により10年未満となった場合には、繰上返済等した年から住宅借入金等特別控除は適用不可(措通41-19)。
⑹ 控除合計額計算の調整
住宅借入金等により居住用家屋を取得した後の年度において、増改築や財産分与により住宅所得等に係る住宅借入金が2以上となった場合、それぞれの借入金について控除額を計算し合計する。
税額控除額の上限は、適用年において適用される居住年に係る控除額のうち、最も大きい方が上限となる(措法41の2)。
⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
居住用財産を譲渡した場合の特例〔居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35②)、特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)等〕と住宅借入金等特別控除の適用関係は次のとおり。
① 譲渡が先行した場合
住宅を取得等し居住用に供した年分、その前年分、前々年分について居住用財産の譲渡の特例を適用した場合には、住宅借入金等特別控除の適用はできない(措法41⑮)。
② 居住用家屋の取得が先行した場合
居住年の翌年又は翌々年に入居した家屋以外の物件を譲渡した際、居住用財産の譲渡の特例を適用する場合には、居住年以後住宅借入金等特別控除の適用はない(措法41⑯)。この場合先行して住宅借入金等特別控除を受けていたときには、修正申告書または期限後申告書を提出し住宅借入金等特別控除相当額の納税をしなくてはならない(措法41の3①)。
先行して居住用財産を取得した場合(②のケース)は、合法的に選択替えができますが、譲渡が先になった場合(①のケース)には、選択替えはできないので譲渡するときにどちらの特例を適用するのか決めなくてはならない。
なお、住宅借入金等特別控除の適用を受けている居住用財産を譲渡し、譲渡の特例を適用した場合には、前年、前々年の住宅借入金等特別控除について修正する必要はない。
⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
住宅耐震改修特別控除は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(措法41⑬、41の3の2②)のように家屋の所有者以外の者が耐震改修を行った場合でも適用を受けることができる。
また、自己の所有している居住の用に供している家屋について増改築等を行うとともに耐震改修したときは、住宅耐震改修特別控除、住宅借入金等特別控除のそれぞれの要件に該当すれば、重複して適用することができる(措法41①⑥、41の19の2①)。
9 所得控除関係
⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
介護保険法により「要介護認定」を受けていたが、市に対し「障害者控除対象者認定書」の交付を要求、これを受け市長が、認定日を過去に遡及して「障害者控除対象者認定書」を交付した場合、遡及した年分に遡り障害者控除の適用を受けることができる。
⑵ 扶養控除の所属の変更
同一生計内に二人の所得者がいる場合において、その二人に共通の扶養親族をいずれの所得者の扶養親族とするかは、確定申告書等に記載されたところによるが、一度申告書等により所属が定められた後においても所属を変更できることになっている(所令219①)。
この場合、扶養親族を増加させようとする者と減少させようとする者全員が所属の異なる申告書等を提出しなければならない。この場合の申告書等には「修正申告書」と「更正の請求書」は含まれないので、いったん確定申告書を提出し所属を定めた場合には、扶養親族の所属の変更はできない(所基通85-2)。
○ 変更が認められるケース
夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出、年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出、妻は子を扶養親族とする「確定申告書」を提出する。
○ 変更が不可なケース
夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「確定申告書」を提出した。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出しても、妻は子を扶養親族とする「更正の請求書」を提出することはできない。
⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
ア 2年分の国民年金保険料を前納した場合
支払った国民年金保険料全額を社会保険料控除の対象にすることも、各年分に対応する保険料を年分ごとに控除することもできる。
イ 子供の過去の国民年金保険料を複数年分一括して支払った場合
複数年分の国民年金保険料をまとめて支払ったとしても、支払った年分の社会保険料控除の対象とする。
10 保険契約に関する支払調書の見直し
⑴ 次のような課税漏れに対応するため、支払調書の提出義務や記載事項を変更した(平成30年1月1日以降に変更の効力を生じる場合について適用)。
ア 契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人でないケースで契約者が死亡し、契約者名義を変更した場合、その時点での解約返戻金相当額が相続財産として相続税の課税対象となるが、保険金が支払われたわけでないため支払調書が提出されず課税漏れがあった。
イ 契約書名義を変更した後、死亡保険金・満期保険金・解約返戻金を受け取った場合、変更前の契約者が支払った保険料に対応する受取人は贈与税の対象となるが、支払調書は支払時点での契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更した分について課税漏れがあった。
⑵ 支払調書の変更内容
ア 生命保険契約や損害保険契約の契約者が死亡したことに伴い、契約者の変更手続きを行った場合、次の事項を記載した支払調書『保険契約者の異動に関する調書』を提出する。
○ 変更前・変更後の契約者の氏名
○ 契約者が死亡した日
○ 変更に係る契約の解約返戻金相当額
○ 保険料の総額、変更前の契約者が払い込んだ保険料額
イ 契約の締結後に契約者の変更があった場合、支払調書の記載事項の追加
○ 契約の変更前契約者の氏名
○ 変更後の契約者が払い込んだ保険料、変更回数
11 附帯税関係(加算税制度の見直し)
⑴ 調査の事前通知以後に、修正申告等を行う場合
税務調査が開始され、更正の予知をしていない間に修正申告・期限後申告が行われた場合の適用税率が引き上げられました(国通法65・66)。
種類 | 28年以前 | 29年以降 |
過少申告加算税 | 0% | 5% |
無申告加算税 | 5% | 10% |
⑵ 短期間に繰り返し無申告等があった場合
税務調査により、無申告加算税や重加算税の賦課された方が、過去5年以内に同じ税目で再び無申告加算税や重加算税が課された場合には、これらの割合が10%加算されます。
種類 | 28年以前 | 29年以降 | |
無申告 | 無申告加算税 | 15%(20%) | 25%(30%) |
仮装・隠ぺい |
重加算税(過少・不納付) | 35% | 45% |
重加算税(無申告) | 40% | 50% |
※ ⑴⑵いずれも、平成29年1月1日以後法定申告期限が到来するものから適用。
さくら税研では、今週から4回にわたり、個人の確定申告において誤りやすい事項のポイント解説をさせていただきます。
今回の解説は次のとおりです。
《目次》
【税法改正事項】
1 給与所得控除額引き下げ
2 セルフメディケーション税制の創設、添付書類の見直し
3 事業所得関係
⑴ 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業投資促進税制)の改正
⑵ 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正
⑶ 特定中小企業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設
4 税額控除関係
⑴ 既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充
⑵ 省エネ改修の要件緩和
⑶ 住宅ローン控除の対象外となる勤務先からの借入金利率の緩和
5 届出書の提出先の簡略化
【誤りやすい事項】
1 金融所得課税
⑴ 平成28年から適用されている公社債・公社債投信等に対する課税関係の見直し概要
⑵ 配当所得等の申告に当たっての注意事項
⑶ 上場株式等に係る配当等と譲渡損失の損益通算
2 不動産所得・事業所得関連
⑴ 減価償却関係(相続により取得した減価償却資産の償却方法)
⑵ 青色申告特別控除について
⑶ 青色申告申請書の提出期限
《解説》
1⃣【改正された事項】
1 給与所得控除額引き下げ
給与所得控除上限額がさらに220万円に引き下げ
(平成26年度改正事項のうち、順次適用)
年収額 | 給与所得控除額 | |||
24年分以前 | 25年分~27年分 | 28年分 | 29年分~ | |
180万円以下 | 収入金額×40%
(65万円未満は65万円) |
同左 | 同左 | 同左 |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 | 同左 | 同左 | 同左 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 | 同左 | 同左 | 同左 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 | 同左 | 同左 | 同左 |
1000万円超1200万円以下 | 収入金額×5%+170万円 | 同左 | 同左 | 220万円 |
1200万円超1500万円以下 | 230万円 | |||
1500万円超 | 245万円 |
2 セルフメディケーション税制の創設、添付書類の見直し
⑴ 平成28年改正事項
現行の医療費控除との選択により、市販薬(スイッチOTC〔Over The Counter〕医薬品)を購入した場合に購入費用を所得控除とする制度が平成28年に創設(適用は29年1月1日から)。
控除額は、最高額が10万円で12,000円を超える額が控除額
当該医療費控除を受けるためには、セルフメディケーション〔自主服薬〕対象品である旨記載したレシート等領収書とともに健康の維持増進、疾病の予防への取組として『一定の取組』をすることが要件とされ、取組を行った書類を添付又は提示する必要あり(ただし、下記⑵の改正あった。)。
※『一定の取組』とは
インフルエンザの予防接種を受けた(領収書等を提出)、会社の定期健康診断を受診(結果通知書を提出)、市町村のがん検診を受診(領収書又は結果通知表を提出)等
⑵ 平成29年改正事項
医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合、従来の「医療費の領収書等」の添付又は提示に代えて「医療費控除の明細書」や「セルフメディケーション税制の明細書」を添付することとなった。ただし、領収書は確定申告期限等から5年間は税務署からの提示要求に備え、保存しておく必要あり。
セルフメディケーション税制での添付書類「健康維持増進等の取組」関係書類は申告書に添付又は提示が必要。
平成29年~31年分までの確定申告については、これまでどおり医療費の領収書の添付・提示でも可。また、医療保険者から交付を受けた医療費通知(健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」)を添付すると明細書の記入を省略できる。
【参照:資料医療費控除の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf
3 事業所得関係
⑴ 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業投資促進税制)の改正
ア 特定生産性向上設備等について、即時償却と10%の税額控除との選択適用ができる制度の見直し(上乗せ措置の廃止等)が行われた上、適用期限が2年延長された。すなわち、一定の機械装置等を取得等した場合に取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できる(措法10の3①)。
イ 適用手続きは、特別償却の場合、青色申告決算書の「減価償却の計算」「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」欄に『特例(措法10の3)』と記入。
税額控除の場合、「中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」を確定申告書に添付すること。
ウ 平成29年4月1日前に取得等をした特定生産性向上設備等については従前どおり。
【参照 中小企業投資促進税制】
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2017/170905toushisokushinpanf.pdf
⑵ 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)改正
ア 企業の活性化を図るため一定の要件を満たした経営改善設備(器具備品、建物附属設備)の取得を行った場合に取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除の選択適用ができる。
イ 制度そのものの改正はないが、税額控除については上記⑴と下記⑶の制度の税額控除措置と合計して適用年分の税額の20%相当額を限度とし、適用期限が2年延長された。
【参照 商業・サービス業・農林水産業活性化税制】
https://www.mirasapo.jp/finance/pdf/Q10.pdf
⑶ 特定中小企業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度(中小企業経営強化税制)の創設
上記⑴の制度の上乗せ措置の廃止に伴い設けられた措置で、29年4月1日~31年3月31日までの期間内に一定の設備を取得し、指定事業に供した場合、即時償却又は取得価額の10%の税額控除を選択摘要することができる制度が創設された(措法10の5の3)。
【参照 税制措置・金融支援活用の手引き 中小企業庁】
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170407zeiseikinyu.pdf
4 税額控除関係
⑴ 既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充
ア 住宅ローン関係
居住している住宅について、耐震・省エネリフォームと併せて一定の『耐久性向上改修工事』が「特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」(措法41の3の2)の適用対象に追加された。
イ 自己資金関係
「既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除」(措法41の19の3)の適用対象に耐震改修工事又は省エネ改修工事と併せ行う一定の『耐久性向上改修工事』が加えられた。
⑵ 省エネ改修の要件緩和
従前居室の全ての窓に対して改修工事をすることが要件となっていたが、住宅全体の省エネ性能が改修により満たされれば税額控除の対象となった。
⑶ 住宅ローン控除の対象外となる勤務先からの借入金利率の緩和
住宅ローン控除の対象とならない勤務先からの借入金の利率が、1%未満から0.2%未満とされた。
【参照 長期優良住宅化リフォーム等の促進に向けた既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充】
http://www.mlit.go.jp/common/001154854.pdf
5 届出書の提出先の簡略化
これまで、「納税地の異動」等を行う場合、『届出書』を異動前と異動後の納税地を管轄する税務署にそれぞれ提出していたが、平成29年4月1日以降は次の提出先にだけ提出すればよいこととされた。
① 納税地の変更に関する届出書 ➡ 変更前の納税地の所轄税務署長(所法16)
② 納税地の異動に関する届出書 ➡ 異動前の納税地の所轄税務署長(所法20)
③ 個人事業の開業・廃業等届出書 ➡(納税地と事務所の所在地が異なる場合)納税地の税務署長(所法229、所規99)
④ 給与支払事務所等の移転届出書 ➡ 移転前の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長
2⃣【誤りやすい事項】
1 金融所得課税
⑴ 平成28年から適用されている公社債・公社債投信等に対する課税関係の見直しの概要
ア 特定公社債、公募公社債投信等の利子は、20.315%源泉徴収後、申告不要または申告分離課税を選択することができる。
譲渡損益については、従前非課税だったが、申告分離課税(税率20.315%)に改められた。
イ 特定公社債等については、特定口座での取扱いも可。したがって、源泉徴収あり特定口座で取引していれば、申告不要とすることができ、これらの口座間及び上場株式等に係る譲渡益との損益通算や繰越控除ができる。
ウ 一般個人投資家の投資対象とならない特定公社債以外の一般公社債及び私募公社債投信等については、一般株式等グループとして分類され、上場株式等グループとの間で損益通算は不可。
※ ○ 特定公社債は次のとおり
国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募または上場されている公社債(証券会社・銀行が窓口で販売している公社債は概ね「特定公社債」となる。)。
○ 預貯金の利子等については、従前と同様源泉分離課税のままの取扱い。
公社債・公社債投資信託等に対する課税
平成27年以前 |
平成28年~ | ||
特定公社債・公募公社債投資信託 | 左記以外公社債・私募公社債投資信託 | ||
利子 | 利子所得・源泉分離課税(20.315%) | 20.315%【源泉徴収有】申告分離(申告不要とするも可) | 源泉分離課税(20.315%) |
譲渡益 | 非課税 | 20.315%【特定口座で源泉徴収なら申告不要可】申告分離 | 20.315%申告分離 |
損益通算・繰越控除 | 不可 | 可(特定公社債等利子・配当所得・譲渡所得との) | 不可(譲渡内通算可) |
特定口座での取扱い | 不可 | 可 | 不可 |
⑵ 配当所得等の申告に当たっての注意事項
ア 課税方法の変更
確定申告において、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等を、更正の請求や修正申告において総合課税へ変更することはでない。例えば、申告分離課税を選択して確定申告をした場合には、その後において更正の請求や修正申告するときにおいても、申告分離課税を選択することになる(措通8の4-1)。
イ 申告方法
上場株式等の配当等を申告する場合には、その全額について総合課税又は申告分離課税のいずれかを選択することになっている(措法8の4②)。したがって、一部を総合課税に、残りを申告分離課税とする申告は認められていない。
ウ 所得税と住民税別々の申告方式を採ることの是非
例えば、次のケースの場合、住民税の納税通知書が送達する前であれば、所得税と異なる住民税の申告を別途行うことが認められている(地法税法313⑬)。
○ 上場株式等の配当所得について所得税は総合課税、住民税は申告不要制度(または申告分離課税)を選択することで住民税の税負担を抑える。
○ 所得税は申告分離課税で損益通算や繰越控除を利用、住民税は申告不要制度を選択し国民健康保険料等の増加を抑える。
【参照 練馬区 特別区民税・都民税申告書(上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書)他の市区町村は、それぞれ対応が異なるので問い合わせが必要】http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/zei/oshirase/kazeihoshiki…/moushidesyo2.pdf
⑶ 上場株式等に係る配当等と譲渡損失の損益通算
ア 分離課税から総合課税への選択替え
○ 源泉徴収選択口座内で上場株式等の配当等と譲渡損失とが損益通算されている場合において、その譲渡損について確定申告をするときは、併せて配当等の申告も必要となる(措法37の11の6⑩)。その際配当等の申告について総合課税への選択替をすることができる。しかしながら、利子等については、申告分離が原則なので、総合課税の選択をすることはできない(措法8の4②)。
○ 源泉徴収選択口座の譲渡所得等の黒字の金額と同じ源泉徴収選択口座の配当等の金額のいずれかのみの申告をすることは可(源泉徴収選択口座内に配当所得と利子所得両方がある場合、配当所得のみ又は利子所得のみを抜き出して申告することはできない。)。
イ 複数の源泉徴収選択口座がある場合等の申告方法
○ 複数の源泉徴収選択口座の譲渡所得等の金額を申告するかどうかは、源泉徴収選択口座ごとに選択することができる(措法37の11の5①、措通37の11の5-2)。
○ 複数の源泉徴収選択口座で上場株式等の利子等又は配当等受領をしている場合において、それらを申告するときは、それぞれの源泉徴収選択口座(口座内の利子等と配当等の合計)ごとに申告不要制度の適用を選択することができる(措法37の11の6⑨)。
ウ 源泉徴収選択口座以外の利子等や配当等
申告方法については、1回に支払いを受ける利子等又は配当等ごとに選択ができる(措法8の5④)。
2 不動産所得・事業所得関連
⑴ 減価償却関係(相続により取得した減価償却資産の償却方法)
相続により資産を取得した場合、取得価額、帳簿価額、耐用年数は引き継ぐ旨の規定となっている(所法60①、所令126②)が、償却方法についての引継規定はないため、被相続人が旧定率法により償却していた減価償却資産を相続により取得した場合でも、その相続人は旧定率法を用いて減価償却費の計算をすることはできない。
個人の法定償却方法は定額法のため、新たに業務を開始した相続人が定率法を選択する場合には、償却方法の届出を新たに提出する必要がある(所令123①②)。
平成19年4月1日以降に取得した建物、平成28年4月1日以降取得した建物附属設備・構築物については、新定額法に限られる(所令123⑤、所基通49-1)。
⑵ 青色申告特別控除について
青色申告者が事業所得や不動産所得(事業的規模)で貸借対照表の提出他の条件を満たした場合、それぞれの所得の金額を算出するのに当たっては、青色申告特別控除(65万円)の適用があるが、当初申告が期限後申告の場合には、控除額が常に10万円となるので注意が必要。
⑶ 青色申告申請書の提出期限
ア 原則
○ 青色申告の承認を受けようとする場合、承認を受けようとする年の3月15日までに提出を要す。
○ 新規に事業を開始した場合、開業してから2か月以内に提出を要す。
※ 注意事項
既に不動産貸付業を行っているような場合は新規に事業を開始したことにならない。例えば、従前から不動産貸付業を行っている人が、平成30年5月に新規に小売店を開業予定している場合、平成30年分から青色申告をするのであれば、平成30年3月15日までに提出する必要があり(所法144)。
イ 相続により被相続人の業務を承継した場合(所基144-1)
○ 業務を承継した時から2か月以内に提出
○ 青色申告者である被相続人の業務を承継した場合は、準確定申告書の提出期限である死亡の日から4か月以内に提出
区分 | 青色申告承認申請書の提出期限 | |
1 | 原則 | 青色申告の承認を受けようとする年の3月15日 |
2 | 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合) | 業務を開始した日から2か月以内 |
3 | 被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以後に業務を承継した場合) | 業務を承継した日から2か月以内 |
4 | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日) | 死亡の日から4か月以内 |
5 | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日) | その年12月31日 |
6 | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日) | 翌年2月15日 |
《質問》
新たに設立された法人に係る消費税の納税義務については、消費税法上、「新設法人」と「新規設立法人」という用語が使い分けられており、それぞれに見合う規定がおかれていますが、次のような、新たに設立された㈱Aの設立当初2年間に係る消費税の納税義務の有無判定は、そのいずれによって、どのように行うことになるかご教示ください。
《前提》
① ㈱Aは、2017年4月3日に、資本金800万円で、個人株主甲と乙の両名が出資して設立された。
② 甲は、㈱Aの発行済株式総数の51%を有しており、残りの49%を、甲とは親族関係にない知人乙(㈱Aの他に、連年、売上5億円超の㈱Bを完全支配している。)が有している。
③ 甲は、㈱Aとは別に、丙(甲の実弟で、甲とは別生計である。)との共同出資で、7年前に㈱C(資本金896万円、1月決算、連年、売上5億円超。)を設立しているが、それぞれの持株割合は、設立以来甲が54. 7%、丙が45.3%であり、㈱Aの設立を経て現在(本件質問時)まで変動はない。
④ ㈱Aの特定期間における課税売上高は1,000万円以下である。
《質問》
父親が所有する建物を、生計を一にする長男が借り事業を営んでいます。長男はこの建物に対し火災保険契約を締結し保険料を負担していますが、支払保険料はどのように処理したらよいのでしょうか。また、万が一火災に遭い父親が保険金を受け取ったり、満期で返戻金を受け取った場合等課税関係はどのようになるのかご教示願います。
《前提》
地主は法人、借地人は個人(個人事業用)。
借地人個人は普通借地権所有。
借地人個人は30坪の借地権を有し、ここに2棟の建物を建て事業を行っていた。
5年前に借地契約の更新に当たり、更新期間20年ということで400万円の更新料を授受した。
借地人個人は、5年経過した今になって1棟(敷地10坪分)を取壊した上で10坪分の借地権を返してきた。
同時に5年前授受した更新料のうち100万円の返還を求めてきたため、支払うことにした。
100万円の算定根拠
400万円 × 10坪/30坪 × 15年/20年 = 100万円
《質問》
返還した100万円は、経費として落とすことは可能ですか。それとも無償返還された借地の買取価格として土地勘定になりますか。