特定新規設立法人の特例(その2):新設1期目及び2期目の判定について

《質問》

 特定新規設立法人の特例における「他の者」(消費税法12条の3①)を個人甲とし、個人甲の特殊関係法人で消費税法施行令25条の4①の「判定対象者」をR社とした場合 新規設立法人S社が「特定新規設立法人」に該当するか否かを新設1期目及び同2期目ごとに説明してください。なお、R社及びS社の詳細は以下の通り。

・R社は甲が100%出資して令和元年10月10日設立(資本金900万円、8月決算)。令和2年8月期の課税売上高はおおよそ6億円となる見込。

・S社も甲の100%出資で令和2年10月1日設立(資本金500万円、9月決算)予定。

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特定新規設立法人の特例 (その1):「基準期間相当期間」について

《質問》

1. 個人甲は、平成30年2月14日に法人成りでA社(資本金700万円、1月決算)を立ち上げた。同社の設立1期の平成31年1月期の課税売上高は 3億円、 続く令和2年   1月期における課税売上高も4億円と順調に業績を上げ、上半期を終えたばかりの  令和  3年1月期の課税売上高(半期)は、コロナ禍の影響を受けることなく5億円超に達する見込みである。

2. 個人甲は、年号が変わる前後から、『新経営計画』の構想を練っており、その具体化の第1弾として、今秋10月1日に自らが全額出資してA社の兄弟会社となるB社(資本金500万円、9月決算)を新規設立すべく着々と準備を進めている。

3. 以上のことを前提とした場合、①B社は特定新規設立法人に該当するかどうか ②仮に、該当した場合、計画変更等により消費税の納税義務を免れることは可能かどうか についてご教示願いたい。

*質問の背景:個人甲は、イ  A社の設立に際し、基準期間のない課税期間は、問題なく免税事業者であると考えていたところ、設立2期に係る「特定期間」の関係で、想定外の納税義務が生じた(消費税法9条の2④)こと、ロ   新規設立予定のB社も、設立1期目から、億単位の課税売上高が見込まれることから、せめて、B社の設立1期目だけでも免税扱いを確保しておきたいと考え質問者が相談に及んだもの

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事前確定届出給与を無支給とした場合の問題点について

《質問》

 当社では今期業績が悪化したため、事前確定届出給与の支給を全額見送ることを検討しています。
 法人税基本通達9-2-14《事前確定届出給与の意義》において、届出額と実際支給額が異なる場合には「その支給額の全額が損金不算入になる」こととされていますが、事前確定届出給与を全額支給しない場合、税務上何か問題は生じないでしょうか。
 仮に「事前確定届出給与は決議の時点で支給が確定しているため、支給しない場合は法人側では給与債務に係る免除益が計上されるべき」とした場合、税務上は次のような仕訳が想定されます。
   (役員賞与) ××× (債務免除益) ×××
 このように考えると、届出通り支給されなかった役員賞与が損金不算入となった上に、債務免除益は益金算入され、さらに役員個人の側でも実際には受給を受けていない賞与について給与課税されてしまうなど、法人・個人双方で課税問題が生じるのではないかと懸念しています。実際はどうなのでしょうか。

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生計を一にする親族間内での所得者の判定

 2回にわたり解説しました「父親の建物に子が損害保険をかけた際の取扱い、保険金を受け取った場合の課税関係について」では、子が事業主であることを前提にしてきました。今回は生計を一にする複数の親族間で事業を行っている場合、いずれが事業主となるのかについて説明をします。

《さくら税研からのアドバイス》

 所得税は、収益を実質的に享受する者に対し課税すると規定されています(所法12)。また、事業から生ずる収益を享受する者は、経営をしている「事業主」であると取り扱われています(所基通12-2)。
 「事業主」が誰になるのかについては、営業許可、関係官庁への届出の状況、事業資金の調達、事業活動を通じての収入・支出の管理、従業員に対する指揮命令等がどのようになっているのかを総合的に判断する必要があります。
 生計を一にする複数の親族間(例えば父・子)で事業を営んでいて事業主が明らかにならない場合には、「経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者」を事業主と推認するとしています。さらに明らかにならない場合には、次のようなケースを除き、最終的には生計主宰者を事業主と推定する旨取り扱われています(所基通12-5)。ただし、当該通達は、あくまで事業主が明らかとならない場合、「推定」するとの取扱いですので、前述の実質的な判断が優先されることは言うまでもありません。
⑴ 生計主宰者(父)が他の店舗を経営していたり、会社等に勤務しているような場合、他の親族(子)の名義で事業が行われていれば、名義者を事業主とします。つまり、形式的な基準で判断するわけです。
⑵ 生計主宰者(父)とともに他の親族(子)が、医師や弁護士、税理士、俳優等自由職業者として事業に従事している場合には、収入.支出がそれぞれに区分され、事業を行っている状態が父に従属していると認められない限り、子が収支に応じ事業主となります。
⑶ 生計主宰者(父)が遠隔地で勤務し、事業に従事している他の親族(子)と別々に生活をしている場合には、子を事業主とします。

《参考法令》

【所得税法】
(実質所得者課税の原則)
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

(事業から生ずる収益を享受する者の判定)
12-2 事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(以下12-5までにおいて「事業主」という。)がだれであるかにより判定するものとする。

(親族間における事業主の判定)
12-5 生計を一にしている親族間における事業(農業を除く。以下この項において同じ。)の事業主がだれであるかの判定をする場合には、その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当するものと推定する。この場合において、当該支配的影響力を有すると認められる者がだれであるかが明らかでないときには、次に掲げる場合に該当する場合はそれぞれ次に掲げる者が事業主に該当するものと推定し、その他の場合は生計を主宰している者が事業主に該当するものと推定する。
(1) 生計を主宰している者が一の店舗における事業を経営し、他の親族が他の店舗における事業に従事している場合又は生計を主宰している者が会社、官公庁等に勤務し、他の親族が事業に従事している場合において、当該他の親族が当該事業の用に供されている資産の所有者又は賃借権者であり、かつ、当該従事する事業の取引名義者(その事業が免許可事業である場合には、取引名義者であるとともに免許可の名義者)である場合  当該他の親族が従事している事業の事業主は、当該他の親族
(2) 生計を主宰している者以外の親族が医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、公認会計士、あん摩マッサージ指圧師等の施術者、映画演劇の俳優その他の自由職業者として、生計を主宰している者とともに事業に従事している場合において、当該親族に係る収支と生計を主宰している者に係る収支とが区分されており、かつ、当該親族の当該従事している状態が、生計を主宰している者に従属して従事していると認められない場合  当該事業のうち当該親族の収支に係る部分の事業主は、当該親族
(3) (1)又は(2)に該当する場合のほか、生計を主宰している者が遠隔地において勤務し、その者の親族が国もとにおいて事業に従事している場合のように、生計を主宰している者と事業に従事している者とが日常の起居を共にしていない場合  当該親族が従事している事業の事業主は、当該親族

父親の建物に子が損害保険をかけた際の取扱い、保険金を受け取った場合の課税関係⑵

《質問》

【第1回】
 父が所有している建物を借り、生計を一にする子が事業を営んでいます。子は建物に対し火災保険(損害保険)契約を締結し保険料を支払っています。この場合の所得税の取扱いはどのようになりますか。
【第2回】
 また、火災が発生し、保険金1000万円を父が受け取りました。課税関係はどのようになりますか。

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父親の建物に子が損害保険をかけた際の取扱い、保険金を受け取った場合の課税関係⑴

 今回のテーマと同じ内容で従前解説させていただきました。その際、参考法例が十分でなかったことを深くお詫び申し上げるとともに、2回に分け改めて解説させていただきます。また、従前投稿させていただいた際、「実質所得者課税等の関係について言及するように」とご指摘のあった点を踏まえ、第3回として、「生計を一にする親族間の所得者の判定」として解説させていただきます。

《質問》
 

【第1回】
 父が所有している建物を借り、生計を一にする子が事業を営んでいます。子は建物に対し火災保険(損害保険)契約を締結し保険料を支払っています。この場合の取扱いはどのようになりますか。
【第2回】次回解説
 また、火災が発生し、保険金1000万円を父が受け取りました。課税関係はどのようになりますか。

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路線価が付されていない道路に接する宅地の評価

《質問》

 路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に特定路線価を申請すべきか、路地状敷地として評価すべきか教示願います。

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税理士から損害賠償金を受領した場合の課税関係

《質問》

 個人で不動産貸付業を営んでいるAさんは、これまで消費税の申告を簡易課税にて行ってきました。この度、貸事務所用に不動産を取得したので消費税の還付金を受けようと思い、事前にその旨の説明を顧問税理士にしておいたにもかかわらず、消費税の簡易課税の不適用届出書の提出を失念したため、本則課税での申告ができず、還付金を受け取ることができませんでした。
 税理士に対し、損害賠償請求を申し立てた結果、本則課税で申告をした場合の還付消費税と実際に申告した納付額との差額について損害賠償金を受領することで合意に至りました。この場合、受け取った損害賠償金は課税されるのでしょうか。
 また、税理士の不手際による所得税のについての誤りがあり、損害賠償金を受取った場合は課税は如何でしょうか。

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期首から4か月後の支給改定の場合の定期同額給与

《質問》

 当法人は診療所を運営する医療法人です。決算期は5月です。
 下記のような経過で役員報酬の増額改定を行いましたが、いずれの期も役員報酬の改定決議を期首から3ヶ月以内に行いながら、実際の改訂支給開始は期首から4ヶ月後となってしまったために、定期同額給与として認められるかどうか懸念しております。

X1年5月期
 次のような経過で役員報酬を増額改定し支給を行いました。
 しかし、理事3名のうちどの理事を増額するかどうかが決まらず、理事会の決議日は総会の決議日から約1ヶ月経過してからとなったため、実際の改訂支給は期首から4ヶ月経過後となり、増額したのは理事長1名だけでした。

X0年7月30日 社員総会にて役員報酬の支給限度額を増額決議。
X0年8月25日 給与支給日。改定前の金額で支給。
X0年8月27日 理事会にて支給額の内訳を決議。
X0年9月25日 給与支給日。改定後の金額で支給。

X2年5月期
 前期と同様に協議が長引き、期首から4ヶ月経過後に理事長1名のみ増額改定支給となりました。

X1年7月14日 社員総会にて役員報酬の支給限度額を増額決議。
X1年8月25日 給与支給日。改定前の金額で支給。
X1年8月30日 理事会にて支給額の内訳を決議。
X1年9月25日 給与支給日。改定後の金額で支給。

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決算日直後に事前確定届出給与を支給する場合の注意点

《質問》

 当社は9月決算法人です。諸般の事情により令和1年10月30日に定時株主総会を開催し、翌月の11月10日に代表取締役A氏に賞与200万円を支給しました。
令和1年9月期の法人税申告は11月10日より後に行いますが、今回支給した賞与について、事前確定届出給与に係る届出書を11月30日までに提出すれば、損金算入は可能でしょうか。

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