役員等に対する貸付利率について

《質問》

 現状、社長に対して①500万円(金利3.5%)②500万円(金利3.5%)③591万5千円(金利1.8%)の3本の貸付を行っているのですが、今回新たに600万円の貸付を行うにあたってこれらを1本化して欲しいといわれているのですが、全部まとめて2%の利息で貸し付けようと思うのですが、問題ありますでしょうか?
 また、専務に対しても同じく300万円を同時期に貸し付ける予定なのですが、こちらは社長に対する貸付の金利と同じでないと問題あるでしょうか?

“役員等に対する貸付利率について” の続きを読む

高額特定資産について

《質問》

 以前から引き続き消費税課税売上高が1,000万円以下であった3月期決算の免税事業者が、前々期(平成28年3月期)に不動産売却により初めて課税売上高が1,000万円を超えたため、当期(平成30年3月期)に課税事業者に該当することとなった。
 なお、平成29年3月期の課税売上は1,000万円を下回っている。
 当社は、住居用マンションを中心とする不動産賃貸業を営んでおり、課税売上割合はきわめて低いが、当課税期間については簡易課税の届出を行っておらず、一般課税事業者に該当する。
 また、当期に新規土地を取得し、賃貸用物件の建築を開始するにあたり、建築設計料1,200万円を支出する。
 もし、当該設計料について建設仮勘定として経理処理し、消費税法基本通達11-3-6に基づいて、当期の消費税申告においては仕入額控除の対象とせず、完成期の属する期間の課税仕入れとして扱う場合、自己建設高額特定資産の建設等に要した仕入れ等の支払対価の額の累計額1,000万円の判定において、当設計料を当期のうちに建設工事等のための課税仕入れ等の金額の中に含めなければいけないかどうかについてご教示ください。
 なお、当期の課税売上は1,000万円未満となる予定です。
当社は来期以降に不動産の売却を数件予定しているため、当該設計料を建設仮勘定に計上したうえで、来期に免税事業者とできるのであれば、平成32年3月期以降に係る簡易課税選択の届出をできないかと考えています。
 考察としては、施行令25の5において、当該累計額から免税期間および簡易課税適用期間の金額を除く旨の記載があることや、上記の建設仮勘定についての通達を鑑みると、判定の範囲内に含めないことは可能ではないかと考えておりますが、ご意見を伺えると幸いです。

“高額特定資産について” の続きを読む

関係会社間の自己株式取得について

《前提》

 発行法人甲の発行済み株式5,200株のうち520株を有する乙法人が、その有する株式520株のすべてを発行法人甲に売却(甲法人の自社株買取)することとなりました。
 自己株式を適正に評価(法基通9-1-13及び14)し、これにより売買価格を決定すると、乙法人の売却にかかる税務仕分けは下記の通りとなります。

(現金)   14,685,453(関係会社株式)16,052,700・・・当初取得価格
(源泉税)    3,511,647   (みなし配当)17,197,100
(株式売却損)15,052,700

自己株式買取り直前の甲法人の株式保有状況は以下のとおりです。
キャプチャ

《質問》

① 100%グループである内国法人間での、所有株式を発行法人である内国法人に対して譲渡する場合には、その譲渡損益を計上しない(法法61の2⑯)とありますが、上記の株式保有状況から、甲法人・乙法人間は100%グループ関係にない(=故に売却損の計上可能)という判断でよろしいでしょうか。

② 法人が、発行法人による自己株式の取得が予定されている株式等を取得した場合において、その取得した株式等に係るみなし配当の額で、その予定されていた事由に基因して受け取るものについては、受取配当等の益金不算入の規定を適用しない(法23③)とありますが、甲法人・乙法人間の株式保有関係は本規定の創設された平成22年よりも前から(少なくとも平成18年から)しておりますので、本規定の「自己株式の取得が予定されていた」には当たらず、受取配当等の益金不算入を適用してよろしいでしょうか。

③ ②において、益金不算入の適用可となった場合、株式売却直前の株式保有割合が10%あるので、益金不算入額は「配当等の額 × 50%」(完全子会社株式、関連法人株式、非支配目的株式のいずれにも該当しない株式)でよろしいでしょうか。

“関係会社間の自己株式取得について” の続きを読む

死亡後に受け取った終身医療保険の入院給付金等の課税上の取扱い

《質問》

 個人Aは肺炎で入院し、治療の甲斐なく死亡しました。
 加入していた終身医療保険から死亡後に死亡保険金、疾病入院給付金、退院給付金が支払われました。保険金・給付金の受取人はいずれも配偶者です。なお、保険料は被保険者のAが負担していました。
 死亡保険金について『みなし相続財産』として課税されることは理解していますが、相続税基本通達3-7によれば、「被保険者の疾病その他・・・・死亡を伴わないものを保険事故として支払われる保険金又は給付金は、被保険者の死亡後に支払われたものであっても、これに含まれない」と記載されています。今回のように死亡の原因となった病気に対する入院給付金や退院給付金は相続税の課税対象となるのでしょうか。また、所得税の課税はどのようになりますか。ご教示宜しくお願いします。

“死亡後に受け取った終身医療保険の入院給付金等の課税上の取扱い” の続きを読む

住民登録上同一世帯となっている子に支払った給与は必要経費となるのか

《質問》

 個人事業を営んでいるAは、前妻との間にできた子Bに対し、事業に従事してもらった対価として給与各年100万円を支払っています。住民登録上は、AとBは同一世帯となっていますが、現実には隣町に住むAの祖父母の家に居住し、寝食を共にしています。この場合、給与はAの必要経費となり、従来から祖父(不動産所得者)の扶養親族としていませんが、更正の請求で扶養控除は認められるのでしょうか。実はAに対する調査において、給与として支払った額は必要経費として認められないと調査官から指摘されています。

“住民登録上同一世帯となっている子に支払った給与は必要経費となるのか” の続きを読む

公正証書遺言で全財産をユニセフに寄付する場合

《前提》

被相続人 A
相続人  Aの母、Aの兄

《質問》

Aが公正証書で全財産をユニセフに寄付との遺言を残しています。(約2億円)
Aの母には遺留分の放棄もしてもらってます。
基本的には母、兄には一切かかわりを持ちたくないということです。
遺言執行人はAの友人です。
執行人の報酬としては公正証書にて車(約300万円相当)と記されています。
そこで、まず、
① 相続税申告が必要であるか否か
② 必要な場合申告書の提出はだれが行うか
③ 遺言執行人の報酬について何らかの課税は発生するか
以上、ご教示ください。

“公正証書遺言で全財産をユニセフに寄付する場合” の続きを読む

診療所で医療用機器を取得した場合の中小企業等経営強化法に基づく税制措置

《質問》

 私は内科医として診療所を開業しています。この度、新規に医療用機器(器具備品)を取得し、設備の刷新を図りたいと考えています。このような場合、友人から中小企業等経営強化法に基づく支援措置である特別償却や税額控除等の適用があると聞きましたが、受けられるのでしょうか。

“診療所で医療用機器を取得した場合の中小企業等経営強化法に基づく税制措置” の続きを読む

平成30年 確定申告直前 誤りやすい事例の ポイント解説(消費税:個人事業者用)

【納税義務者】

チェック(1) 基準期間の課税売上高の判定
    ● 基準期間が免税事業者である場合:消基通1-4-5
    ● 基準期間中に事業用資産(賃貸用住宅)を譲渡した場合
     ⇒建物と土地等の一括譲渡のケース 消基通10-1-5
    ● 基準期間の中途で新たに事業を開始した場合:消基通1-4-9
     基準期間が1年でない法人(消法9②二)と相違する点に留意
    ● 輸出免税売上高:消基通1-4-2
    ● 非居住者が日本国内で商品販売を行う場合:消基通5-1-11
    ● 法人成り(法人に引き継いだ事業用資産の譲渡対価)

チェック(2) 相続があった場合の納税義務の免除の特例
    ● 相続があった年の前々年の課税売上高が1,000万円以下である相続人
     が、課税事業者である被相続人の事業を承継したとき
     ①相続のあった年(消法10①)
     ②相続があった年の翌年と翌々年(消法10②)
    ● 被相続人が2以上の事業場を有していた場合で、2人以上の相続人が各
     事業場ごとに分割して承継したとき(消法10③)

チェック(3) 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
    ● 特定期間の中途で開業した場合の課税売上高(消法9の2④一)
     ※前年の1月1日から6月30日まで(個人事業者の特定期間)の
     課税売上げで判定。参照法人の特定期間(消法9の2④二、三)
    ● 特定期間中に支払った給与等支払額の範囲:消基通1-5-23

チェック(4) 高額特定資産を取得した場合納税義務の免除の特例(消法12の4)
    ● 平成28年4月1日以後に高額特定資産の仕入れを行ったが、同年分の課
     税売上高が1,000万円を超えなかった場合
    ● 平成28年4月1日以後に自己建設高額特定資産について、建設等に要し
     た費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間の課税売
     上高が1,000万円を超えなかった場合

【非課税取引】

チェック(1) 土地の貸付け
    ● 土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合:消基通6-1-4
    ● 土地の貸付期間の判定:同上
    ● 土地付建物等の貸付け: 消基通6-1-5
     ⇒ 更地のままの貸付け
     ⇒ 貸付け等に係る対価を建物分と土地分とに区分しているとき

チェック(2) 土地等の譲渡又は貸付けに係る仲介手数料:消基通6-1-6

チェック(3) 郵便切手類の譲渡
    ● 購入していた印紙を、金券ショップに売却した場合:消基通6-4-1

チェック(4) 物品切手等の発行
    ● 酒類小売店において、ビール券と引き換えにビールを販売した場合
                      :消基通6-4-5 同9-1-22

チェック(5) 住宅の貸付け関係
    ● 用途変更の場合の取扱い:消基通6-13-8
     住宅以外の用途に変更することについて
      ⇒ 契約当事者間で契約変更をした場合
      ⇒ 契約変更なしに賃借人において事業の用に供した場合

チェック(6) 平成29年度改正事項
    ● 仮想通貨の譲渡に係る課税関係の見直し
      ⇒ 非課税とされる支払手段に類するものの範囲に、資金決済に
      関する法律に規定する仮想通貨を加える(消令9④、48②一)

《適用関係》
 平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用し、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては従前の例による(改正消令附則2)。
 ただし、①施行日の前日に100万円以上(税抜き)の仮想通貨を有しており、かつ、②施行日前1月間の平均保有数量に比べ、施行日前日の保有数量が増加している場合には、当該増加分の課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額控除を認めない(改正消令附則8)。

【課税の対象】

チェック(1) 事業としての意義
    ● 事業規模に達していない建物(居住用は除く。)の賃貸収入
    〈例〉建物一棟を業務用として反復、継続、独立して賃貸している場合
                            :消基通5-1-1

チェック(2) 付随行為:消基通5-1-7
    ● 事業用車両を売却(下取り)した場合

チェック(3) 自家消費等における対価:消基通10-1-18
    ● 棚卸資産を家事消費した場合

チェック(4) 法人成り
    ● 現物出資により事業用資産を法人に引き継いだ場合
             :消法2①八、消令2①二、同令45②三

チェック(5) 借家保証金、権利金等:消基通5-4-3
    ● 賃貸借契約上賃貸借の終了時に返還される保証金等を受領した場合

チェック(6) 前受金、仮受金に係る資産の譲渡等の時期:消基通9-1-27
    ● 所得税法第67条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)の適用を
     受けない場合
     <参照> 課税仕入れを行った日の意義(消基通11-3-1)

チェック(7) 自家消費等における対価:消基通10-1-1、同10-1-18
    ● 棚卸資産以外の事業用資産を家事消費した場合

【課税標準】

チェック(1) 課税資産の譲渡等の対価の額:消基通10-1-1
    ● 棚卸資産を通常より安い値段で他に販売(次の場合を除く)した場合
    ● 保有する棚卸資産又は事業用資産の家事消費又は家事使用した場合

チェック(2) 課税資産の譲渡等に際しての資産の下取り:消基通10-1-17

チェック(3) 委託販売等に係る手数料:消基通10-1-12
    ● 委託販売等における委託者と受託者それぞれに係る課税標準

チェック(4) 売上げに係る対価の返還等の処理:消基通14-1-8

【課税仕入れ】

チェック(1) 費途不明の交際費等:消基通11-2-23
    ● 接待交際費勘定中に、費途が明らかでないものや、贈答用に購入
     した商品券及びビール券の購入代金が含まれている場合

チェック(2) 個人事業者と給与所得者の区分(消法2①十二)
    ● 課税仕入れに該当する(事業所得)か 否(給与所得)かの判定
    <参考>
      ⇒ 消基通1-1-1に示された事項を総合勘案して判定
      ⇒ 課税当局の資料:「法人税課速報(源泉所得税関係)【給
     与所得と事業所得との区分】東京国税局平成15年7月
     第28号」・・・情報公開法9条1項による開示情報

チェック(3) 会費、組合費等:消基通5-5-3
     ⇒ 同業者団体、組合等に対して支払う通常会費
     ⇒ 会費名目で支払われる出版物の購読料、職員研修の受講料など

チェック(4) 家事共用資産の取得:消基通11-1-4
     ⇒ 当該資産の家事消費又は家事使用に係る部分の計算方法
     ⇒ 当該資産を一時的に家事使用した場合
     <参照> 家事共用資産の譲渡(消基通10-1-19)

チェック(5) 従業員の通勤手当:消基通11-2-2
    ● 通勤に通常必要と認められる金額ではあるが、所得税法上の非課税
     限度額を超えている場合

チェック(6) 課税仕入れ等に係る消費税額の控除(消法30②)
     ⇒ 当課税期間における課税売上割合及び課税売上高の把握
     ⇒ 当課税期間が1年に満たない場合
     ⇒ 課税売上割合の端数計算(処理):消基通11-5-6

チェック(7) 一括比例配分方式の2年以上の継続適用:消基通11-2-21
    ● 一括比例配分方式を採用した課税期間の翌課税期間の課税売上高が5億
     円以下かつ課税売上割合が95%以上となった場合の「全額控除」

チェック(8) 更正の請求の可否(通則法23①)
    ● 一括比例配分方式を選択して確定申告した後の個別対応方式への変更

【控除対象仕入税額の調整】

チェック(1) 免税事業者が翌課税期間は課税事業者となる場合
    ● 棚卸資産に係る控除対象仕入税額の調整:消基通12-6-1
    ● 免税事業者時の課税売上げに係る翌課税期間中の値引・返品

チェック(2) 課税事業者が翌課税期間は免税事業者となる場合
    ● 棚卸資産に係る控除対象仕入税額の調整:消基通12-6-4

【簡易課税制度】

チェック(1) 簡易課税不適用届出書の提出時期

チェック(2) 固定資産等の売却収入の事業区分:消基通13-2-9
    ● 小売業を営む課税事業者が事業用固定資産を売却した場合
    ● みなし仕入率の計算の特例(75%ルール)の有無

チェック(3) 75%ルールの判定
    ● 酒類小売業及び卸売業を営む課税事業者のビール券売上げ
    ● 75%ルール判定時の端数処理

チェック(4) 食料品小売店舗において行う販売商品の加工等の取扱い
    ● 精肉(鮮魚)の小売業(第2種)を営む課税事業者が焼鳥、ロースト
     チキン(かつおのたたき、焼魚)等に加工販売している場合
                 :消基通13-2-2、同13-2-3

チェック(5) 小売店が販売したものの購入者が他の事業者であった場合(消令57⑥)

チェック(6) 塗装工事業の判定:消基通13-2-4
     ⇒ 塗料等の資材を自ら調達する事業形態
     ⇒ 他人が調達した塗料を塗装する(加工賃)だけの事業形態

チェック(7) 無償で譲り受けたものを事業者に販売している場合(消令57⑥)

チェック(8) 加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供の意義
    ● 農作業受託金(農業従事者が他の農業従事者の田植え、稲刈り等を
     手伝い、得た収入金):消基通13-2-7

チェック(9) 簡易課税制度適用者の基準期間の課税売上高が6,000万円となった
     場合

チェック(10) 相続があった場合の納税義務の免除の特例と簡易課税制度の適用
    ● 「簡易課税制度選択届出書」を提出している事業者が、平成27年中に
     相続により被相続人の事業を引き継いだ場合、基準期間(平成27年)
     の相続人と被相続人の課税売上高の合計額が5,000万円超のとき(相
     続人のみの課税売上高は5,000万円以下)の簡易課税制度適用の可否

チェック(11) 簡易課税制度選択届出書の効力:消基通13-1-3
    ● 簡易課税制度を適用している事業者が、免税事業者となった後、再び
     課税事業者になった場合

【その他の誤りやすいポイント】

➣ 課税事業者が、免税事業者であった課税期間に発生した売掛金等につ
  き貸倒れが生じたので、消費税額から控除している。

➣ 消費税の控除不足税額のある還付申告書が提出されたが、明細書の添
  付がないにもかかわらず、消費税の還付を行っている。

➣ 課税期間の短縮(3か月)の適用を受けていた事業者が、平成29年1月
  20日に不適用届出書を提出し、平成29年1月1日から原則的な課税期間
  に戻すこととしている。

➣ 各年分の修正申告により納付すべきこととなった消費税を、その各年
  分の所得の計算において租税公課に算入した。

➣ 小包郵便物でまとめて提出された「消費税課税事業者選択届出書」、
 「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出日を通信日付によるとして
  いる。

 

 

平成30年 確定申告直前誤りやすいポイント解説(資産税)

Ⅰ譲渡所得関係

1 取得費について
 買入時の契約において建物と土地の価額が区分されていない場合には、「建物の標準的な建築価額表」を基に建物の取得価額を計算しても差し支えない。
 (消費税導入後、不動産業者等から買い入れた場合には、原則的に建物に係る消費税が表示されていることから、建物と土地の価額が区分されている。)
 なお、実際の取得価額が不明な場合には、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することが原則であるが、建物については、前記と同様の方法によっても差し支えない。
 しかし、土地について、「市街地指数」等によって買入時の価額を推計することにはリスクが伴うため、慎重に検討する必要がある。
(参考情報・・・平成12年11月16日裁決)

2 収用補償金の所得区分について
 公共事業等の収用補償金は、支払名目により所得区分が異なるので、内容を吟味して所得区分を判定する必要がある(参考資料参照)。
 なお、経費補償金等について課税の延期を行う場合には、「収益補償金等の課税延期申出書」の提出が必要となる。

3 重複適用できない特例関係について
 重複して適用できない特例があるため、各種特例を適用する際には留意する必要がある。
(1)居住用財産の買換え(交換)特例(措法36の2、措法36の5)と居住用財産を譲
渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(2)住宅借入金等特別控除の特例(措法41)と居住用財産の買換え(交換)の特例(措法36の2、揩法36の5)若しくは特別控除の特例(措法35①)又は居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
(3)被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)と相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例(措法39)

4 被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例について
(1)この特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、被相続人が主として居住の用に供していた「一の建築物」に限られるため、被相続人が主として居住の用に供していた母屋とは別の建築物(離れ、倉庫、車庫等)及びその敷地に対応する部分(面積)については、母屋との一体利用の有無に関わらず、この適用対象から除かれる。
(2)被相続人居住用家屋が一定の耐震基準を満たしていない場合には、その敷地の譲渡日(原則として引渡日とし、契約日を譲渡日として申告した場合は契約日。)までに当該家屋の取壊しを了していない限り、この特例の適用を受けることはできない。
 ※譲渡物件の引渡後に買主の負担で建物を取り壊す場合は、特例の適用受けることはできない。
(3)被相続人居住用家屋に被相続人以外の者が居住していた場合(相続開始後も含む)は、この特例を受けることはできない。
(4)この特例を受ける場合、「特例対象譲渡物件」部分については「相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例」(措置法第39条)の特例を受けることはできないが、「特例対象譲渡物件」以外の部分については、同一に譲渡した場合であっても措置法第39条の適用を受けることができる。
(5)この特例の適用を受けようとする場合、被相続入居住用家屋又は当該家屋の敷地を相続により取得した他の相続人に対し、この特例の適用を受ける譲渡をした旨、譲渡した日等を通知しなければならない。

5 特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除について
(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した土地等を譲渡した場合には、1, 000万円の特別控除の適用がある。
(2)この取得について、譲渡人の配偶者、直系血族、生計を一にしている親族、事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者と生計を一にしている親族、等(措置法施行令第23条の2第1項参照)からの取得は除かれている。
また、取得の原因について、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済、等(措置法施行令第23条の2第2項参照)による取得は除かれている。
(3)この特例の適用は、土地又は土地の上に存する権利(借地権等)に限られていることから、建物等の譲渡による譲渡所得には適用されない。
したがって、土地及び建物を一括して譲渡した場合には、当該譲渡による譲渡所得のうち、土地の譲渡に対応する部分についてのみこの特例の適用がある。

6 相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例について
(1)物納した土地及び物納申請中の土地については、相続等により取得した土地等から除かれる。
(2)超過物納により過誤納金を受領した場合、この特例の適用がある。
(3)代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合の取得費加算の計算については、措置法通達39-7によることに留意する。
 なお、代償分割により取得した土地を譲渡してもこの特例の適用はない。
(4)措法第39条の計算における「相続税の課税価格」とは、相続税の申告書第1表①欄「取得財産の価額」に②欄「相続時精算課税適用財産の価額」と⑤欄「純資産に加算される贈与財産の価額」を加えた価額である(債務控除は行わない)。

7 株式の譲渡について
 「源泉徴収口座」による株式の譲渡を申告した場合、所得金額が増加することから、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料、介護保険料が増加する。この場合、申告した後において申告しないこととする変更はできないため、特に留意する必要がある。

Ⅱ贈与税関係

1 直系尊属(父母又は祖父母等)からの贈与について
 特例税率の適用に当たって、受贈者の年齢判定の基準日は、その年(贈与をした年)の1月1日現在において20歳以上の者であることに留意する。

2 相続時精算課税の特例について
(1)年齢判定の基準日こついて、贈与者、受贈者ともに、贈与を行った年(受けた年)の1月1日現在において贈与者は60歳以上、受贈者は20歳以上であることに留意する。
(2)特例を受ける場合には、宥恕規定がないため、申告期限内に申告書、選択届出書及び添付書類を提出する必要がある。
 2年目以降にこの特例を受ける場合にも、宥恕規定がないため、期限内申告を行わないと特別控除の残額があっても控除することはできない。
(3)この特例の適用を受けて申告した財産の評価に誤りがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産について記載があることから、正しい控除を受ける金額の記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認める場合には、その記載をした修正申告書の提出があったときに限り、特別控除の適用を受けることができる(相続税法第21条の12第3項)。
 更正の請求においても同様の解釈ができる。
(4)特定贈与者から贈与を受けた財産の一部を申告し、一部について申告漏れがあった場合、期限内申告書に特別控除を受けようとする財産についての記載がないことから、特別控除の適用はない。したがって、特別控除の額は期限内申告の額のままで、修正申告をする必要がある。

            主な収用補償金の課税区分一覧表
  補償金の種類 税法適用上の区分   所 得 区    摘  要
土地の取得に係る補償 対価補償金 分離譲渡所得 棚卸資産を除く。
土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償
残地保証
建物等の移転料 建物移転料 移転補償金 一時所得 実際に建物等を取り壊した場合には、対価補償金として分離譲渡所得とすることができる。ただし、棚卸資産を除く。
工作物移転料
動産移転料  
仏壇・神棚移転料  
仮住居補償  
仮倉庫補償  
仮車庫補償  
移転雑費 移転先等の選定に要する費用 交付の目的に従って支出した場合には、総収入金額に算入しない。
法令上の手続きに要する費用
転居通知費・移転旅費
その他雑費 補償の実体的な内容に応じて判定。
立木 庭木 移転補償金 一時所得 伐採をした場合は総合譲渡所得。
収穫樹
用材林 対価補償金 山林所得 所有期間が5年を超えるもの。
就業不能補償 収益補償金 事業又は雑所得  
営業補償  
特産物補償  
天恵物補償  
家賃減収補償 不動産所得  
墳墓改葬料 精神補償金 非課税  
弔祭料  
祭祀料(遷座祭典料)  
飲料水補償 その他の補償金 一時所得  
し尿処理補償

《参考資料》

番号法施行規則の改正についてのお知らせ

平成29年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし

建物の標準的な建築価額表

特例の適用を受ける場合に申告書に添付する書類

土地や建物などの譲渡所得について主な特例の適用を受ける場合の 申告書添付書類チェックシート

被相続人居住用家屋等確認申請書

 

平成30年 確定申告直前誤りやすいポイント解説(所得税②)

今週の解説は次のとおりです。

《目次》
3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除
4 仮想通貨の取扱い
5 外国からの公的年金
 
⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
 ⑵ 公的年金申告不要制度(収入400万円以下)
6 生命保険金等の課税関係
7  空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)
8 住宅ローン控除
 
⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
 ⑵ 特定取得の意義
 ⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
 ⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
 ⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
 ⑹ 控除合計額計算の調整
 ⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
 ⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
9 所得控除関係
⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
 ⑵ 扶養控除の所属の変更
 ⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
10 保険契約に関する支払調書の見直し
11 附帯税関係(加算税制度の見直し)

《解説》

3 先物取引等に係る損失の申告を失念した場合の繰越控除

 平成28年中に生じた先物取引に係る損失を、同年の確定申告に含めず申告していた場合でも、損失を繰り越す旨の更正の請求を行い、その後平成29年分の確定申告において、先物取引に係る所得金額(利益額)から繰越損失額を控除することは認められている(措通41の15-1)。ただし、平成29年分の確定申告を先に行った場合には、平成28年分の更正の請求は認められず、繰越控除はできない。

4 仮想通貨の取扱い

 仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分される。
【参照 国税庁ホームページ 個人課税課情報4号平成29年12月1日】。https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/…/01.pdf

5 外国からの公的年金

⑴ 公的年金に係る雑所得の計算
 雑所得を計算する際の公的年金等は、国内の公的年金だけでなく外国の法令に基づく保険や共済制度で日本の国民年金や厚生年金等に類するものも含まれ、公的年金を全て合計し公的年金控除の金額を算出の上、公的年金に係る雑所得の金額を算出する。

⑵ 公的年金申告不要制度(年金収入400万円以下)
 国外からの年金等公的年金等の一部でも源泉徴収の行われていない年金が含まれている場合には、確定申告不要制度の適用はない(所法121③)。

6 生命保険金等の課税関係

 交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合や満期で保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人がだれであるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になる。
 身体の傷害に起因して支払いを受ける保険金等は、被保険者自身が身体に傷害を受け保険金等を受領する場合だけでなく、配偶者や一定の親族が受ける保険金等についても非課税としている(所法9①十七、所令30、183②、所基通9-20・9-21・34-1、相法3①一、5①、相基通3-17)。 

保険契約等関係者 保険事故等区分
保険負担者 被保険者 保険等受取人 傷害 死亡 満期
A A A 非課税 一時所得
A A B 非課税(親族)(注)
一時所得
相続税 贈与税
A B A 同上 一時所得 一時所得
A B B 非課税 贈与税
A B C 非課税(親族)(注)
一時所得
贈与税 贈与税
A1/2・C1/2 A B 同上 相続税・贈与税 贈与税

(注) 保険金等受取人が、被保険者の配偶者、直系血族又は生計を一にするその他の親族である場合に限る。

空き家に係る譲渡所得の特例《措法35条3項関係》(平成28年4月1日以降適用)

 適用要件の概要は次のとおり。このうち、下記⑦の『被相続人居住用家屋等確認書』の交付を受ける際には、家屋の取壊し時から譲渡時までの敷地の使用状況が分かる写真を提出する必要があり(家屋を取壊しの後敷地を売却する場合)、これに備え譲渡前から準備する必要があり注意を要す。
① 昭和56年5月31日以前に建築された家屋及びその敷地で相続開始の直前において被相続人の居住用に供されていたこと
② 相続開始直前において被相続人に同居者がいないこと
③ 譲渡対価の額が1億円以下であること
④ 相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
⑤ 相続の開始から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
⑥ 家屋を取り壊さず売却する時は、その家屋が昭和56年6月1日以後の耐震基準に適合するよう修繕するものであること
⑦ 『被相続人居住用家屋等確認書』を被相続人の所在地市区町村から交付を受けること

【参照 空き家の譲渡所得の3000万円特別控除】 http://www.mlit.go.jp/common/001127709.pdf

8 住宅ローン控除等

⑴ 住宅借入金等特別控除は非居住者でも適用可
 平成28年4月1日以降適用対象者が居住者だけでなく非居住者でも適用可とされた。例えば①海外転勤で非居住者となっていた者が帰国後の住居の確保のため、前もって非居住者期間中に住宅を取得した後居住した場合②住宅ローン控除適用者が年の中途で海外勤務となっても家族が引き続き居住している場合等にも適用が可能となっている(措法41①他)。 

⑵ 特定取得の意義
 『特定取得』とは、住宅の取得等に含まれる消費税率が8%による場合のことを指し、個人間の売買契約において消費税額の表示がない場合には、『特定取得』には該当しない。特定取得に係る住宅とそれ以外の住宅についての住宅借入金等特別控除の控除額は、平成26年以降次のとおり。

取得の種類 年末残高の合計額(最高) 住宅借入金等特別控除額(最高額)
特定取得 一般取得 4000万円 40万円
認定長期優良住宅 5000万円 50万円
非特定取得 一般取得 2000万円 20万円
認定長期優良住宅 3000万円 30万円

⑶ 住宅取得等に係る特別控除を選択適用した効果
 確定申告において一旦選択適用した住宅取得等に係る特別控除は、その年分以降も変更することはできない。
 例えば、認定長期優良住宅を借入金で取得し、単年控除を選択した場合、後において住宅ローン控除(10年摘要)への変更をすることはできない(さくら税研フォーラム28年10月31日公開分参照)。

住宅ローン控除等概要 (28年1月~平成33年12月末までに居住等の場合)
区分 住宅ローンあり 自己資金(住宅ローン無)
一般住宅 新築・既存住宅 増改築 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円)
認定住宅 住宅借入金等特別控除 年末残高(5000万円限度)×1% 【10年控除 年最高50万円】措法41⑤ 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) 選択摘要 認定住宅新築等特別控除 標準的な費用の額(43,800円×床面積㎡)×10% 【1年のみ控除・1年繰越可 65万円限度】 措法41の19の4
省エネ バリアフリー 多世帯 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 年最高40万円】措法41① 控除不足があれば、住民税の住宅ローン控除(最高13.65万円) 選択摘要 既存住宅特定改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 省エネ25万円(太陽光35万円)・多世帯25万円・バリアフリー20万円限度】 同一年中に省エネ、多世帯、バリア工事を実施した場合重複可 最高80万円 措法41の19の3
特定増改築等住宅借入金等特別控除(注) 特定借入金×2%+その他借入金×1% 【5年控除 年最高12.5万円】 措法41の3の2
耐震改修 住宅借入金等特別控除 年末残高(4000万円限度)×1% 【10年控除 最高400万円】 措法41① 併用可 住宅耐震改修特別控除(注) 標準的な工事費用又は改修工事費用×10% 【1年のみ控除 25万円限度】 措法41の19の2
(注)省エネ改修工事や耐震改修工事と併せ行う、一定の耐久性向上改修工事も平成29年4月から対象となりました。
※1 控除額等は、建物等に含まれる消費税率が8%である場合の金額です。
※2 多世帯同居改修工事については、平成28年4月~33年12月までに居住した場合

⑷ 父所有の建物に子が増改築をした場合
 父の所有する家屋に子が増改築をする場合のように、自身が所有していない建物に増改築しても住宅借入金等特別控除の対象となる『増改築』には該当しない(措法41①⑬)。

⑸ 繰上返済し償還期間が10年未満となった場合
 借入金の償還期間が当初10年以上になっていても、その後、繰り上げ返済等により10年未満となった場合には、繰上返済等した年から住宅借入金等特別控除は適用不可(措通41-19)。

⑹ 控除合計額計算の調整
 住宅借入金等により居住用家屋を取得した後の年度において、増改築や財産分与により住宅所得等に係る住宅借入金が2以上となった場合、それぞれの借入金について控除額を計算し合計する。
 税額控除額の上限は、適用年において適用される居住年に係る控除額のうち、最も大きい方が上限となる(措法41の2)。

⑺ 居住用財産を譲渡した場合の特別控除等の特例と住宅借入金等特別控除との選択について
 居住用財産を譲渡した場合の特例〔居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35②)、特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)等〕と住宅借入金等特別控除の適用関係は次のとおり。
① 譲渡が先行した場合
 住宅を取得等し居住用に供した年分、その前年分、前々年分について居住用財産の譲渡の特例を適用した場合には、住宅借入金等特別控除の適用はできない(措法41⑮)。
② 居住用家屋の取得が先行した場合
 居住年の翌年又は翌々年に入居した家屋以外の物件を譲渡した際、居住用財産の譲渡の特例を適用する場合には、居住年以後住宅借入金等特別控除の適用はない(措法41⑯)。この場合先行して住宅借入金等特別控除を受けていたときには、修正申告書または期限後申告書を提出し住宅借入金等特別控除相当額の納税をしなくてはならない(措法41の3①)。
 先行して居住用財産を取得した場合(②のケース)は、合法的に選択替えができますが、譲渡が先になった場合(①のケース)には、選択替えはできないので譲渡するときにどちらの特例を適用するのか決めなくてはならない。
 なお、住宅借入金等特別控除の適用を受けている居住用財産を譲渡し、譲渡の特例を適用した場合には、前年、前々年の住宅借入金等特別控除について修正する必要はない。

⑻ 住宅耐震改修特別控除(措法41の19の2)について
 住宅耐震改修特別控除は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(措法41⑬、41の3の2②)のように家屋の所有者以外の者が耐震改修を行った場合でも適用を受けることができる。
 また、自己の所有している居住の用に供している家屋について増改築等を行うとともに耐震改修したときは、住宅耐震改修特別控除、住宅借入金等特別控除のそれぞれの要件に該当すれば、重複して適用することができる(措法41①⑥、41の19の2①)。

9 所得控除関係

⑴ 「障害者控除対象者認定書」に基づき障害者控除の適用等について
 介護保険法により「要介護認定」を受けていたが、市に対し「障害者控除対象者認定書」の交付を要求、これを受け市長が、認定日を過去に遡及して「障害者控除対象者認定書」を交付した場合、遡及した年分に遡り障害者控除の適用を受けることができる。

⑵ 扶養控除の所属の変更
 同一生計内に二人の所得者がいる場合において、その二人に共通の扶養親族をいずれの所得者の扶養親族とするかは、確定申告書等に記載されたところによるが、一度申告書等により所属が定められた後においても所属を変更できることになっている(所令219①)。
 この場合、扶養親族を増加させようとする者と減少させようとする者全員が所属の異なる申告書等を提出しなければならない。この場合の申告書等には「修正申告書」と「更正の請求書」は含まれないので、いったん確定申告書を提出し所属を定めた場合には、扶養親族の所属の変更はできない(所基通85-2)。

○ 変更が認められるケース
 夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出、年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出、妻は子を扶養親族とする「確定申告書」を提出する。

○ 変更が不可なケース
 夫は子を扶養親族とする「扶養控除申告書」を提出し年末調整を行った。妻は扶養親族を記載せずに「確定申告書」を提出した。夫は今年多額の医療費を支払ったため、子を扶養親族から外し確定申告書を提出しても、妻は子を扶養親族とする「更正の請求書」を提出することはできない。

⑶ 複数年分の国民年金を一括で支払った場合の社会保険料控除
 ア 2年分の国民年金保険料を前納した場合
 支払った国民年金保険料全額を社会保険料控除の対象にすることも、各年分に対応する保険料を年分ごとに控除することもできる。

 イ 子供の過去の国民年金保険料を複数年分一括して支払った場合
 複数年分の国民年金保険料をまとめて支払ったとしても、支払った年分の社会保険料控除の対象とする。

10 保険契約に関する支払調書の見直し

⑴ 次のような課税漏れに対応するため、支払調書の提出義務や記載事項を変更した(平成30年1月1日以降に変更の効力を生じる場合について適用)。
 ア 契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人でないケースで契約者が死亡し、契約者名義を変更した場合、その時点での解約返戻金相当額が相続財産として相続税の課税対象となるが、保険金が支払われたわけでないため支払調書が提出されず課税漏れがあった。

 イ 契約書名義を変更した後、死亡保険金・満期保険金・解約返戻金を受け取った場合、変更前の契約者が支払った保険料に対応する受取人は贈与税の対象となるが、支払調書は支払時点での契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更した分について課税漏れがあった。

⑵ 支払調書の変更内容
 ア 生命保険契約や損害保険契約の契約者が死亡したことに伴い、契約者の変更手続きを行った場合、次の事項を記載した支払調書『保険契約者の異動に関する調書』を提出する。
○ 変更前・変更後の契約者の氏名
○ 契約者が死亡した日
○ 変更に係る契約の解約返戻金相当額
○ 保険料の総額、変更前の契約者が払い込んだ保険料額

イ 契約の締結後に契約者の変更があった場合、支払調書の記載事項の追加
○ 契約の変更前契約者の氏名
○ 変更後の契約者が払い込んだ保険料、変更回数

11 附帯税関係(加算税制度の見直し)

⑴ 調査の事前通知以後に、修正申告等を行う場合
 税務調査が開始され、更正の予知をしていない間に修正申告・期限後申告が行われた場合の適用税率が引き上げられました(国通法65・66)。

種類 28年以前 29年以降
過少申告加算税 0% 5%
無申告加算税 5% 10%

⑵ 短期間に繰り返し無申告等があった場合
 税務調査により、無申告加算税や重加算税の賦課された方が、過去5年以内に同じ税目で再び無申告加算税や重加算税が課された場合には、これらの割合が10%加算されます。

 種類 28年以前 29年以降
無申告 無申告加算税 15%(20%) 25%(30%)
 

仮装・隠ぺい

重加算税(過少・不納付) 35% 45%
重加算税(無申告) 40% 50%

※ ⑴⑵いずれも、平成29年1月1日以後法定申告期限が到来するものから適用。